【共栄セキュリティーサービス】中堅警備会社の地歩を確保、上場後のM&Aはすでに12件

警備業界で近年、めきめき頭角を現している会社がある。共栄セキュリティーサービスがそれ。

2019年の上場(ジャスダック市場、現在は東証スタンダード上場)当時から売上高は8割増え、今年、中堅警備会社として区切りの100億円を超えた。成長の原動力となっているのは他でもない積極的なM&A戦略だ。

今年すでに警備会社を4社買収

共栄セキュリティーサービスは6月9日付で、常総警備保障(茨城県つくば市)の全株式を取得し、子会社化した。取得金額は5億7100万円。同様の地域中小警備会社を買収は今年に入って4社目。2019年の上場以降では12社目となるが、買収規模はこれまでで今回が最も大きい。

常総警備保障は1981年に設立し、従業員は約80人。茨城県を地盤に工場、ビルなどの施設警備や、工事現場、駐車場、イベント会場などでの交通誘導警備を手がける。直近の2025年3月期業績は売上高2億1800万円、営業損失500万円。営業損失は2年連続だが、純資産は6億円と厚みを持つ。

共栄セキュリティーは茨城県に隣接する埼玉、千葉両県に子会社を複数抱えており、相互連携を進め、収益拡大につなげるとしている。

埼玉県にセキュリティ(所沢市)、バンガード(朝霞市)、東邦警備保障(朝霞市)の3社、千葉県では同名の東邦警備保障(千葉市)、ネオ・アメニティーサービス(千葉市)の2社を持つが、いずれも買収でグループに取り込んだ。

売上高100億円を達成

共栄セキュリティーの2025年3月期業績は売上高8%増の101億円、営業利益57%増の4億8500万円。売上高は初めて100億円台に乗せた。

営業利益は3期ぶりの増益を確保したものの、買収した子会社ののれん償却費や人員強化による募集費用が膨らみ、当初見通しを下回った。

今期については決算期を3月から7月に変更するのに伴い、16カ月変則決算(2026年7月期)となるが、今のところ、業績予想を未定としている。

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※決算期変更に伴う今期(2026年7月期)の業績予想は未定

人的警備に特化、セコムと提携も

同社は1985年に交通誘導警備を目的に、現社長の我妻文男氏が27歳で設立した。交通誘導警備は道路工事などの現場に警備員を配置し、車両や歩行を誘導する。

現在では施設警備、駐車場警備、イベント警備をはじめ、レセプション・コンシェルジュ(受付・案内業務)、ハイウェー・セキュリティー、ボディーガード(身辺警護)、建物・設備管理など、幅広く業務を展開している。もちろん、開催中の大阪・関西万博会場にも警備員を派遣中だ。

業務内容が示す通り、共栄セキュリティーは警備員を伴う人的警備に特化している。セコム、ALSOKといった大手が主軸とする機械警備は手がけていない。

2020年には業界最大手のセコムと資本・業務提携した。セコムの先端的なセキュリティーシステムに関する技術・ノウハウとの連携を進め、警備業務品質の向上や効率化に結び付けるのが狙い。

共栄セキュリティーはセコムの警備業務の一部を受託するなど、かねて協力関係にあった。現在、セコムからの出資比率は3.1%。

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共栄セキュリティーサービスが本社を置くビル(東京・九段)

2022年以降、際立つM&A

その同社が初のM&Aを手がけたのは2015年。道都機動警備(札幌市、現・道都警備)、道都警備(札幌市)の両社を子会社化し、北海道に進出した。

同じ年、別の会社を吸収合併し、駐車場の運営管理業務に乗り出した。

2019年の株式上場をはさんで、M&Aから7年ほど遠ざかっていたが、再開に動いたのが2022年。

日本セキュリティサービス(大阪市、現KSS大阪)、ダイトーセキュリティー(東京都台東区、現KSS管財)を相次いで子会社化した。このうち、ダイトーセキュリティーは施設警備や交通誘導警備を手がけていたが、現在は首都圏を中心にビル・マンションへの代行管理員派遣を主力業務とする。

2023年はM&Aにアクセルをさらに踏み込み、4社を数えた。徳島市の合建警備保障を子会社化して四国エリアに初進出したほか、神奈川県、埼玉県、千葉県で各1社を傘下に収めた。続く2024年も埼玉県、神奈川県で各1社を子会社化した。

警察庁の発表によると、2024年末の警備業者は1万674業者。5年間で8%増え、市場の拡大を示す一方、圧倒的多数を占める中小規模の警備業者は人手不足による経営悪化の懸念が強まっている。さらに事業承継問題も顕在化している。

こうした中、規模拡大による交渉力強化や人員確保のために、M&Aを成長戦略の要と位置付けるのが共栄セキュリティーだ。

全国展開へアクセルを全開か?

足元の2025年はネオ・アメニティーサービス(千葉市)、バンガード(埼玉県朝霞市)、中国警備保障(山口県宇部市)、そして6月にグループ入りしたばかりの常総警備保障を合わせ、半年足らずで4社を子会社化。

中国エリアでの初展開も果たした。

3月末時点で、共栄セキュリティーがグループ会社を含めて拠点を置くのは20都道府県。特に西日本は手薄で、九州はまだ手つかずのエリアとなっている。

今後の方向性として全47都道府県に足場を築くことを目指している。各地で中小警備会社やビルメンテナンスなど周辺領域をターゲットに、M&Aへのアクセル全開の状態がしばらく続きそうだ。

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文:M&A Online

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