
高級眼鏡ブランドの「金子眼鏡」と「フォーナインズ」を展開するJapan Eyewear Holdings<5889>は、眼鏡づくりが盛んな地元・福井県鯖江市の眼鏡フレームメーカーを対象にM&Aを実施する。
インオーガニックな成長(社内の経営資源に頼らないM&Aなどによる成長)によって製造力を一気に高める戦略で、これによって職人の伝統技術の承継や雇用の創出、鯖江のブランド力の向上などを目指す。
眼鏡業界は高齢化の進展やインバウンド(訪日環境客)の増加などによって市場の拡大が予想されており、同社ではこうした需要を取り込むことで、2030年1月期に売上高280億円(2025年1月期比69%増)、営業利益100億円(同89%増)を目標に掲げている。
ただ、これら数字にはインオーガニックな成長は含めておらず「M&A機会を積極的に探索することで、さらなる売り上げ、利益の成長を目指す」としている。
国内のアイウェア企業も対象に
Japan Eyewearは、デザイン、製造、加工、販売までをすべて自社で行うことで、新たなデザインやトレンドを生み出すことができるビジネスモデルを強みに業績を伸ばしており、2025年1月期は売上高166億6600万円(前年度比23.2%増)、営業利益53億2800万円(同44.0%増)と大幅な増収営業増益となった。
M&Aに関しては、2016年にメタルフレーム製造の栄光眼鏡(福井県鯖江市)を子会社化したのに続き、2024年に眼鏡フレーム製造のタイホウ(同)を子会社化し、製造力を高めてきた実績がある。
栄光眼鏡は、高機能、高品質なメガネフレームの開発と製造を行っており、これまでにチタンや超弾性合金など新素材の導入をはじめ、壊れにくいバネ丁番構造の開発、レンズ部ハネ上げ式フレームの開発などに取り組んできた。
タイホウもチタンや超弾性合金などのメタルフレームやプラスチックフレームを製造している。今後、こうした力のある眼鏡フレームメーカーの子会社化に取り組む計画だ。
また、これら眼鏡フレームメーカーのほかにも、新しいブランドの獲得を狙いに2021年に「999.9」ブランドの眼鏡を企画、販売するフォーナインズ(東京都世田谷区)を子会社化した。
フォーナインズの2025年1月期の売上高は約59億円(前年度比19.7%増)で、金子眼鏡(2025年1月期の売上高は前年度比25.2%増の108億円)と並ぶ収益の大きな柱となっている。
今後のM&Aについては、眼鏡フレームメーカーが中心となるものの、独自のブランドを持つ国内のアイウェア(眼鏡やサングラスなどの商品)企業なども対象となりそうだ。
一式単価が上昇
眼鏡業界では「眼鏡市場」を展開するメガネトップ(静岡市、2024年3月期の売上高は883億6400万円)をはじめ、「JINS」を展開するジンズホールディングス<3046>(2024年8月期の売上高は829億9900万円)や、「パリミキ」を展開するパリミキホールディングス<7455>(2024年3月期の売上高は499億1200万円)などの大手がいずれも売り上げを伸ばしている。
M&Aについても適時開示情報によると、ジンズホールディングスが2022年に、眼鏡製造のヤマトテクニカル(福井県越前市)を子会社化したほか、パリミキホールディングスも2019年に眼鏡フレーム修理のオプトメイク福井(福井県鯖江市)を子会社化している。
Japan Eyewearは1958年に福井県鯖江市で眼鏡卸問屋の金子眼鏡商会として創業。
品質の高い眼鏡を提供することでブランド力を高めており、フレームとレンズの合計金額である一式単価は、2025年1月期に金子眼鏡が7万7557円(2019年1月期比25%増)、フォーナインズが8万1973円(同13.6%増)となり、いずれも増加傾向にある。
メガネトップはオンラインショップで、おすすめ商品として1万~2万円台の商品を挙げており、ジンズホールディングスはホームページで人気ランキングとして1万円前後の商品を、パリミキホールディングスはホームページでおすすめ商品として2万~3万円台の商品を紹介している。
高級路線で差別化を進めるJapan Eyewearは、M&Aでどこまで業績を引き上げることができるだろうか。

文:M&A Online記者 松本亮一
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