【テレビ朝日ホールディングス】アニメ・ゲーム、メタバースなど新領域に意欲、今後のM&A戦略は?

テレビ朝日ホールディングス<9409>は、2023年3月に2025年までの新経営計画を策定。「すべての価値の源泉はコンテンツにある」とする基本理念をもとに、テレビ、インターネット、ショッピングなどコンテンツをあらゆるメディアに展開する戦略を描く。

「360°戦略」と呼ぶこの戦略をもって、M&Aも活用しながら新領域へ踏み込み、2025年度までに連結売上高3300億円、営業利益200億円を目指す。ホールディングスの中核であるテレビ朝日の組織変遷を振り返りながら、今後のM&A戦略を見ていく。

追加出資で子会社化

テレビ朝日の前身は、1957年に創立された日本教育テレビ。教育専門局としてスタートするが、1973年に総合番組局に移行し、1977年に社名を全国朝日放送(略称:テレビ朝日)に変更した。2000年に東証一部に上場し、地上デジタル放送の始まった2003年にテレビ朝日に改称している。

以降、組織再編を活発化させ、2006年にBSデジタル放送のデジタル・キャスト・インターナショナル(現・テレビ朝日メディアプレックス)を、2008年に報道番組の制作を手掛けるフレックス、番組制作などの日本ケーブルテレビジョンを関連会社から子会社化。翌2009年には「ドラえもん」「クレヨンしんちゃん」をはじめとするアニメ番組を手掛けるシンエイ動画の持ち株比率を上げて子会社化した。

2014年には認定持株会社に移行してテレビ朝日ホールディングスが設立。以降も追加出資で子会社化する動きは続いており、番組制作の文化工房(2017年)、映画や舞台も手掛けるメディアミックス・ジャパン(2018年)と関連会社の子会社化など、古くから関わりを持つ関連会社とのつながりを深め、脇を固めてきた。

年テレビ朝日の変遷 1957 日本教育テレビ創立 1973 教育専門局から総合番組局に移行 1977 全国朝日放送に社名変更 2000 東証一部上場 2003 テレビ朝日に社名変更 2006 デジタル・キャスト・インターナショナル(テレビ朝日メディアプレックス)を連結子会社化 2008 フレックス、日本ケーブルテレビジョンを関係会社から連結子会社化 2009 シンエイ動画を連結子会社化 2012 シーエス・ワンテンを関連会社から連結子会社化 2014 認定放送持株会社に移行 2015 AbemaTV出資・設立 2016 東京サウンド・プロダクションを連結子会社化 2017 文化工房を関連会社から連結子会社化 2018 メディアミックス・ジャパンを関連会社から連結子会社化 2020 イッティをM&Aで完全子会社化 2023 BookLiveを持分法適用関連会社化

新分野への出資も

一方、スマートフォンの台頭など視聴環境の変化に合わせ、2017年度からは冒頭で触れた「360°戦略」を展開し、放送分野にとどまらず組織を大きくしている。

その戦略にもとづく出資が次のようなものだ。テレビ朝日ホールディングスでは、2020年にバーチャルイベントプラットフォームを展開するクラスターへ、2023年にリアルメタバースプラットフォームを展開するPsychic VR Labへ出資。テレビ朝日は2020年にEC・通販事業のイッティを買収して完全子会社化。さらに、360°戦略のシンボリックな投資と位置付ける、電子書籍ストア運営のBookLiveへ出資し、持分法適用関連会社化している。


今後のM&A戦略は?

このうち、BookLiveへの出資は2025年までの中期経営計画で定めた戦略投資の第一弾となる案件で、オリジナルコンテンツの共同制作や、次世代クリエイターの育成・獲得につなげ、IP活用を進めていく方針だ。

この戦略投資の規模だが、M&Aを含み約250億円を想定。M&Aの対象になるのは、報道情報・バラエティ、ドラマ・映画、アニメといった「コンテンツ・IP」、広告配信、DX・デジタルコンテンツなどの「インターネット」、ショッピングを始めとした「ビジネス」分野だ。

このほか、M&Aの対象になるとは明記されていないが、注力する新領域として、「アニメ・ゲーム」「メタバース」を挙げており、定年後のシニア世代に向けたコンテンツ制作として、「アクティブシニア」の事業化、テレビ朝日が出資するeduleap、SOZOWなどの「教育系事業」と連携も模索する。

【テレビ朝日ホールディングス】アニメ・ゲーム、メタバースなど新領域に意欲、今後のM&A戦略は?
経営計画2023-2025より
経営計画2023-2025より

これまでの傾向を見る限り、追加出資をして段階を踏んで子会社化することが多い。出資には非常に慎重な様子も見て取れ、M&Aを行うにしても、一気に経営権を獲得し完全子会社化するケースは想定しづらいが、果たして今後はどうだろうか。

文:M&A Online

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