この連載では、PTAという組織がどのような仕組みを持ち、どう運営されているのか、またどれほど多様であるのかを見ていく。
第3回では、PTAをとりまくジェンダーの偏りと、その背景を考える。(連載第1回はこちら/全5回)
※この記事は元朝日新聞記者の堀内京子氏による著作『PTA モヤモヤの正体――役員決めから会費、「親も知らない問題」まで』(筑摩書房、2021年)より一部抜粋・再構成しています。
PTAは母親の仕事?
PTAによっても違うが、PTA活動の一環として、学校行事の受付や来賓へのお茶出し、ベルマーク集めや教育講演会の参加などに、母親(=女性)が当然のように駆り出されることも多い。しかもそれは無償でやってもらうことが前提になっている。「学校行事の度に運営役員が駆り出され、お茶くみや弁当配りをさせられることに納得がいきません。卒業式の来賓へのお茶出し、終了後の食事接待の準備・片づけ、教員の祝賀会の準備、先生方との食事。必要でしょうか?」(神奈川県・40代女性)
PTAを取材すると、日常の活動を担っているのは圧倒的に母親のほうだが、懇親会もかねた研修などでは男性が目立つ。取材で出会う会長も、男性が多い。
調べてみると、その印象を裏付けるデータがあった。内閣府の『男女共同参画白書(平成21年版)』は、小・中学校のPTA会長に占める女性の割合を都道府県別にまとめている。
ばらつきはあるものの、都市部では女性の割合が比較的高かった。最も高かったのは東京都で、男女比はほぼ半々。神奈川県と奈良県は「3人に1人が女性」で、それに続く埼玉県は「4人に1人」だった。
女性会長が10パーセントに満たない自治体は36道府県あり、うち3パーセント以下だったのが、山口県、長野県、石川県、愛媛県、岐阜県、福井県、富山県、山形県だった。
会長には男性がなるのが“社会慣行”?
長野県の岡谷市は男性の地域参加について、市内の小・中学校のPTA正副会長らと保育園保護者会の役員計140人を対象に2011年にアンケートを実施している。117人から回答を得てまとめられた報告書によると、女性会長が少ない理由(複数回答)で最多だったのは「家事・育児に忙しく、活動に専念できない女性が多い」だった。PTAの6割、保育園の4割が挙げている。
次いで、「男性が会長になるのが社会慣行」で、PTAの5割、保育園の4割が選んだ。この報告書は「『会長は男性』という社会慣行を見直し、規約・業務の見直しや選出方法の検討など環境づくりが必要」だと指摘しているが、これは各地で見られる傾向ではないだろうか。
ちなみに、2018年に発表された文科省の地方教育費調査によると、教育委員会のトップである教育長の中で女性の割合は、都道府県で6・5パーセント、市町村では4・2パーセントに過ぎない。
教育委員全体で見ると、都道府県、市町村のいずれも約4割が女性であるにもかかわらずだ。子どもや保護者と密接な関わりを持つPTAと教育委員会の構成員の多く、または半数は女性だが、トップは男性という地域は少なくないのだろう。
女性・男性それぞれの“リアルな声”
ジェンダー役割の押しつけと、役職者の男性への偏りについて、朝日新聞のアンケートから女性たちの声を拾ってみよう。「会長だけ女性でも意味がない。ふだんの活動が男女半々になれば変わるかも」(奈良県・50代主婦)
「父親の参加が増えれば、女社会が薄まるから大歓迎。でも、男性が入るとやりにくいと言う人もいる」(東京都・40代主婦)
「やる気のある男性が入ってくると大変なことになるので、入ってきて欲しくありません。いいことをしているという気持ちは認めますが、そのために母親たちが犠牲にしなければならないことが見えていない。
「PTAは母親の仕事で、母親は無理してやる義務があるが、父親に頼むのはイレギュラー」だと、なんとなく考えている女性たちも少なくない。女性の出席割合が多い役員決めでの経験を書いてくれた人もいた。
「役員決めのくじ引き。父子家庭は『仕方ないよね』と免除されるが、母子家庭は免除されない。夫を亡くしたばかりで収入の安定度や有休がないなど、こちらが免除されるべきではないかと泣きそうになった。やってみれば、委員から私的な面も支援を受け精神的にすごく助けられた」(東京都・40代女性)
女性PTA会員へのハラスメントも見過ごせない。
「校長や教頭の異動や定年退職があると役員は8000円から1万円の会費を集めてホテルでの謝恩会をした。半強制。懇親会ではチークタイムがあり、驚いたし気持ち悪かった」(大阪府・40代女性)
「地域」で開かれる宴席への参加やお酌を求められる、宴会でスリッパの整理などをさせられる、「PTAは地域の『嫁』と思われている」というお便りもあった。時間のやりくりをして、夕飯を作り置きして子どもを家に残し、ボランティアに駆り出されたあげくにハラスメントでは、本当にやっていられない。
男性の中には、「PTAは女性のやり方を知る機会」だと肯定的にとらえている人たちもいた。
「会長でした。
「昨年、初めて役員を経験しました。PTAにあるのは『女の文化』。情報の入手の仕方、合意形成の仕方、ネットワークのつくり方など、男とは全然違っていてとても新鮮でした。時間がかかって、一見、無駄が多いようにも見えますが、あのコミュニケーション能力はすごい。ほとんどの組織が『男の文化』に支配されている日本社会にあって、『女の文化』が息づいているPTAの存在価値は小さくないと思います」(神奈川県・50代男性)
「おやじの会」に冷ややかな見方も
育児だけでなく、PTA活動にも積極的に参加したいという父親たちは増えているように感じられるが、全国的に見ればPTA活動の負担は今も圧倒的に母親のほうに偏っている。それなのに、発言力も立場も弱い。PTAとは別に、父親を中心に活動する「おやじの会」というものがある。全国に4000以上あると見られている。地域の人が誰でも参加できる緩やかな団体もあれば、行政主導でPTA組織の一部として位置づけられているところもある。
おやじの会では、自然体験やバーベキュー、段ボールハウスでの学校お泊まり会などの活動がよく見られる。従来のPTA活動の中心を担う女性たちの中には、このおやじの会に冷ややかな見方をする人もいる。
「本来、自由参加であるべきPTAに、母親たちが協力を無理強いされてヒイヒイ言っているのに、男性だけで楽しんでいるように見える。そんな暇があればPTAに参加してほしい」(東京都・40代女性)
「なぜおやじの会だけ、自由で楽しそうなのかと思う」(札幌市・40代女性)
かつて取材した、あるおやじの会の連合会代表は、長く続けるひけつとして「やりたい人がやりたい時間に来ればいい。子どものため、地域のためと言い過ぎると、義務感が生まれ、恩着せがましくなる。気楽に」と話してくれた。
彼によると、「おやじの会」を楽しく続けるコツは、次の5点。
①「子どものため」「地域のため」と気負わない
②役員は代表を決める程度で
③会費を取らない(イベントで稼ぐ、助成金に応募する、参加者の実費負担、など)
④規約を作らない
⑤「メンバーが減って会がなくなっても仕方がない」と割り切る
しがらみも少なそうで、一般的なPTAとは、かなり違う。このやり方で単P(学校ごとのPTA)が運営されたらどれだけの人が救われ、自由な活動ができることだろう。
「母親への非難は父親の100万倍」
作家の川端裕人さんは、PTAの中での母親への圧力を、「母親への非難は父親の100万倍」と表現する。小学校PTAで5年間、委員を務め、副会長も経験した。1年のうち400時間以上を費やしたけれど、活動の見直しや保護者のコミュニティづくりなどもうまく行かず、何もできなかった「負け組」だと振り返る。そんな川端さんはこう語った。
「PTAの業務は、女性が担うと想定されていて、参加しない母親は、参加しない父親の100万倍も非難される。
男性については、「PTAでは、男性は女性に比べ、その相互監視から少しだけ自由。僕がうらやましいと思うような、小手先ではないPTA改革事例のリーダーも大抵、男性たちです。それは男性のほうが意思が強いからできたというわけではなく、単にPTAに男性が参加することが想定外だっただけ。いわゆるイクメンたちも、素のままでPTAに放り込まれたら、過剰適応してPTAの論理に染まり、自己規制を始める人が多いと思う」と指摘してもいた。

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