もっとも、昨今の日本は、災害大国といっていいほど地震や風水害が頻発している。国民の防災意識も年々高まっており、防災アイテムを常備する世帯も珍しくなくなっている。そうしたなか、販売台数が増大しているのが非常時の電源として活躍するポータブル電源や携帯発電機だ。
非常時の電源喪失は、被災地での不自由な生活を余儀なくされる。一方で、電源確保ができれば、当座の生活は最小限の不安で過ごせる。そうしたことから、防災アイテムとしてのニーズは高く、ネット通販やホームセンターなどでも専用のコーナーが設けられるなど、多くの機種が販売されている。
消費者庁が注意喚起
非常時にはとくに頼りになるアイテムだが、注意点もある。「自然災害による停電の際にも使用される携帯発電機やポータブル電源において、製品起因の事故以外に誤使用が原因の事故も発生しています。また、停電復旧後の通電や被災で損傷した電気製品の使用が、火災の原因となることもあるため注意が必要です」
こう注意喚起するのは消費者庁だ。どんな危険性が潜んでいるのか。消費者庁は、携帯発電機、ポータブル電源それぞれについて、HP上で次のように注意点を示している。
【携帯発電機】
・屋内では絶対に使用しないでください。
・屋外であっても、自動車内やテント内で使用すると屋内と同等の危険性があります。排ガスが逆流しないように出入口、窓などの開口部から離れたところ、かつ、風通しの良いところで使用してください。
【ポータブル電源】
・落としたりするなど衝撃を与えないようにしてください。もし、強い衝撃を与えてしまった後、発熱、変形などの異常を感じた場合は、使用を中止して製造・輸入・販売事業者の修理窓口に相談してください。
・高温環境下での使用は控えてください。また、長期間使用しない場合は、箱に入れて直射日光が当たらない冷暗所に保管しましょう。
・屋外では、防水・防じん性能を有する製品の使用を検討しましょう。
どちらの機器も製品の特性を十分に理解せず、誤った使い方をすると、防災どころか二次災害を引き起こす可能性があるということだ。
携帯発電機では誤使用で死亡リスクも
たとえば携帯発電機は、ガソリンや軽油、ガスなどの燃料でエンジンを稼働させ、装置内のコイルや磁石を回転させることで発電する。そのため、室内で使用した場合、一酸化炭素(CO)中毒になるリスクがある。経済産業省所管の独立行政法人「製品評価技術基盤機構」(NITE)が行った実験の一例では、室内での使用後約8分でCO濃度が2034ppmになっている。
実際、2020年9月8日に北海道の50代男性がCO中毒で死亡、2020年9月7日に発生したCO中毒による鹿児島の事故では1人が死亡、2人が重症に。どちらの事故現場にも家庭用携帯発電機があったという。
両事故とも自然災害(地震、台風)発生時にインフラが遮断されたなかでの出来事で、まさに”二次災害”といえる。
ポータブル電源については、2022年3月に宮城で、同年8月に東京で同電源からの発火により火災が発生している。これらは「通電火災」の可能性もあるとみられている。
通電火災とは、自然災害に伴う停電復旧後、可燃物が接触した状態の電熱器具や、水没や部品破損した電気製品に電気が流されることで発生する火災のこと。災害後に発生しがちな状況だけに、十分に注意する必要がある。
いまや防災グッズとして、広く浸透しているポータブル電源、携帯発電機。水や食料も大事だが、電源がない不安はいまの時代、甚大だ。
備えあれば憂いなし。防災対策に電源確保の優先度を高めるのは賢明だとしても、同時にその扱い方をしっかり意識しておかないと、「憂いなし」どころか、”二次被害”という災難を被りかねない…。