「近畿のM&A」2024年は過去10年で最多の260件に 最高額は積水ハウスによる米国の戸建住宅会社の子会社化

M&A Onlineが適時開示情報を基に構築したM&Aデータベースで集計したところ、2024年の近畿6府県(滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県)のM&A件数(売り手、買い手、M&Aの対象となる企業や事業のそれぞれの所在地が、いずれか一つでも近畿圏である案件を集計)は260件で、2015年以降の10年間では2023年の221件を39件上回り、過去最多となった。件数が前年度を上回るのは4年連続。

2024年は日本全国のM&A件数が1221件となり、リーマンショック前年の2007年(1169件) を超え、17年ぶりに過去最多を更新しており、関西でもこの流れに沿って件数が増加した。

コロナ禍初年となる2020年からの5年間は件数が増加傾向にあり、コロナ禍前の5年間の年平均件数(約159件)を平均で42件ほど、率にすると26%ほど上回っている。

コロナ禍によって中核事業に集中する動きの中、非中核事業やそれら事業に関わる子会社を売却する動きが、件数が増加した背景にある。

近畿圏の企業が東京や海外の企業を買収

M&Aの内容を買い手と、M&Aの対象となった企業や事業に分けて見てみると、近畿圏に本社を置く企業が買い手となった件数は153件で、2015年以降の10年間では2023年の131件を上回り最多となった。

買収先企業の所在地でもっと多かったのが東京都の42社で全体の30%近くになったほか、海外も29社と多く20%近くに達した。

また買収先が近畿圏に本社を置く企業は40社(大阪府24社、兵庫県7社、京都府6社、滋賀県1社、奈良県1社、和歌山県1社)で、東京を除くその他の道、県は42社だった。

買収先企業や事業の業種は、ファンクラブプラットフォーム事業、外国人雇用管理サポートサービス事業、シェアオフィス向け運用サービス事業などさまざまな業種を含む「その他サービス」がトップで24件となり、2023年の13件を11件上回った。

一方、近畿圏に本社を置く企業や、それら企業の事業を対象にしたM&A件数(買収された近畿圏の企業や事業)は、2024年は125件となり2015年以降の10年間ではコロナ禍前の2019年の101件を上回り最多となった。

府県別にみると、最も件数が多かったのは大阪府で、2023年から16件増え70件に達した。

次いで多かったのが兵庫県の23件(2023年は18件)で、京都府の19件(同16件)と続いた。滋賀県は5件(同4件)、奈良県は6件(同3件)、和歌山県は2件(同0件)といずれも一桁に留まった。

業種別にみると、広告運用コンサルティングや、ゲームのデバッグ(ゲームソフトの不具合検出)、警備などの「その他サービス」が最も多く26件。2023年は14件だったため、一気に2倍近くになった。

取引総額は過去10年で2番目

一方、取引総額は2兆5607億円で、2015年以降の10年間では2018年(7兆4653億円)に次ぐ2番目の金額となった。

2018年は武田薬品工業がアイルランドの製薬大手シャイアーを総額460億ポンド(約6兆8000億円)で買収した大型の案件があり金額が膨らんだため、これには及ばなかったが、前年の2023年と比べると4倍以上に拡大した。

2024年の近畿圏でのM&Aで最も取引総額が多かったのは、積水ハウスが米国子会社を通じて、戸建住宅事業を展開する現地M.D.C. Holdings, Inc.(コロラド州)を子会社化した案件で、株式の取得金額は約49億9200万ドル(約7718億円)だった。

2025年については、東京証券取引所が上場企業に求めている資本コストと資本収益性を意識した経営に対応する中で、全国的にM&Aが増えることが予想されており、関西でも引き続き、M&A件数は高水準を維持しそうだ。

「近畿のM&A」2024年は過去10年で最多の260件に 最高額は積水ハウスによる米国の戸建住宅会社の子会社化
近畿のM&Aの推移

文:M&A Online記者 松本亮一

「近畿のM&A」2024年は過去10年で最多の260件に 最高額は積水ハウスによる米国の戸建住宅会社の子会社化
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