この記事をまとめると
アウディが可変ボディ長のコンセプトモデル「スカイスフィア・コンセプト」を発表した



■快適な高速クルージングとシャープな走りを1台の車両で実現することがコンセプト



■1台の車両で相反する性能やハンドリングの実現が可能であることを示唆している



全長が伸び縮みするコンセプトカーをアウディが発表した意味

来たるべきEV時代を目前に控え、アウディが意欲的なコンセプトカーを発表した。スカイスフィア・コンセプトとネーミングされたモデルで、搭載するモーター出力は456kW(632馬力)、最大トルクは750N・m(76.5kg-m)とすさまじい。



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しかし、アウディがこのモデルでトライしたのは、可変ボディ長(ホイールベース長)だった。

ボディ中央部を250mm伸縮させることで、全長を4940mmから5190mmまで変化させるという。アウディは、このボディ長(というより実際の狙いはホイールベース長)の変化で何を意図したかといえば、スタビリティ(直進安定性)とアジリティ(旋回の自由度)の両立と見てよいだろう。



アダプティブホイールベースと名付けられたこの試みは、ロングホイールベース時は「GTモード」、ショートホイールベース時は「スポーツモード」という考え方で、GTモード時はロングホイールベースによる高いスタビリティ(同時に、室内長が伸びるので乗員は広い居住空間を得ることができる)、スポーツモード時はショートホイールベースによる旋回性のよさ(4WS機構も備えているという。経験的に転舵初期は逆相、旋回時は同相操舵で作用すると思われる)で、キビキビとした走りを作りだすことが狙いとなっている。



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言ってみれば、圧倒的な動力性能に支えられた快適な高速クルージング性能と、切れのよいスポーツカーの走りを1台の車両で実現することがコンセプトの車両と捉えてよいのだろう。ただし、あくまでコンセプトの提示が目的の車両であるため、たとえばホイールベースの伸張によるシャシー剛性、強度の変化が実際どの程度なのかは定かでないが、現代の車両設計技術をもってすれば、それほど難しい課題でもないだろう。



あくまで、ホイールベースの変化に伴う車両性格の変化に着目したコンセプトカーだが、ホイールベースと車両性格(ハンドリング)の関係に目を向ければ、すでに1990年代に試みられている。まったく同タイミングだったが、メルセデス・ベンツCクラス(W202)とBMW3シリーズ(E36)で、ボディ全長4500mmに対しホイールベース2700mm(W202は2690mm)の設定だった。



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日本車で当該サイズの全長は、トヨタならコロナ(190系)、日産ならブルーバード(U13)だったが、ともにFF方式でありベンツ、BMWとは駆動方式が異なることは留意事項だが、ホイールベースは2580mm(コロナ)、2620mm(ブルーバード)とかなり短めの設定だった。



長いホイールベースはスタビリティを向上させる代わりに回頭性、旋回性を損なうシャシーディメンションと考えられていたが、ベンツやBMWは前後オーバーハング(重量)を切り詰めることで、旋回性能に優れたハンドリングを作り出していた。



ちなみに、日本車のFRで真っ先にこのことに気づいた(実践した)のはトヨタ・プログレ(全長4500mm、ホイールベース2780mm)で、当時のトヨタ車中では異例なほどに優れたハンドリング性能を有していた。



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GTカーとスポーツカーの性能が1台に同居する

じつはアウディのスカイスフィア、全長の発表はあったものの、ホイールベースの具体値は確認することができなかった。

全長5000mm超クラスの車体長といえば、メルセデス・ベンツのSクラス(W223)がこれに該当するが、そのホイールベース値はそれぞれ3215mm(ロンクホイールベース車、全長5290mm)、3105mm(標準ホイールベース車、全長5180mm)で設定されている。先にも触れたよう、ベンツはスタビリティを第一義に考えながら、旋回性能の自由度も同時に追い求め、その結果、前後オーバーハングの質量軽減という手法で車両を作り上げている。



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メルセデスの全長/ホイールベースを参考例とするなら、アウディ・スカスフィアのホイールベース値は、やはり3000mm前後と見てよいたのだろうが、仮に伸張時のサイズを3000mmとするなら、縮小時は2750mmとなる。それぞれ、これ以上の数値となる可能性は高いが、本格的な巡航性能を持つラグジュアリー志向の高い大型車で、ホイールベースを可変させて旋回性を確保する理由はいまひとつ不明である。



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実際の話、残念ながらホイールベース3000mm超の大型サルーンでワインディングを攻めて走った経験はないが、このサイズでホイールベースが250mm違ったら、旋回感覚はかなり違ったものになるかもしれない。



しかし、それよりもむしろ、このホイールベース(車両全長)可変機構は、小型車クラスで実現されればそのメリットがかなり大きなものになることが容易に想像できる。ホイールベース伸縮時にはコミューター的な取り回しのよさ、最大伸張時はパッセンジャー空間を拡大して快適な移動空間の確保と、極端に言えば、1台2役的な実用性能の実現が可能となる。



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基本的にホイールベースは長ければ安定方向、短ければ旋回方向の特性となるわけだが、アウディのスカイスフィアは、時代の進歩が可変ホイールベースの実現を可能とし、1台の車両で相反する性能やハンドリングの実現が可能であることを示唆したものと受け止めてよいのではないだろうか。

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