
洋菓子や和菓子を販売する寿スピリッツ<2222>が、2022年11月1日に2023年3月期通期の上方修正を発表しました。売上高は予想比2.2%増の429億2,000万円、経常利益は同22.8%増の63億8,400万円に修正。
コロナ禍の行動制限が大幅に縮小。寿スピリッツが得意とする駅構内や百貨店に人が戻り、子会社シュクレイ(東京都港区)の洋菓子が販売好調で業績を押し上げました。
この記事では以下の情報が得られます。
・寿スピリッツの業績推移
・M&Aによる拡大戦
・菓子販売業で異例の利益率を誇る理由
4%台の営業利益率を15%近くまで引き上げ

寿スピリッツは、「東京ミルクチーズ工場」「ザ・メープルマニア」「築地ちとせ」などのブランドで、土産物を中心とした菓子店を展開する会社。商品開発力に裏打ちされたブランド構築に定評があります。
JR東日本クロスステーション デベロップメントカンパニー(東京都渋谷区)は、運営する東京駅のエキナカ商業施設「エキュート」「グランスタ」で販売する東京駅限定の定番スイーツを対象とした「東京駅限定 定番手土産スイーツ 売上ランキングTOP10」を2022年6月に発表しました。
寿スピリッツからは、1位「サンドクッキー ヘーゼルナッツと木苺」、3位「チーズケーキサンド」、6位「メープルショコラケーキ」、8位「駅舎限定PKGクッキー詰め合わせ20枚」の4商品が選出されています。
会社の歴史は古く、1952年4月鳥取県米子市に設立した寿製菓が前身。飴などの製造を行っていましたが、1959年4月に観光土産菓子へと軸足を移します。1968年11月に「因幡の白うさぎ」を販売。ヒットしたことで、転機を迎えました。
1994年11月ジャスダック上場後はM&Aを積極化します。
2005年2月にも経営破綻した九十九島エスケイファーム他3社から菓子製造販売業を譲受。九十九島グループ(長崎県佐世保市)をスタートしました。
2016年1月には明治ホールディングス<2269>の子会社フランセ(神奈川県横浜市)の株式を1円で取得しています。
M&Aにおいては、経営破綻や立て直しが必要な会社や事業を安値で買い取っているのが特徴です。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で2021年3月期に赤字に転落しましたが、業績は堅調に推移していました。売上高の成長とともに本業で稼ぐ力を示す営業利益率が高まっています。2008年3月期の営業利益率は4.5%でしたが、インバウンドが絶好調だった2019年3月期に14.7%となり、10ポイント以上高まりました。
■寿スピリッツ業績推移

2023年3月期の営業利益率は、2019年3月期とほぼ同水準の14.3%まで回復する見込みです。競合のモロゾフ<2217>の2019年1月期の営業利益率が7.4%、2023年1月期は予想通りの着地で5.6%。
寿スピリッツの直近の粗利率は54.7%、モロゾフは48.7%です。
商品力を上げて消費者に求められるブランドを構築
利益率に寄与している大きな要因がブランド力です。
寿スピリッツは、子会社シュクレイが売上高の4割を稼いでいます。シュクレイは東京や大阪などの都市部を中心に「東京ミルクチーズ工場」「ザ・メープルマニア」「ココリス」などのブランドを展開しています。シュクレイの売上総利益率(粗利率)は63.4%。
北海道を中心に「ルタオ」を展開するケイシイシイ(北海道千歳市)の55.5%などと比較して高いのが特徴です。

シュクレイは18ものブランドを展開しています。人気ブランドへと集約した方が利益率は高まりそうですが、寿スピリッツは消費者の嗜好に合わせたヒット商品を生み出し続けるノウハウを確立しました。それは人気ランキングトップ10のうち、4つがシュクレイの商品であることからも読み取れます。
シュクレイはプロジェクトマネージャーや商品開発責任者、製品製造責任者、店舗運営責任者を若手社員に任せ、大きな裁量を持たせることでスピーディーな商品展開、販促、店舗運営を可能にしています。企画開発や製造、マーケティングにおいてはサポートする専門部署を設け、プロジェクトが失敗しないようリスクコントロールもしています。
経営方針に掲げているのが「超現場主義」。
管理するブランド数を多くすると、ブランド同士の違いが不明確で際立った魅力を失い、商品管理や店舗管理に手が回らずに集客力が薄れ、赤字店舗が多くなるというパターンはよく見られます。寿スピリッツは各ブランドの責任者が競うように商品開発に執念を燃やし、消費者の人気を得ています。その結果として高値でも販売できる商品が生まれ、利益率を高めています。
コロナ前にはインバウンド需要も積極的に獲得していました。外国人観光客の増加に伴う更なる成長にも期待ができます。
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