足場施工3社連合の「Jステップホールディングス」誕生、経営陣に聞く業界の今

建設現場の足場を組む足場業界の人材不足は深刻だ。インフレによる資材高騰も課題となっている。

経営環境の変化に対応すべく、2024年5月に誕生したのが「Jステップホールディングス」。投資会社のJ-STARが出資、設立に関わった持株会社で、傘下にセーフティーステップ(札幌市)、セーフティーステップ(福島県岩瀬郡)、服部架設工業(神奈川県愛甲郡)ほか、札幌ビケ足場(札幌市)、ファースト(相模原市)などを傘下に持ち、グループ各社の連携で業績拡大を目指す。

Jステップホールディングス代表の髙木茂光氏(上記セーフティーステップ2社および札幌ビケ足場代表)、取締役の服部直樹氏(服部架設工業及びファースト代表)、木田尋源氏(J-STAR プリンシパル)に、業界の現状と持株会社の設立意図を聞いた。※文中敬称略

足場施工業界を取り巻く競争環境と職人確保の問題

―まずは、Jステップホールディングス誕生までのいきさつを教えてください。

髙木
:当初は後継者問題を抱え会社の売却を検討していました。外部環境については、需要は旺盛なのに足場職人は高齢化で年々減少、新規の成り手も少ないことから、職人の確保が日増しに難しくなっており、売上成長は鈍化しています。

加えて、レンタル事業者の増加により足場職人が独立しやすくなった結果、小規模の足場施工会社が急増し、業界内で競争が激化しています。そうした中で、J-STARの木田さんに出会いました。

当初は全株売却と代表退任を考えていましたが、Jステップホールディングスを設立してその代表として経営に携わっていただきたいという提案をいただき、今に至っています。

服部
:経営者として成長のスピードは非常に気にしています。これまでは業績を伸ばすことができていましたが、外部環境を見ると先行きに不安を覚えていました。その影響からか足場業界は再編の時代に入っているという認識です。

持株会社を設立して、グループで組織的に経営をしていくほうが効率的に業績を伸ばすことができますし、今の時勢に合っています。

木田さんからお話をいただいて、これは面白いなと。

持株会社を設立、規模拡大で課題に対処

―Jステップホールディングスの設立意図はどのようなものでしょうか。想定する効果も教えてください。

木田
:髙木社長からお話を伺ったあとで、業界のリサーチを進める中で、全国の足場施工会社の方々から同様の意見を聞き、業界が共通の課題を抱えていることがわかりました。そうした中で、足場業界の課題解決と成長のために持株会社を設立したら面白いのではないかと考えました。

Jステップホールディングス傘下の企業は、各地域でトップシェアとなるような企業です。各社がグループのノウハウを吸収しつつも地域別に経営していく連邦制のような組織をつくることで、足場資材の調達コストの削減、人材戦略、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進などで大きな効果が出ることを期待しています。また、さらに追加で戦略的M&Aによる規模拡大も検討していきます。

髙木:顧客からは営業エリア外の仕事を相談いただくこともあります。営業案件を融通したり、冬場は閑散期になる北海道・東北から応援人材を派遣したりするなど、人材の最適化という面でも効果を発揮すると見ています。

人材育成を積極的に行う

―足場職人の確保が難しいとのことですが、現状どうしていますか? 持株会社で課題緩和につながるのでしょうか。

髙木
:足場職人の確保が難しいと感じるようになったのは10数年前からです。この業界では、外注へ業務を委託することが多いのですが、採用や育成を外部に頼るばかりでは、立ち行きません。そのため、自社で職人候補を採用し、育成を進めています。



ただ一方で、職人の成り手も少ないのが現状です。会社の規模が大きくなれば認知度も上がります。足元では5グループ合わせて施工売上が約90億円。今後100億円を目指す計画で、規模拡大につれて、人材採用にもプラスに働くと見ています。

木田
:この業界では高校生が就職先として足場職人を選ぶことが多々あります。そうした場合、ご両親や学校の就職課の理解が重要になってきます。そもそも足場職人がどのような仕事なのか知られていませんし、就職先としての会社の規模を気にする方も多くいます。組織が大きくなり、全国に広く展開しているならば、そうした不安も緩和されるはずですし、プラスに働くと見ています。

服部
:当社でも社員職人の育成を行うようになっています。外注の足場職人は歩合制なので、現場での作業がすべて。若手がいても、育てるという意識はあまりありません。教える際も言葉がきつくなってしまう。
建設業界全般ですが、きつい仕事だというイメージがあると思います。

髙木社長が経営するセーフティーステップ札幌には若手職人育成プログラムがありますが、そうした取り組みをJステップホールディングスのもとで進めることで、人材確保にもつながっていくと思います。

M&Aを活用へ、そのターゲットは?

―今後の目標とM&Aの活用について教えてください。

木田
:業界の抱える課題を解決し共に成長していく趣旨なので、あまり明確な条件は設けず、問い合わせいただいた企業は幅広く検討しています。但し、同じ資金を投下するなら、グループの主要営業エリアのシェアアップを狙った方が効果は高くなると見ています。

―理想の条件はありますか?


髙木
:社内体制がしっかりしているところです。現場作業の安全に対する取り組みを蔑ろにできません。そうした安全に対する取り組みを行い、それに対する意識をしっかりと持った会社となると、ある程度の規模が大きなところになります。ざっくりとした目安として、売上10億円規模の会社でしょうか。

服部
:売上5億円未満の足場施工会社は多数ありますが、職人の教育体制、会社の経営体制がしっかりしていないと、それ以上の成長は難しいです。勢いのある小さい会社であってもジャンプアップして成長を目指す気持ちがあるならグループに加わることを検討してくれればと考えています。

『ダイヤモンドMOOK M&A年鑑2025』を100名様にプレゼント
発売にあたり、2025年2月28日までにご応募いただいた方を対象に抽選で100名様に『ダイヤモンドMOOK M&A年鑑2025』をプレゼント。

下記のバナーをクリックすると応募できます。SNSキャンペーンからも応募可能ですので、ぜひ皆様、ご参加ください!

足場施工3社連合の「Jステップホールディングス」誕生、経営陣に聞く業界の今
編集部おすすめ