市販車との共通点は“ガワ”だけといってもいい
国内レースではもっとも人気があるカテゴリーであるスーパーGT。
GT500クラスでは、トヨタ、ホンダ、日産の三大ワークスがしのぎを削り、GT300クラスでは外車勢を含め多彩なマシンが参戦。ドライバーもベテランから若手まで、人気・実力ともにトップクラスのそろった、オールスター戦のようなカテゴリーとして認知されている。
とくに見応えのあるのは、GT500のトヨタGRスープラ、ホンダNSX、そして日産GT-Rによるトップ争い。
GTレースならではの、市販車に近い形のクルマが接戦を繰り広げることで、ファンの応援にも熱が入るわけだが、これらの車両はどこまで市販車ベースといえるのだろう???
実際のところ、現在のGT500のマシンは、DTM(ドイツツーリングカー選手権)と車両規定を共通化し、モノコック、カーボンブレーキ、ダンパー、リヤウイングなど基本部分は、全部統一されたものを使用している。その上で、『ベース車両のデザインを活かす』という規定になっているので、極端にいえば、市販車との共通点は、“ガワ”だけといってもいい……。

エンジンについては、各メーカーが独自に開発したものを搭載しているが、『2000cc直列4気筒 直噴シングルターボ』という規定があるので、ベース車両のエンジン形式、排気量などは関係ない。
真の意味で市販車ベースなのはGT300クラスのFIA-GT3のマシンだ
また、2020シーズンから、エンジンが「車室(キャビン)より前に搭載する」ことが義務付けられ、ミッドシップだったNSX-GTも、FRで参戦。

サスペンションとブレーキも規定の範囲内で自由なので、ベース車両のレイアウトは無関係。
逆に市販車では欠かせない、アンチロックブレーキ(ABS)、トラクションコントロールなどの電子制御はNGで、アクティブサスペンションなどドライビングアシスト機能は禁止。
一方でセミオートマチックミッションは使用可能となっている。
このようにスーパーGTのマシンは、名前の通りGTを超えた存在で、市販車ベースというよりかつてのプロトタイプレーシングカーに近く、空力性能のウエイトが大きいために、ハコ車の面影を残したフォーミュラカーのような存在といった方が正しいぐらいだ。
なおGT300クラスには、JAF-GT300、JAF-GT300マザーシャシー、FIA-GT3規制の準拠したマシンが出場できるので、参加車両は多彩。

このうちFIA-GT3の車両は、シャシー、空力、サスペンション、エンジン、駆動方式まで、ほとんど変更不可。AMG GTやアストンマーチン、ポルシェ911、GT-R、NSX、アウディR8、レクサスRC F、ランボルギーニ ウラカン、BMW M6などのGT3仕様が参戦。

JAF-GT300のシャシーは、『ベース車両の車室部分を残すこと』という規定があるだけで、改造範囲は広く、JAF-GT300のマザーシャシーは、市販車とは別のシャシーを使う。エンジンもJAF-GT300車両はベース車両と同じメーカーのエンジンなら変更可能で、マザーシャシーは指定のエンジンを使用。駆動方式もJAF-GT300車両だと変更可能なので、スーパーGT参戦車両で、真の意味で『市販車ベース』といえるとすれば、GT300クラスのFIA-GT3のマシンだけではないだろうか。
