この記事をまとめると
■轍とは多くのクルマが通行することによって路面にできるくぼみのこと



■原因はアスファルト舗装の特徴にある



■轍を防ぐために道路は舗装計画交通量に基づき設計されている



ハンドルが取られる原因に

多くのクルマが通行することによってタイヤの通る場所が変形し、くぼみができる「わだち割れ」、いわゆる轍。轍ができると、雨天は水がたまりやすくなるし、ハンドルが取られる原因にもなる。もともと平らだった道路なのに、なぜ轍ができてしまうのか。



かつては冬のスパイクタイヤやチェーンの影響で、轍が掘れてしまうことも多かったが、スタッドレスタイヤが普及した昨今では、クルマの交通量と通過するクルマの重量、そして夏の暑さによるアスファルトの変形が大きく影響している。



日本の道路の90%はアスファルト舗装だ。



アスファルト舗装には



・養生が不要なので、施工後すぐに交通開放が可能



・継ぎ目がないため走行音が静か



・コンクリート舗装に比べ、初期費用が安い



・成形が容易なため、舗装表面の平坦化が容易



・簡易な方法で補修が可能



・弾力があるので負荷がかかって変形しても、その力を取り除くと元の形にもどる(弾性)



といった特徴がある。



過積載も原因のひとつだった! 硬そうに見えるアスファルト道路...の画像はこちら >>



弾性があるのはいいのだが、交通量が多かったり、渋滞や一時停止、信号機のある交差点で、クルマの重みが想定以上に路面にかかると、塑性変形(外力を取り除いても残る変形)を起こして、路面に轍ができてしまう。



そうしたことを防ぐために、道路は舗装計画交通量にもとづいて設計され、下記のように五段階の基準が設けられている。



車道及び側帯の舗装の必須の性能指標

舗装計画交通量(単位 1日につき台)/疲労破壊輪数(単位 10年につき回)



3,000以上/35,000,000



1,000以上3,000未満/7,000,000



250以上1,000未満/1,000,000



100以上250未満/150,000



100未満 /30,000



過積載による道路へのダメージは深刻

もうひとつ、塑性変形輪数という基準もあって、こちらは



舗装計画交通量(単位 1日につき台)/塑性変形輪数(単位 1ミリメートルにつき回)



3000台以上/3000回



3000台未満/1500回



が基準だ。



この基準以内の交通量であれば、アスファルト舗装は大体10年はもつといわれているが、乗用車の通行をメインで設計した住宅地の道路を大型車が頻繁に走ったり、高速道路や幹線道路でも過積載のクルマが通れば、道路はたちまち傷んでしまう。



過積載も原因のひとつだった! 硬そうに見えるアスファルト道路に「轍」ができるワケ



とくに過積載による道路へのダメージは深刻で、重量超過車両による道路橋の劣化への影響は、重量(軸重)のなんと12乗に比例するとのこと。



たとえば、軸重が最高限度の10トンを2トン超えて12トンで走行した場合、軸重10トン車が9回走行したのと同じ影響をあたえてしまう。



さらに、軸重が基準(10トン)の2倍超過して走行した場合、道路橋に対して、たった1台でも、軸重10トン車の約4000台分以上の走行に相当し、大きく轍が掘れるだけでなく、ときには道路に穴が開いてしまうことも!



過積載も原因のひとつだった! 硬そうに見えるアスファルト道路に「轍」ができるワケ



というわけで、轍を作る三大原因は、過積載と渋滞(停止)、そして路面温度の高さに集約できる。



昨今の真夏の暑さは、短期的にどうこうできるものではないかもしれないが、前述のように、道路は舗装計画交通量によって設計されているので、クルマは最大積載量以内でもなるべく軽くして、生活道路などを裏道として多用したりせず、サグ部などでは意識してアクセルを踏み足したりして渋滞を防ぎ、少しでも道路へのダメージを減らし、フラットで快適な路面をキープできる努力はしたい。

編集部おすすめ