今回は就任から1か月を迎えた小泉農水大臣を直撃しました。随意契約米の放出や長年続いたコメの作況指数の廃止など次々に新たなコメ対策を打ち出す小泉大臣。

(大石邦彦アンカーマン)
東京・霞が関に来ています。岐路に立たされている日本の農政、今後どう舵取りしていくのか、小泉農水大臣を直撃します。
(小泉進次郞 農水大臣)
こんにちは、きょうはよろしくお願いします。
(大石)
よろしくお願いします。

(小泉大臣)
(モニターに)これはコメの価格を出しています、各地域の。
(大石)
地域で大分、格差がありますよね。

まずは、異常な高騰を見せたコメの価格から。
(大石)
コメのスーパーでの小売り価格なんですけれども、どんどん下がっていて3000円台に入ってきました。最新ではどのくらいなんでしょうか?
(小泉大臣)
最新は、ありがたいことに、さらに119円下がって3801円。ここまで全国平均価格が下がってきた。5週連続下げトレンドに入ったのは農水省が令和4年からデータを取っている中で初めてのこと。
小泉大臣が考えるコメの適正価格は?

(小泉大臣)
これは民間企業と農水省、本当に感謝している。民間企業は5月21日に大臣になって、できれば6月上旬に2000円の随意契約のコメを店頭に並べてもらいたい思いだった。すると次々に民間企業の一番乗り合戦が始まって、6月4日、6月2日…「うちは5月31日」ということで5月中に店頭販売ができた。これは民間企業の皆さんの協力は、ものすごく大きい。

一方、コメ農家からは安い備蓄米の流通で、コメの価格が下がりすぎるのではという不安の声も。
(コメ農家 八木輝治さん)
「ことしの新米、8月に取れるコメがいくらになるのかが一番心配。今の安いコメが出てきて、もっと去年より下がるとなると、めちゃめちゃ危機感あります。(Q:農家が考える適正価格はいくら?)3500円くらいですかね」

(小泉大臣)
間違いなく言えるのは農家の努力が報われる価格にしないといけない。資材も上がっている、人件費も上がっている状況で、それを割り込んでいくのが良くないのは間違いない。
石破総理は3000円台。5キロで3000円台と言っていますが、農家の中でも一部混同している可能性があるので正確に言うと、私が流している随意契約の備蓄米は古いコメ、これから出てくるコメは新米ですよね。新米も同じ2000円になるのではないのかという不安を持たれている生産者の方がいるとしたら、絶対そういうことはないです。
消費者のコメ離れを防ぐために

(小泉大臣)
状況を見ていると石破総理が3000円台だと申し上げてから、私もコメ農家と話します。どれくらいの規模でコメ作りをやっているかで結構違います。
例えば大規模でコメ作りをやっている方は適正価格は3000円だなと言う方もいます。法人協会の方は、そう言っています。一方で3500円という方もいる。多くのコメ農家が3000円台とする認識を持っている感じはする。

政治として今までとは違う異例のことですけれども、何とか高すぎる今の状況を冷まさないと、消費者のコメ離れが進みかねない。特に番組を見られているような高齢者の方の中で年金生活の方は、スーパーの経営者の方に聞くと、コメじゃなくてパンと麺とシリアル、こっちに流れている。コメが高いから。やはり高すぎるコメのせいでコメ消費がさらに減る。これを食い止めたい。

(大石)
外国産のコメありきの供給量の安定というのは目指さないですよね?
(小泉大臣)
目指さないです。外国産米が増えているのは政府が介在しているものではありません。
減反によるコメ作り抑制の見直しは?

(小泉大臣)
ただ戻してはいけないと思っているのは、農水省は昨年、新米が出てきたらコメの価格は下がると言いました。でも結果は違いましたよね。8月から9月、この端境期を迎える時に新米が出てきたら価格は下がるのか、それとも上がるのか。これはどっちになるんだと世の中の皆さん思っています。上がり過ぎたものは下げにいくけど、中長期のことを考えていったら消費者が安心して買える環境と生産者がコメ作りのコストが報われるような環境を作っていく方向につなげていく、そこに向けての丁寧な説明が必要というのはこれから。

(大石)
これまでは事実上の減反を、ずっと続けてきました。完全に増産にかじを切るんでしょうか?
(小泉大臣)
できる限り作るのではなく、作りたいという思いの方を大切にしたい。よく農家の声も聞かないといけないので、今コメ農家にアンケートをしている。一人一人約70万人。
耕作放棄地を増やさないためには

ことしも既に主食用のコメは40万トン増産される見通しです。しかし、これはあくまでも今使われている田んぼの範囲内で、飼料米などを減らした結果。純粋にコメ全体を増やすことは簡単ではないといいます。

(小泉大臣)
現実、相当厳しいのは耕作者がいない農地が、これから10年間で相当出てくる。コメ農家さんは特に平均年齢70歳ですから。今、10年後に地域の農地の在り方ってどうなってるんですか、そういったアンケートをとっている。また地域計画を作るんですが、それを見ると地域によっては6割の農地がもう耕作者がいない。これ全国平均では3割なんですよ。今から新たな耕作地を増やすかどうかということよりも、今まで大切に守り続けてきた農地を、誰も耕作しなくなるということをいかに防ぐか、こういったことになってくる。

これは地域社会と相当、将来像に密接に関わっていて、誰も新たなプレイヤーを入れなかったら、もうそこは耕作放棄地です。新たなプレイヤーを新規参入も含めて企業や新たな法人、新規で農業に挑戦したい。
どのようにコメ農家の収入・生活を支えていくか

(大石)
一方で今、主食米以外で言うと小麦や大豆に転作する方もいらっしゃいます。転作奨励金をコメ農家の方の生活保障に充てていくということも今後考えますか。
(小泉大臣)
どのようにコメ農家さんの収入・生活を支えていくかというのは与野党からもいろんな提案がある。今、決まっている政治のスケジュールから言うと、令和9年度以降の水田政策を大きく転換していこうと考えています。どのようにコメ農家さんの経営を支えていくのかっていうことはフラットに何かに今限定せずに議論をしなければいけないと思っています。ご指摘のような収入を支えていくあり方、私は今ある保険の収入保険というものも、改善が必要ならしなければないと思いますし、直接支払いという形で農家の方に直接支援をする形も、どのように見直すべきか。野党も所得補償も含めて話がありますし、総理もこれから規模拡大とか生産性を高める、この部分については一定の支え方っていうのは必要なんじゃないかという思いを持たれていますので、そこをよく考えていきたいと思います。

(大石)
多くのコメ農家が売り先として頼っているJAの在り方について変えた方が良い所は?
(小泉大臣)
コメで言うと農家の皆さんが売り先をちゃんと選べる、競争条件の整備は大事だと思います。地域によっては既にそういう状況になっている地域もある。例えば、どこにコメを売ろうかなという時に農協に売ろうかな、それとも他に売ろうかな、私は農家さんが選ぶことが大事だと思います。農家さんの手取りを上げるには。
農家が作ったものを、より評価される市場で売っていくこと

(大石)
概算金の廃止は、この秋から?
(小泉大臣)
私は概算金が基本だということを言っているんですよね。この思いというのは何度も言っていますけど、農家の皆さんが売り先をちゃんと選べる。地域によっては農協しかないという地域も、もちろんある。これは概算金の話だけには限らないで、
例えば農業機械、これも高すぎるという話がありますよね。農薬・肥料・ダンボール、様々な農業のために必要な資材がある。この農業資材を販売をすることを今までJAグループがやってきて、それを買うのがお客さんである農協の組合員・生産者
。その皆さんに対して、やっぱり大事なことは、より安いものを、より良いものを、農家に販売をして手取りを上げて、かつ農家の皆さんが作ったものを、より評価される市場で売っていくこと。これが私は農協の一番大事なことだと思っているんです。

(大石)
濃淡はあれど農協がないと困るという方はたくさんいる。
(小泉大臣)
農協を全部なくせなんて全く言っていませんから。大事なことは競争相手は必要です。テレビ局だって同じじゃないですか、あそこの局は視聴率どれぐらいだとか。政治の世界も、やはり競争って大事ですよ。
(大石)
JA独占ではない形に?
(小泉大臣)
農協が農家の皆さんから選ばれる組織として地域にいるなら、それはそれで幸せなことなんですよ、農家の方にとっても。今まで私が(自民党)部会長時代からやっていますけど、例えば農家の皆さんが野菜を出荷するダンボール、これも相見積もりをやっていないケースだってあった。その時に自己改革という風に言いますが、競争相手がいるから初めて少しでも農家に選ばれるようにしようと思うわけじゃないですか。そういう環境はもっと作っていった方がいいという思いです。
このスピードでいかないと間に合わないという思い

(大石)
小泉大臣の改革のスピードが速すぎるので、説明が降りてきてない部分があるという方もいらっしゃいますので、農家の方にも丁寧な説明をしっかりお願いします。
(小泉大臣)
そう思われる気持ちもよくわかります。私、大臣になって1か月なので。できる限り現場に足を運びたいと思って、これから現場の皆さんと意見交換をする場も設けます。一方で早すぎるって言われますけど、私からするとこのスピードでいかないと間に合わないという思い。もう今、コメ農家さんの平均年齢が約70歳で、これからの10年で全国で耕作者がいない農地がいっぱい出てくる。今までの農政のスピードでやっていること自体が、私からすればあり得ないこと。だから今までのスピードに慣れている方が早すぎると思われることは理解できます。

ただ、アメリカを見てください。トランプ大統領の善し悪しはいろいろありますよ。しかし大統領になった初日に大統領令を連発して、一つ一つのインパクトが半端じゃないですよね。日本の政治もそうやって次々変わる時に変わらないと、私は次の時代に間に合わないという思いがありますので、そういった危機感。本当にこのスピードでやったら10年後、誰も農地に人がいなくなる。その地域社会を作ってはならないという思いも、私のこのスピードに表れているとお伝えしたい。