「GT」や「R」は憧れの象徴だった

「名ばかりのGT達は、道を開ける」。こんな刺激的で、挑発的なキャッチコピーが日本車で使われた時代があった。そのキャッチコピーを掲げたのはトヨタ・セリカで、"名ばかりのGT"と揶揄されたのは当時の日産スカイラインだった。



GT-Rを失った当時のスカイラインにおけるGTというのはL20というSOHCの直列6気筒エンジンを積んでいるグレードという意味であって、けっしてグランツーリスモという言葉からイメージさせるようなハイパフォーマンスは有していなかった。そこを、DOHCエンジンを与えられたトヨタ・セリカが挑発したのだ。



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しかし、そんなセリカも時を経て、クルマ好きから「なんちゃってGTR」と呼ばれることになる。それが1985年にFFへと大フルモデルチェンジを果たしたセリカだ。このモデルには2リッターDOHCエンジンを積んだ「GT-R」というグレードが存在していたが、その最高出力は160馬力でしかなかった。



クルマ好き憧れの「GT」や「R」! 「走り系の証」じゃないクルマにも結構あった



1980年代のNAエンジンとしては優秀なスペックではあるが、ライバルであるスカイラインは2リッターDOHCターボで200馬力を超えることになるし、セリカでもWRCに参戦することになるトップグレードのGT-FOURは2リッターターボエンジンを積んでいた。そんなことからセリカGT-Rは、勇ましいグレード名ほどのパフォーマンスではないという印象が強くなっていった。



では、ライバル・スカイラインにスキはなかったのかといえば、そうでもない。1980年代にフルモデルチェンジしたR31型、R32型とも6気筒エンジンのベーシックグレードには相変わらず「GT」というグレード名が与えられていた。そのエンジンは相変わらず直列6気筒であるが、SOHCの実用ユニット。最高出力はR32スカイラインで125馬力と平凡なものであった。



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ちなみに、R32スカイラインでいえば同じ直列6気筒でもDOHCになるとGTSというグレード名になり、DOHCターボになるとGTS-tというグレード名になった。

そして、最強グレードが2.6リッターツインターボエンジンを積む「GT-R」であったのはご存じのとおり。



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スカイラインのグレード名にとってGTというのは単に6気筒エンジンを積んでいるという意味でしかなかったのだ。



探すと意外にも多い身近な「R」や「GT」たち

さて「R」というアルファベットからは「レーシング」という単語を連想するが、まったく違う意味で使ったのが、スズキが大ヒットさせた元祖ハイトワゴンの「ワゴンR」。車名の由来は「セダンもあるけど、ワゴンもあーる」というダジャレに由来するというのは有名な話だ。



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そんなスズキの軽自動車として2000年代にサーキットでよく見かけたのがKeiスポーツだ。もともとはクロスオーバーSUV的キャラクターだったが、スポーツハッチとしてのキャラクターが評価され、ワンメイクレースも開催された。そのために生まれたのが「KeiスポーツR」というグレードだった。(右:KeiスポーツR/左:Keiスポーツ)



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こちらは由緒正しいレーシングの意味でのRというアルファベットがついていたモデルだが、軽自動車には最高出力の自主規制があるためエンジン自体が変わるわけではなく、レースカーとして仕上げやすいベース車として生まれている。そのため、防振・防音用メルシート/ステレオ/スピーカー/パワーウインドウなど競技上不要な装備が取り除かれている。車体軽量化という点では評価すべきだが、街乗り用として買ってしまうと後悔しかない仕様だったのだ。



最後に現行モデルで「名ばかりのGT」にあたりそうなモデルを探してみよう。



かつてのスカイラインと同様にベースグレードにGTと名付けているといって思いつくのがスバル・レヴォーグだ。

同モデルにおいてGTはベーシックグレードであって、装備が充実したのがGT-H、スポーティな仕上げとなっているグレードの名前はSTI Sportであるのはご存じのとおり。



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とはいえ、現行レヴォーグについていえばエンジンは全車1.8リッターターボで共通で、サスペンションや内装の仕上がりでグレード間の違いはあれど、加速性能などのパフォーマンスについて差はないわけだからGTとつけていても違和感はない。



さらに言えば、スバルにおけるGTというのは、瞬発力ではなく長い時間乗っていられる、まさにグランドツーリング性能を示すアルファベットでもある。GTグレードであっても先進運転支援システム「アイサイト」が標準装備になっているのだから、じつは名ばかりのGTではなく、全グレードが高いGT性能を持っていることの証でもあるのだ。

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