この記事をまとめると
■同じ排気量、同じエンジン形式であってもメーカーによって排気音は異なる■市販車は排気ガスの振動を調整して透き通った音を残す調整をマフラーで行っている
■エンジンにとって滑らかに排気を放出することは適切な出力を得るうえで大切
スポーツカーにとっては排気音も魅力のひとつ
高性能エンジン車の排気音が大きいのは、高性能な迫力を音でも楽しませるためだ。ただ大きいだけでなく、その音色を調整している。
レーシングカーでは、排気音を抑えることは、車両規則で定められなければ行わない。
かつてエンジン開発者に聞いたことがあるが、理由はわからないという。それでも、同じエンジン形式であっても音色が異なって聞こえるのは事実だ。
以下は想像でしかないが、同じ排気量、同じエンジン形式であっても、燃焼室の大きさや形状はメーカーによって微妙に違うはずだ。同じ排気量であっても、ボア×ストロークの違いにより、ピストン径が異なり、それによって燃焼室の容積が若干変わる。
その燃焼室で燃やされるガソリンは、混合気に点火プラグで着火されたあと、どのように燃え広がるか、燃焼室の違いによって異なるのではないか。そして燃焼音が変わり、排気が振動しながら外へ出される際の音=排気音が違ってくるのだろう。また、ターボエンジンになると排気音が低音になる。排気のエネルギーがターボチャージャーによって減らされるためだ。
市街地を走る市販車の排気音は消音されている
レーシングカーでは排気音がそのまま大気へ放出されても、競技の演出のひとつとなる。しかし、市販のスポーツカーでは市街地も走るので騒音公害になる。このため、消音しなければならない。
消音といっても、音がまったくなくなるわけではない。音の基となるガスの振動を調整することで、雑な音は消し、透き通った音は残す調整が、マフラーと呼ばれる部分で行われる。
音の調整は、振動を次第に減らすため通路を複雑にしたり、ガラスウールと呼ばれる吸音材に振動を吸収させたり、それらを組み合わせることによって行う。
ライトウェイトスポーツカーではあるが、マツダのロードスターは、オープンカーとクーペのRFでマフラー内の構造を変え、排気音を別の音色にしている。
もし、排気音をまったくなくそうとするなら、排気のガス振動をなくさなければならない。それは振動を止めることに通じ、排気が滞れば、巡り巡ってエンジン内の燃焼ガスを出し切れなくなり、吸気を十分に導入できなくなって、出力を上げられなくなる。人間も、排出しなければおなかが張って食べられなくなるのと同様といえる。
エンジンにとって、滑らかに排気を放出することは、適切な出力を得るうえで大切なことであり、排気の消音にも、おのずと限度があるということだ。