無骨さや力強さよりも高級感を強調した異端児だった

アメリカを代表するクルマのひとつにピックアップトラックが挙げられる。1950年代から現在まで人気が続いている。日本では考えられないが、アメリカでもっとも売れているクルマはピックアップトラックのフォードFシリーズだ。



1980年代に入ってもピックアップは人気だった。だが荷台がムキ出しのピックアップは用途が限られる。そこで、その荷台を覆うようにシェルと呼ばれるFRP製の屋根を追加したモデルを発売したら、これがけっこうヒットした。だったら最初から屋根を付ければいいじゃないか……となり、SUVが生まれた。トラックベースでクローズドボディのクルマが、いつしかSUVと呼ばれるようになった。このころトヨタもピックアップのハイラックスをベースに、ハイラックスサーフ(北米では4ランナー)を送り出している。



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SUVはスポーツ・ユーティリティ・ビークルの略。スポーツはアウトドアレジャーなどを指す。スタイリッシュで使い勝手がよく、多くの荷物を運べるクルマとして、SUVは北米で爆発的な人気車種に成長していく。そうなると、SUVのなかでさまざまな個性が求められるようになる。SUVの多様化だ。



トヨタは1989年に北米でレクサスブランドを立ち上げる。

メルセデス・ベンツBMW、キャデラックなどのプレミアムブランドに対抗してのことだ。一種の賭けとも言えたが、これが大成功。瞬く間にレクサスブランドを認知させることに成功した。



SUVは大人気だったが、どちらかと言えば若者向けのスタイリッシュな実用車、というイメージだった。これはプレミアムブランドたるレクサスとは相反するものだ。だがトヨタは思い切ってレクサスにもSUVを投入することを決意する。



1997年、日本で「ハリアー」を登場させると、そのクルマを北米で「レクサスRX」としてデビューさせたのだ。それまでの常識を打ち破る、プレミアムコンパクトSUVの登場だった。SUVらしからぬ高品位な内外装&高級車のような走りを備えたRXは、北米で37万台を売り上げる大ヒット車に成長する。



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こうなると他メーカーもだまってはいない。1999年にはBMWがX5を発表するなど、レクサスの主たるライバルであるドイツのプレミアムブランドが続々とSUVに参入。ハリアー(レクサスRX)が、プレミアムSUVというジャンルを創造したのである。



1997年 ハリアー(初代)

【数々のフォロワーを生んだプレミアムコンパクトSUVの元祖】

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北米での車名はレクサスRX。日本ではまだレクサスブランドが展開されておらず「ハリアー」と名付けられた。かつてのSUVのようなトラックベースではなく、カムリをベースとしたモノコックボディを採用。エンジンは2.2L直4(のちに2.4Lに変更)に加え、3L V6も設定。4WDだけでなくFFの2WDもラインアップした。室内もかつての四駆とは一線を画し、まさしく高級セダンのような趣を持つ。



続々と追従したプレミアムSUV

1999年 BMW X5

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1998年に北米に登場した初代レクサスRXは37万台の大ヒット。追従するメーカーも多く、ドイツのBMW、アウディといったプレミアムブランドがSUVに参入するきっかけとなった。ハリアーが火付け役となったのだ。



SUV+ハイブリッドという組み合わせはエコと速さを両立した

2003年 ハリアー(2代目)

【初代からのキープコンセプトが成功】

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こちらも実体は2代目レクサスRX。直4ユニットは2.4Lとなり、3L V6エンジンと2種類でスタート。だが2006年にはV6ユニットを新開発の3.5Lに換装し、280馬力を発生する快速SUVに進化した。大成功を収めた初代モデルのコンセプトは完全にキープされ、内外装ともにプレミアムSUVと呼ぶに相応しい内容。日本では2013年まで販売されたロングセラーモデルだ。



2002年、SUVの歴史を語るうえで外せないクルマが登場した。

それはポルシェ・カイエン。SUVの人気は北米からヨーロッパまで広がり、大きく裾野が拡大していた。ひと口にSUVと言ってもさまざまなタイプが生まれ、多様化が進んでいた頃である。カイエンはV8エンジンを搭載、カイエンターボにいたっては450馬力を誇った。旧来のポルシェファンからは「堕落だ」などと揶揄されたが、セールス的には大成功を収める。このカイエンがひとつのきっかけとなって、プレミアムSUVの「高速化」が始まる。



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一方、トヨタは1997年、世界中を驚かせた世界初の量産ハイブリッドカー、プリウスを登場させた。2003年にプリウスは2代目へとスイッチされ、驚愕の燃費性能、35.5km/L(10・15モード)を達成。環境対応が迫られる自動車メーカーにあって、トヨタのハイブリッド技術は抜きん出ており、さらに採用車種を増やそうとしていた。



ハイブリッド=低燃費という認識が進んでいた。当たり前だがハイブリッドモデルはエンジン以外にモーターも駆動を助ける。モーターは低速域から最大トルクを発生するという、エンジンにはない性質がある。

「SUVの高性能化」に対応するため、トヨタが目を付けたのは自社の専売特許と言っていいハイブリッドだった。2005年、ハリアーにハイブリッドモデルを設定。もちろん北米のレクサスRXにも用意される。



2005年 ハリアーハイブリッド(初代)

【V8級の圧倒的加速力と小型車並みの燃費を両立】

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エンジンはアトキンソンサイクルではなく通常タイプの3.3L V6で211馬力。さらに34.0㎏-mのフロントモーターを組み合わせた。新搭載のリダクションギヤは、高回転型のモーターをトルク側に振り分ける役割をするゆえ、実際はもっと高トルクとなる。さらにリヤモーターも加わり、その加速力は強烈そのもの。17.8km/Lというコンパクトカー級の燃費ながら、まるでV8 SUVのような走行性能を得た。



2代目プリウスで導入した電圧コントロールシステムを搭載した「THS II」に加え、ハリアーハイブリッドで初めて「リダクションギヤ」を採用。これは大トルクのモーターを使いたいが、それだと大きく効率が悪い。コンパクトで高回転型、効率のいいモーターを搭載し、それをトルク側に振り分ける役目を担うのがリダクションギヤだ。



かくして登場したハリアーハイブリッドは、3.3L V6と小さめのエンジンながら、強大なモーターの力を借りて、V8モデル並みの動力性能を獲得した。発進直後から最大トルクを発生するモーターの特性は、大きく重くなりがちなSUVとの相性が抜群。

しかも燃費は10・15モードで17.8km/L。当時V8を積むVWトゥアレグの燃費は6.6km/L。3倍近い燃費性能を誇っていた。



プレミアムコンパクトSUV市場を自ら切り拓き、高速化には独自のハイブリッド技術で対応したのがハリアー&レクサスRXだ。



初代&2代目に設定された特別モデル

1998年/2006々 ハリアーザガート

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イタリアのカロッツェリア「ザガート」(現SZデザイン)とコラボしたハリアーが、初代&2代目ともに登場している。写真の2代目モデルのザガートは、ベースモデルより200万円以上高額で、限定250台。まさにお宝だ。



2009年 レクサスRX(初代)

【随所にあふれるレクサス・クオリティで国内向けに初登場した実質3代目RX】

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2005年から日本でも展開され始めたレクサス。そのレクサスに初めて加えられたSUVがRXで、国内では初代だが実質3代目に相当する。3.5Lガソリンを搭載する「RX350」と、同ハイブリッドの「RX450h」を設定。RX450hは強力な動力性能を持つハイブリッドだが、燃費は18.8km /L(10・15モード)と優秀だ。また2010年には2.7L直4エンジンを搭載する「RX270」も追加設定されている。



2013年 ハリアー(3代目)

【国内専用となりダウンサイジング化&ハイブリッド採用】

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レクサスの展開によってRX化したハリアーだが、新たにRXとは異なる国内専用車として3代目がデビュー。新時代の環境対応車で2.5Lハイブリッドと、2Lバルブマチック仕様のガソリンをラインアップ。ハイブリッドはJC08モードで21.8km/Lを誇り、2L仕様でも16.0km/Lを誇っている。



2015年 レクサスRX(2代目)

【プレミアム感を大幅に高めつつSUVらしからぬスポーティさも両立】

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SUVとは思えないスポーティなエクステリアで登場した2代目RX(実質4代目)、日本向けはV6ガソリンモデルがなく(北米向けにアリ)、新世代2Lダウンサイジングターボ(238馬力)と3.5Lハイブリッドの2本立て。極めて動力性能の高いハイブリッドだが、燃費はJC08モードで18.8km/Lを達成する。



2017年 ビッグマイナーチェンジを実施

【2Lダウンサイジングターボを新設定】

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登場から4年経ちつつも、新型にはスイッチせず、ビッグマイナーチェンジを実施。クラウンに先行採用した2Lのダウンサイジングターボを新たに搭載したのは大きなトピックだった。ガソリンのNAとターボ、ハイブリッドそれぞれで装備面はかなり差別化され、より幅広いユーザーに対応。デザインもアップデートし、古臭さはなかった。



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