この記事をまとめると
■電動化を急進するボルボの40シリーズには48VマイルドハイブリッドとBEVがラインアップされている



■そんなボルボの40シリーズにレーシングドライバーの木下隆之さんが試乗した



■いずれのモデルも急ごしらえ感がなく高い完成度を誇っていた



すべてのラインアップの電動化が完了しているボルボ

それにしても、ボルボの電動化戦略の積極さには驚かされる。矢継ぎ早にまったく混じり気のないBEV(ピュア・バッテリー。エレクトリック・ヴィークル)をリリースしているのである。

今回ボルボは、ミドルサイズSUVである「40シリーズ」を中心に2023年モデルを発表し、C40とXC40にシングルモーターとツインモーターの2種類のBEVを用意した。



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世界はたしかにカーボンニュートラルに向けて大きく舵を切っている。地球温暖化の抑制のために、走行中に一切のCO2を排出しないBEVが救世主としてもてはやされている。だが、世界のすべての国が、盲目的EV信仰を歓迎しているわけではない。BEVとて生産時から廃棄までの過程において、CO2を多少ならず排出しているうえに、走行中に必要な電力をバッテリーにチャージするための、そのコンセントの先には化石燃料の燃焼があるからだ。



たとえば日本のように、東京電力のメルトダウン事件の傷跡が癒えず、太陽光や風力を活用した再生可能エネルギーの施策が遅れている国ではBEV化は進まない。しかしそれでも、その議論はともかく、ボルボの電動化戦略は驚速で進められているのだ。



ボルボがXC40のBEVを発表したのは2019年のこと。実際にそのクルマが走り出したのは今年、2022年だ。だというのに、2025年にはボルボが販売する半数のモデルをBEVにするという。日本では45%を目指すという。保守的な日本市場のBEV率は2022年時点でまだ1%だというのに、である。



【試乗】C40&XC40に乗ったらボルボ「電動化」の本気が見えた! 高い完成度と暴力的な速さに嬉しいオドロキ



しかも驚きは、いまからたった8年後の2030年にはすべてのクルマをBEVにするという。ハイブリッドすら生産を中止するというのだ。8年後にボルボは、テスラ同様、電気自動車専用メーカーになる。その鼻息は荒い。



とはいうものの、それまでの猶予期間はプラグインハイブリッドも販売する。48Vマイルドバイブリッドに搭載するエンジンをミラーサイクルに変更するなど、戦略は緻密だ。しかも、7速DCTと合体させるなど、内燃機関の開発も進めたというから感心する。本気で内燃機関から訣別するというのに、それまでも内燃機関のCO2排出を少しでも抑えようというのだから、その真摯な姿勢には頭が下がる。



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そして、さらに感心させられるのは、今回ドライブしたC40とXC40の完成度が驚くほど高いことである。2030年までの短い期間にすべてのクルマをBEVにすると宣言していながら、慌てて数合わせした形跡がうかがえないのだ。



まず最初に「XC40 B4 AWD」をドライブしてみて、その完成度に腰を抜かしかけた。48Vマイルドハイブリッドのそれは、とても滑らかに発進し停止する。

発進の瞬間はジェネレーターと一体になった48V電気モーターが加速をアシストするものの主体はエンジンである。だが、電気モーターと、搭載する直列4気筒2リッターターボの連携が整っているのだ。



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ツインクラッチの7速DCTも、シフトのアップダウンをまったく意識させないものだ。発進の瞬間に少なからず確認できるはずのクラッチミートのギクシャク感もない。48Vモーターがオブラートに包んでしまうのだ。



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そもそもXCはミドルサイズSUVから想像する荒さは皆無だ。都会を闊歩するのが相応しい高級SUVの乗り味である。サスペンションの突き上げも優しく、不快な振動も見事に遮断している。ロードノイズも抑えられている。そんな上質な骨格に、整ったパワーユニットが積み込まれているのだから、その走りが高級であるのも納得する。



アクセルべた踏みを躊躇させるほど力強いリチャージ

となれば、BEVがさらに上質であろうことは想像のとおりだ。



「C40リチャージFF」には、フロントに最高出力170kW(231馬力)、最大トルク330Nmの電気モーターを組み込み、フロントタイヤだけを駆動する。

ツインモーターに比較すれば数値的に抑えられているものの、日常の使用でパワー不足を感じることはない。電気モーターならではの駆動力調整が緻密だから、FFだとはいえ前輪のトラクション不足を感じることはない。



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公式的な資料によると、0-100km/hの発進加速は7.4秒とされているものの、感覚的にはもっと力強い。低速域ではアクセルペダルの床踏みをためらわせるほどパワフルなのだ。電気モーター駆動ゆえに、速度の上昇に比例して加速度が鈍る。したがって数値的には7.4秒となるのだが、たとえば仮に0-50km/hを計測したら、爆発的な数字を残すのであろうと想像した。



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そんなだから、「XC40リチャージAWD」、つまりツインモーターの速さは激烈である。ツーモーターの合計で最高出力300kW(408馬力)、最大トルク660Nmを発揮する。0-100km/hはシングルモーターの7.4秒を大きく短縮する4.7秒だというから空いた口が塞がらない。



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無音のままドカンと加速するさまは、どこか暴力的である。正直なところ、これほどのモーターパワーをどこで引き出す必要があるのか頭を悩ますほどである。よほど攻撃的な走りをしない限り、シングルモーター仕様で十分に思えた。

それほどツインモーターは力強いのである。



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「ワンペダル感覚」が強いのも特徴だ。アクセルオンで加速するのは当然のこととして、アクセルオフで強い減速感が得られるのは異例である。内燃機関で言うところのエンジンブレーキを、より回生力を高めることが強調しているのだ。アクセルを急激に抜くと、ガクッと首が倒れそうになるほど減速Gが発生する。感覚的にはエンジンブレーキの5割増しである。そのままにしていると、完全停止する。近い将来の完全ワンペダルを想像した。



日産も同様にワンペダルシステムに前向きだが、移行期には好き嫌いが分かれる。そのために、スイッチで強弱のコントロールが可能だが、ボルボにはそれがない。ワンペダルには一長一短があるので、個人的には違和感がある。だが、ワンペタル感覚を一本に限定したその潔さもボルボらしい。



そもそもXC40とC40は、骨格とパワーユニットをともにする兄弟モデルである。XC40が正統派なSUVであるのに対してC40は、そのクーペスタイルから想像するように若々しさが宿る。購買層にも特徴がある。XC40が保守層に支持され、C40のユーザーは先進性を求める。となれば、XC40では48Vマイルドハイブリッド比率が高まり、一方のC40は、それこそ先鋭的な刺激を求める層に支持されるのではないかと想像した。



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ともあれ、駆け足でBEV化を進めるボルボにとって台数が期待できるXC40/C40シリーズは、脱炭素化に欠かせない重要なモデルとなる。だからこその完成度なのだろう。



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