先進国でも車検が「ゆるい」国がある!

日本での車検が厳格だ。そうした声を、ユーザーの間でよく聞く。また、海外での車検は費用も安く、書類審査も簡単だという情報もネット上にたくさん目にすると思う。

どうして、国によって車検の在り方に違いがあるのか?



その点を考える上で、改めて車検とは何かを紹介したい。



日本の国土交通省によると、車検とは、自動車の検査登録のこと。登録には、「所有権の公証」と「保有実態の把握」という2つの目的がある。つまり、法律上で所有者が誰であるかを明確に、それがいつどのように売買され、市場に流通しているかを第三者がデータとして管理することだ。



そのうえで、技術的な検査は2つの分野がある。



ひとつは「保安基準への適合」だ。この「保安」という言葉、よく聞くと思うがその実態についてあまり気にすることはないだろう。



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文字通り、安全を担保することであり、自動車を走行させるうえで必要であると判断される安全の目安が「保安基準」といえる。保安基準によって、安全を100%担保することは難しいが、基準化することでメーカーやユーザーがクルマの安全に関する目安が分かる。



もうひとつは、公害対策だ。つまり排気ガス検査である。



日本の車検は「厳しすぎ」! 同じクルマでもなぜ海外との差が生まれるのか?



これら「保安」と「排ガス」について、国によって検査の判断基準に差がある。



経済新興国など、モータリゼーションが先進国より時期が遅く訪れた国に対してならば、車検が甘いのではないか、というイメージを持つ人もいるかもしれない。



ところが、実際には先進国でも日本と比べて車検が甘い国がある。



車検の「ゆるい」国は自己責任を重んじている

たとえば、アメリカだ。車両検査は、ステート・インスペクション(州検査)であり、州によって各種法律の差があり、ステート・インスペクションにも若干の差がある。庶民が利用するのは、廃業したガソリンスタンド跡地に設置された民間の検査場が多い。検査場といっても、排ガス検査に対する厳格な機器があるわけでもない。空いていれば、所要時間は30分もかからず、費用も数千円程度で済む。実際、筆者はこれまで複数の所有車を複数の州にてステート・インスペクションを体験してきたが、日本と比べてかなり甘いという印象を持っている。



そのたびに頭に思い浮かべるのは、「自己責任」という言葉だ。



これは車検に限らず、アメリカや他の国では、日本に比べて各種の検査について、単純に厳格化するのではなく、使用者の自己責任を重んじた”解釈の幅”がある。こうした社会背景の差が、車検の差に反映されているように思える。



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一方で、近い将来を考えると、クルマの電子化、または自動運転化などが進むことで、サイバーセキュリティ対策も含めた車検の在り方が変わり、国による検査の差がなくなっていくことも予想される。

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