この記事をまとめると
◼︎専用のレーシングカーばかりの世界でも市販車ベースのレースが開催されている◼︎ディーラーで買えるクルマに小変更程度で参戦できるので敷居が低いのが魅力
◼︎パワー差が少ないので白熱したバトルが繰り広げられる
ディーラーで買えるクルマでそのままレースに出れちゃう!
サーキットを舞台にしたレース競技にしろ、公道のワイディングを舞台にしたラリー競技にしろ、モータースポーツシーンでは競技のためだけに開発された専用モデルが最前線で活躍。そんなイメージを持つ方も多いと思うが、じつは市販モデルに限りなく近い状態で争われている競技があることをご存じだろうか?
確かにF1やスーパーフォーミュラなどのフォーミュラカーやスーパーGTのGT500クラスに参戦するクラス1規定モデル、さらにGT300クラスのGT300クラスに参戦するFIA-GT3車両ならびにGTA-GT300車両などはレース専用に開発された純レーシングカーであり、WRCのラリー1規定モデルもラリー専用のプロトタイプカーで、いずれもプロドライバー&プロチームを対象に開発されたモンスターマシンだが、ビギナー向けの入門シリーズおよび入門クラスに関しては、市販モデルに近い状態のマシンが最前線で活躍している。

まず、市販車に近いマシンのレースとして代表的なカテゴリーとなるのが、ナンバー付きワンメイクレースの代表格「ヤリスカップ」だと言えるだろう。

それゆえに、マシンの性能差が少なく、独走を許さない混戦が展開。いたるところで、テール・トゥ・ノーズ、サイド・バイ・サイドのバトルが展開されているが、この激しい接近戦が、参加者にとっても観戦者にとってもヤリスカップの魅力となっている。
これと同様にナンバー付きの軽自動車で争われる「N-ONEオーナーズカップ」もほぼノーマル状態のマシンで争われているレースだ。レースに必要な装備として、ロールゲージや牽引フック、バケットシート、4点式シートベルトを装着するほか、ショックアブソーバーやエキゾースト、バンパーやスポイラーなどのエアロパーツも指定部品より選択可能。

さらにブレーキパッドやタイヤ(エコタイヤ)&ホールなどは、ルール内に収まる範囲で自由に選択可能だが、それ以外の改造が制限されていることから、同シリーズでも常に激しいバトルが展開されているのである。
市販車ベースでありながら走りはレーシングカーそのもの
そのほか、「ロードスター・パーティレース」も改造範囲が厳しく制限されているレースで、ロールゲージや5点式以上のシートベルト、牽引用フック、消火器などの安全装備、そして、指定のブレーキパッドやホイールなどを除けば、ほぼノーマル状態のマシンとなっており、それゆえにスタートからチェッカーまで僅差のポジション争いが展開されている。

一方、ラリー競技に目を向ければ全日本ラリー選手権のJN1クラスに参戦する国際規定のR5仕様車は純レーシングカーであり、スバルWRXやトヨタGRヤリスなどの国内規定モデルに関しても改造範囲が広く、スーパー耐久の経験を持つ新井敏弘によれば「S耐のクルマより、ラリー車のほうがレーシングカー」と言わせしめるほど高いパフォーマンスを持つ。

しかし、下部クラスのマシンは改造範囲が厳しく制限されていることから、ほぼ市販モデルの状態だ。なかでもJN6クラスのRPN車両およびAE車両はノーマルの近い状態といっていい。具体的な改造範囲としてはロールゲージなどの安全装備に加えて、サスペンションやブレーキパッド、タイヤ&ホイールといった程度で、それゆえに比較的に少ない制作コストで参戦することが可能となっており、まさにビギナーに最適なマシンとなっている。

以上、簡単に市販モデルに近い状態のマシンで争われる競技とその車両を紹介してきたが、いずれもほぼノーマルに近いことから、上級カテゴリーのモンスターマシンと比べると迫力不足は否めない。しかし、僅差のバトルはドライバーにとってもギャラリーにとってもスリリングなポイントで、マシンの性能格差が大きい上級カテゴリーよりも緊張感のあるバトルを楽しめるようになっている。