
中堅物流企業のヒガシホールディングス(HD)<9029>は、これまでに蓄積したノウハウを活用して、新たなM&Aによる成長を目指す。
2020年以降の4年間に4件のM&Aを実施し、新たな事業を取り込むことで業容を拡大しており、今後3年間(2026年3月期~2028年3月期)は、M&Aなどを通じて東京証券取引所のプライム市場昇格に向けたファンダメンタルズ(基礎的条件)を整える計画だ。
経営目標数値を1年前倒しで達成
同社は1959年に中部地区の事業拡大のために、日貨運送(中部東運送に社名変更)を買収したのが最初のM&Aで、このあとは、しばらく間が空き2016年に金融機関向けATM機器を輸送、設置するユートランスシステム(大阪市)を子会社化し、翌2017年に倉庫事業を手がけるイシカワコーポレーション(東京都江戸川区)を傘下に収めた。
2020年以降は、2020年にオフィス移転事業などのワールドコーポレーション(大阪府枚方市)を子会社化し、オフィスサービス事業を強化したほか、2022年には鋼材や機械など重量物輸送の山神運輸工業(横浜市)と、システムに関する技術支援を手がける旅人(東京都千代田区)を子会社化した。
直近では2024年に同社が展開する3PL(サードパーティーロジスティクス=荷主企業の物流業務の受託)事業などでの安定的な人材確保につなげるのを目的に、人材派遣業のネオコンピタンス(東京都千代田区)を子会社化している。
こうしたM&Aの経験を活かして、成長投資を継続し、事業規模の拡大を目指すことにした。
対象は2024年問題(トラックドライバーの時間外労働時間の上限規制によって生じるドライバー不足などの問題)を抱える物流事業をはじめ、同社が手がけるオフィスサービス事業(オフィスの移転業務など)や、ITサービス事業(コンピューターや周辺機器などの構築や保守事業など)、ビルデリバリー事業(館内物流やメール室業務など)、介護サービス事業(介護支援事業者向け福祉用具レンタル、販売)などの幅広い分野が見込まれる。
同社は大手EC(電子商取引)向け倉庫事業や新規M&Aなどによる事業拡大によって「中期経営計画2026(2024年3月期~2026年3月期)」の売上高や利益などの経営目標数値の大半を1年前倒しで達成したため、プライム市場への昇格を目指す新たな経営計画として2026年3月期を初年度とする「中期経営計画2028(2026年3月期~2028年3月期)」を策定した。
同中期経営計画期間中のM&Aへの投資額については明らかにしていないが、M&Aなどによって最終年度の2028年3月期に売上高550億円(2025年3月期比14.2%増)、経常利益35億円(同19.2%増)を目指す計画だ。
大手EC企業向け3PL事業を展開
ヒガシHDは1944年に、大阪貨物自動車運輸をはじめとする大阪市東区(現在の大阪市中央区)内の運送会社13社が統合し、大阪東運送を設立したのが始まり。
1996年にビル内デリバリー事業を開始したのをはじめ、2003年に介護支援事業者(福祉用具貸与事業者)に福祉用具レンタル、販売事業を始めるなど物流事業以外の事業を拡大。2011年に東京証券取引所市場第二部(現 スタンダード市場)に上場した。
現在は、物流コストの削減などにつながる、倉庫内で商品を保管する場所の設計や運搬手段の選定などを行う物流設計力を強みに、大手EC企業向けの拠点間輸送や3PL事業などの物流事業を展開している。

売上高、経常利益が過去最高を更新
物流業界では、燃料価格や人件費の高騰に加え、米国のトランプ政権の通商政策などの影響で、不透明な事業環境が続いている。
こうした中、2025年3月期の売上高は481億2600万円(前年度比18.4%増)、経常利益29億3500万円(同27.1%増)の2ケタの増収経常増益を達成した。
主力の物流事業が新貨幣対応の精密機器配送業務や、大手EC企業向けの配送業務が好調に推移したことから10%を超える増収となったほか、倉庫事業も大手EC企業向けが好調で30%強の増収となったことから、売上高、経常利益は過去最高を更新した。
新中期経営計画の初年度となる2026年3月期は、売上高は2021年3月期以来5期連続の増加、経常利益は2017年3月期以来9期連続の増加を見込む。
今後、俎上に上るプライム市場昇格に向けたM&Aとは、どのようなものになるだろうか。
文:M&A Online記者 松本亮一
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