回すために必要な力はハンドル径に比例する
国産車でいえば、昭和のクルマ、1980年代のクルマは乗用車でもハンドル径が大きいクルマが多かった。なぜ大きかったかというと、パワーステアリングが普及していなかったというのが最大の理由。ハンドルを回すために必要な力は、ハンドル径に比例する。
回転軸(支点)から伸びる出っ張り(作用点までの距離)が長ければ長いほど、梃子の原理が働き、出っ張りが2倍になれば、力は1/2でも同じ回転力が得られるので、大径ステアリングほど操作が軽くすることができる。
また路面からのキックバックも少なくなり、ステアリング操作に対する車体の反応もマイルドになるので、路面が悪く、車体が軽く、パワステがない時代のクルマは大径ハンドルが好まれた。
ベンツなどは80年代後半まで、かなり大径ハンドルにこだわっていたことでも知られている。アウトバーンを高速で移動することを考えれば、ハンドルはクイックでない方が落ち着いて走れるし、肩幅に近い幅のハンドル径の方が、握ったときに自然で疲れにくいと考えていたからといわれている。
クイックな動きには小径ステアリングが有利
また、国産車の場合、高速走行よりも車庫入れや方向転換などがしやすいことを重視し、操舵力の軽い大径ステアリングのメリットを採用するクルマが多かった。とくにパワステのないFF車はハンドルが重かったので、小径ステアリングは不向きだった。
一方で大径ステアリングは、ハンドルが軽くなる分、操作量が大きくなり、クイックな動きは望めない。スポーツカーでワインディングを小気味よく駆け抜けるには、小径ステアリングの方がよりシャープでフィーリングもよかったので、走り屋たちの間では、ノーマルのステアリングホイールから、小径ステアリングに交換するチューニングが定番だった時代もある。
しかし、パワーステアリングが普及してからは、軽さの問題は解決し、操作性だけが問われるようになったので、現在は360φ~380φぐらいがスタンダード。

パワステがあるからといって、あまり小径にしすぎるとデリケートで神経質な操作性になるので、スポーツカーでも360φぐらいが使いやすいサイズだといえるだろう。