陸サーファーからはファミリアが人気だった
東京オリンピックで正式種目になったサーフィン。日本人選手が男女ともにメダルを獲得して、この国にサーフィン文化が浸透していることをあらためて教えられた。それとともに思い出したのが、いまではほとんど使われなくなった、陸(おか)サーファーという言葉だ。
日本でサーフィンが若者に注目されたのは1970年代だという。1976年には雑誌POPEYEが創刊して西海岸のライフスタイルを紹介しはじめ、2年後にはサーフボーイという増刊号まで出した。同じ年にはアメリカでサーフィン映画「ビッグウェンズデー」がヒット。日本でも翌年公開されたことでブームが加速していった。
そこに登場したのが陸サーファーだった。サーフィンはしないけれどサーファーの格好をすることでブームにあやかろうという層だ。そんな人たちから絶大的に支持されたのが、1980年発売のマツダ・ファミリアだった。特に赤いボディのスポーティグレードXGが人気だった。

ルーフにはサーフボードを載せ、車内はインパネにヤシの木のミニチュアまで置いて気分を盛り上げていたが、海には行かず街を流していた。そんな行動を指して陸サーファーと呼ばれるようになったのだ。
トヨタからはサーフの名を冠するモデルが登場!
続いてトヨタからは車名にサーフを掲げた車種が登場する。カリーナサーフ、マスターエースサーフ、ハイラックスサーフだ。
トヨタは複数のボディにサーフの名を与えたわけだが、これは間違っていない。僕も湘南に数年住んでいたことがあるけれど、サーファーのクルマ選びはそれぞれのクリエイティビティをストレートに反映していて、とにかくバリエーション豊富。

ヨーロッパからシトロエンCXアンビュランス、つまり救急車を輸入して車内を作り変え、サーファーズエクスプレスとして活用している人も知っている。
では西海岸のサーファーはどんなクルマに乗っていたのか。雑誌やウェブでよく見かけるのはフォルクスワーゲン(VW)タイプ2だ。西海岸での空冷VWがキャルルックのように趣味の対象として親しまれていたことに加え、タイプ2は車内が広いので着替えや波待ちに使えることが大きいのだろう。

今の日本のサーフィンシーンは、タイプ2と同じワンボックスのハイエースを使う人が多いけれど、タイプ2からはクルマ選びもライフスタイルの一部というメッセージが伝わってくる。