この記事をまとめると
■金融車はローンが未完済の状態で売買されているクルマ■ほとんどの場合、名義変更ができない
■現在では流通しにくくなっている
どう考えても手を出すべき商品ではない!
いわゆる金融車といわれるクルマは、個人や会社などがローンでクルマを買ったものの、支払いできずに人手に渡ってしまったものです。昔で言うところの「質流れ品」といっても、若い方には通じないかもしれませんね。
ご承知のとおり、ローン返済中はクルマの所有権はローン会社にあり、クルマを買った本人は使用者という立場になります。
この無茶をちゃっかりビジネスにしているのが「クルマでお金貸します」なんて広告を出している金融業者だったりします。なにしろ、ローン中だろうが、差し押さえられそうなクルマだろうが、ハードそのものには価値があるわけで、業者はメルセデスだろうがレクサスだろうが、はたまた走行少なかろうがコーティングしてようが「足もとを見て」安く買い取るのです。ウシジマくんでなくたって、バンバン叩いて安く買う。
こうして買い取られたクルマが金融車と呼ばれるわけですが、所有者が売ったわけではないので、たいていの場合、名義変更ができません。すると、納税もできないので、継続車検の取りようがありません。さらには、各種保険すら入れないわけですから、どう考えても手を出すべき商品ではありません。

が、金融車は安い! だいたい中古相場の半額は当たり前で、車検の残りが1年以内だとしたらさらに半額、つまり相場価格の25%ほどで手に入るケースもあるのです。当たり前ですよね、期間限定でしか乗れないわけですから。また、たちの悪い業者ならセールストークとして「駐車違反だって、(速度違反で)オービス撮られたって、前の持ち主に通知いっちゃいますから安心ですよねー」かなんかほざくわけですよ。
しかも、金融車というのはわりかし高級で、かつ人気のあるクルマが少なくありません。なぜなら、個人、法人問わず、ローンで破綻するような方々はメルセデスSクラスやレクサスの上のほうなんかを買いがち、だからではないでしょうか。
いま金融車に乗っている人はほとんどいないだろう
もっとも、今の今は金融車を手に入れて乗っている方、国内ではごく稀ではないでしょうか。まず、ネットオークションはルール改正で名義変更のできないクルマの取引はできなくなっていますし、車種によらず海外に輸出したほうがより高く売れるからにほかなりません。もちろん、正規輸出もまた所有者による権限移譲が必要なのですが、ここは「軽くばらしてパーツ、部品扱い」や「クズ鉄扱い」なんて抜け道もありますからね。
ちょっと前までは、小さな中古車屋さんにいくと値札がついてない新古車みたいなクルマが転がっていて、社長に尋ねると「ニヤリ」とゲスな笑みを浮かべられたりしましたが、今となっては昭和っぽいエピソードでしかありません。

昭和といえば、そもそも金融車は当時の反社会組織にとってはビジネスの一環だった、みたいなことを耳にしたことがあります。取り込み詐欺と似たような手口ですが、まずはローンが組める人物(たいていは覚せい剤中毒者や、戸籍を売却するような住所不定無職)を使って高級車を購入。もちろん、返済なんて端からしないで、すぐさま組織が運営している金融業者に売却(というか移譲)。そして、この金融車を売りさばくのですが、買わされる相手というのは組織からお金を借りているなど弱みがある人物。もちろん、金融車とはいえ売値は安いわけがなく、足もとを見られて新車並みにふっかけられるのがデフォルトでしょう。
「あー、もしもし、オタクでバンザイ(返済不能)した〇〇さんのレクサスね、どこの誰がゲットしたか知ってるよ! なんだったら、ウチで回収してくるけど……。ああ、もちろん格安で! なに、世の中助け合いだろ、助け合い、ねー」とかなんとか言っちゃって。

さらに、回収してきた金融車をローン会社から正規の手段で買い取り、組織が運営している中古車ショップで売ったりするなんてこともざら。1台のクルマで、一体いくら稼いでいるのか、まったく悪い奴ほど頭が切れるものです。
なお、名義変更できないという弱点ですが、これまた反社組織に言わせれば「寝言は寝て言え」と抜け道があるそうです。が、こればっかりは書くわけにはいきません。ともあれ、前述のとおりそんな危ない橋を渡るより、とっとと海外で売りさばくほうが「儲かるョ」とのこと。
悪いこたぁ言わないから、これ読んでる方はゆめゆめ金融車などに手を出しませぬよう、くれぐれもご自戒ください。世の中、うまい話などひとつもないのですから!