
ビールやウイスキーなどを手がけるアサヒグループホールディングス<2502>のグループ企業であるアサヒグループ食品(東京都墨田区)は2025年5月1日に、合成繊維大手の帝人<3401>から乳酸菌などの製造販売を手がける帝人目黒研究所(大阪市)を買収した。
乳酸菌などの機能性素材事業を強化
同研究所は、細菌学者で免疫学者の目黒庸三郎博士が1925年に、大阪実験治療研究所として設立したのが前身で、医薬品や健康食品原料など向けの乳酸菌や納豆菌の製造、販売、受託事業を行ってきた。
独自の製法で乳酸菌や納豆菌を培養する技術を持ち、高品質で安定した供給を実現しており、2022年に帝人が傘下に収めていた。
アサヒグループ食品では乳酸菌の安定した製造量を確保するとともに、生産に関する独自のノウハウの蓄積などにより、乳酸菌事業の競争力を高め、乳酸菌を含む機能性素材事業をアサヒグループの新たな成長領域として強化するために、帝人目黒研究所の買収に踏み切った。
同社は「健康志向の高まりから乳酸菌に対する注目が高まっており、需要の増加が見込まれる」としており、今後、帝人目黒研究所をアサヒ目黒研究所に改称したうで、日本国内だけでなく、グローバル展開を拡大する。
L-92乳酸菌やCP2305ガゼリ菌などを製造
アサヒグループ食品は、2015年にアサヒグループホールディングスの子会社のアサヒグループジャパンの子会社として設立された企業で、翌2016年にアサヒグループ食品が、1906年に開業した和光堂をはじめ天野実業やアサヒフードアンドヘルスケアを統合した。
現在は菓子のミンティアやビール酵母を用いた健康食品のエビオス錠、ベビーフード、介護用食品などをはじめ、L-92乳酸菌やCP2305ガゼリ菌を含む機能性素材の製造、販売などを手がけている。
同社によるとL-92乳酸菌は
機能の維持に役立つほか、CP2305ガゼリ菌は睡眠の質や腸内環境への効果が期待できるという。
グループ会社のアサヒ飲料(東京都墨田区)がL-92乳酸菌を含む「PLUSカルピス」や、CP2305ガセリ菌を含む「ぐんぐんグルトα 快眠・快腸ケア」などの製品を販売している。
乳酸菌関連では、ヤクルト本社が「ヤクルト1000」などのストレス緩和や睡眠改善を目的とした製品を手がけているほか、雪印メグミルクや森永乳業などの大手もヨーグルトなどの製品を販売している。
積極的にM&Aを実施
アサヒグループホールディングスは中長期経営方針の一つに「ビールを中心とした既存事業の持続的成長と新規領域の拡大」との目標を掲げ、事業ポートフォリオ(事業構成)の強靭化に取り組んでいる。
これまでに2001年にウイスキー製造のニッカウヰスキーを子会社化(1954年に資本参加)したほか、2012年に乳酸菌飲料「カルピス」を製造、販売するカルピスを買収した。
また2020年には1兆1416億円の巨費を投じて、オーストラリアのビール大手・カールトン・アンド・ユナイテッド・ブルワリーズ(CUB)を買収するなど、積極的にM&Aを実施している。
2024年12月期は売上高2兆9394億2200万円(前年度比6.2%増)、営業利益2690億5200万円(同9.8%増)と増収営業増益を達成。
2025年12月期についても、低アルコール飲料、ノンアルコールビール、成人向け清涼飲料などへの投資を強化し事業ポートフォリオの強靭化を進める方針で、同期に売上高2兆9700億円(同1.0%増)、営業利益2620億円(同2.6%減)を見込む。
アサヒグループの新たな成長領域として強化する乳酸菌などの機能性素材事業は、事業ポートフォリオの強靭化に少なからず影響を与えそうだ。
文:M&A Online記者 松本亮一
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