4月28日、健康保険法等の一部を改正する法律案が衆議院本会議で賛成多数により可決され、参議院に送付された。法案の柱の一つである「一部保険外療養」の創設により、市販薬(OTC医薬品)と成分が類似する77成分・約1100品目の医療用医薬品について、薬剤費の25%が公的保険の給付対象外となる。

高市早苗首相は4月24日の衆議院厚生労働委員会で「限られた財源および医療資源を効率的に活用するため」と法案提出の意義を述べた。
一方、全国保険医団体連合会(保団連)は4月24日と28日に立て続けに声明を発表。「国民皆保険の根幹が壊される」として参議院での廃案を求めた。

「法制上は薬剤費全額を保険外にすることも可能」

政府が見直し対象とするのは、鼻炎薬、解熱鎮痛薬、去痰薬、便秘薬、抗アレルギー薬など、市販のOTC医薬品と成分や効能が近い医療用医薬品だ。厚生労働省は、保険を使って医療機関で処方を受ける場合と、保険を使わず自費でOTC医薬品を購入する場合との「公平性」を見直しの理由に挙げている。
改正後は、対象薬剤の薬剤費の4分の1が「特別の料金」として保険給付の外に置かれる。たとえば薬価1000円の薬を3割負担の患者が使う場合、現行の自己負担が300円であるのに対し、改正後は薬価1000円のうち250円が特別料金となり、残り750円が3割負担(225円)となるため、自己負担額が合計475円に膨らむ。厚労省の試算では、この見直しで年間約900億円の医療費削減を見込んでいる。
一方、現役世代の保険料軽減効果は加入者1人あたり年400円(月33円)にとどまるという。
保団連の竹田智雄会長は4月28日の声明で、対象薬剤と負担割合の拡大に歯止めがない点を問題視した。
昨年末の財務・厚労大臣の「大臣折衝事項」には、今後、対象範囲や負担割合を拡大していく方針が明記されている。4月24日の衆議院厚生労働委員会では、上野賢一郎厚労相が薬剤費全額を保険外として別途負担を求める可能性について「法制上は可能」と答弁した。保団連はこの点を取り上げ、際限のない負担拡大への懸念を示している。

さらに深刻な論点がある。「一部保険外療養」の対象が薬剤以外の「その他の医療」にも広がりかねない法律の規定だ。
4月15日の衆議院厚生労働委員会で、厚生労働省の保険局長は「現時点では想定していない」と答弁。しかし上野厚労相は「規定ぶりとしてはそう読める」と述べ、将来の対象拡大を明確には否定していない。

花粉症患者、月1500円負担増の見込み」

現行の健康保険法63条1項は、疾病・負傷に対して診察、薬剤、処置・手術、看護などを一体で保険給付すると定めている。保団連は、今回の「一部保険外療養」がこの原則を崩し、日常的に使う薬を保険給付から外す仕組みだと批判した。
具体的な負担増の例として、花粉症で受診し内服薬1種類と点眼・点鼻薬を処方される患者のケースでは、月1500円の追加負担が生じるとしている。
保団連が呼びかけた、薬の追加負担をやめるよう求める署名には、短期間で11万筆超が集まった。対象薬を使用する患者からは「痒みや痛みが生活に及ぼす影響を軽視しないで」「安心して生活させてほしい」といった声が寄せられているという。

出産支援の拡充や高額療養費の年間上限新設も

法案には負担増の施策だけでなく、出産費用の軽減策も盛り込まれた。通常分娩の標準的な費用について妊婦の自己負担をなくし、医療保険から施設へ直接支払う仕組みへの移行を目指す。国民健康保険の子どもに係る均等割保険料の5割軽減措置は、未就学児から高校生年代まで拡充される見通しだ。
高額療養費制度では新たに年間上限が設けられる。
月ごとの自己負担が積み上がっても、年間上限に達した後はそれ以上の支払いが不要となる仕組みで、長期療養者のセーフティネット強化が狙いだ。
後期高齢者医療制度では、確定申告の有無にかかわらず上場株式の配当等の金融所得を保険料や窓口負担割合の判定に反映させ、不公平を解消する改正も含まれている。
OTC類似薬の追加負担は公布後1年以内に政令で定める日に施行予定で、2027年3月の開始が見込まれている。


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