LINEヤフーがBEENOS買収で越境EC強化、そのシナジーは?

「Yahoo!ショッピング」などのECプラットフォームを展開するLINEヤフーがEC事業で新たな一手を打ち出した。越境ECビジネスに強みを持つBEENOSをTOB(株式公開買い付け)で完全子会社化、急速な成長を遂げる同市場で一気に存在感を高める算段だ。

買収のシナジーはどこにあるのか。

BEENOSの事業モデル

BEENOSは、越境ECを主軸としたビジネスモデルを持つ。主力サービス「Buyee」は、海外ユーザーが日本の主要ECサイトで買い物ができる代理購入サービスを提供している。Yahoo!ショッピング、楽天市場、メルカリなど国内大手ECサイトに対応しており、海外ユーザーから得る購入サポート手数料が収益源となっている。

「転送コム」というサービスも展開。これは、海外発送に対応していない日本のECサイトでも海外ユーザーが商品を購入できるようにするサービスだ。転送コムが提供する国内倉庫の住所を配送先として指定し、そこを経由して海外ユーザーへ商品を届ける仕組み。この転送サービスによる手数料も、BEENOSの収益源となっている。このように、BEENOSは越境EC市場において、複数のサービスを展開している。

手数料の柔軟な設計とデータを生かしたマーケティング

BEENOSのTOBは2月に開始される予定だが、完全子会社化をすることで、LINEヤフーは以下の2点をシナジーとして見込む。第一に、海外向け商品の拡充だ。LINEヤフーは国内の出品者に対して、海外需要の高いフィギュアやゲーム、コミックなどのコンテンツ関連商品の出品を促進する方針だ。これにより、LINEヤフーのECプラットフォームとBuyeeの取引量増加が期待できる。

さらに、完全子会社化により、両社の収益を一体として活用できるため、出品者への販売手数料優遇策をより柔軟に実施することが可能となる。

通常の子会社化では少数株主との利益相反が懸念されるが、完全子会社化により、懸念なく優遇政策を実施できるとしている。

第二の効果は、両社のデータとノウハウを活用した効率的なマーケティング展開だ。LINEヤフーが持つ国内事業者とのネットワークと、BEENOSが持つ海外ユーザーの情報を組み合わせることで、新規顧客の獲得コストを削減できる。そして、その削減分を出品者への優遇策に振り向けることが可能となる。国内事業者に対しては越境EC向けに商品を提案できるほか、海外ユーザーに対しては販促をかけることもできる。

越境EC市場は拡大する見込み

LINEヤフーがBEENOSを買収するのは、国内ECの事業成長が限定的になるなかで、越境ECが急成長を続けているからだ。

BEENOSによれば、2022年度の日本発の越境EC市場は、対中国で2兆4301億円、対米国で1兆4798億円。世界全体では2021年の7850億ドルから2030年には7兆9380億ドルへと、約10倍の規模に成長すると予測している。

この成長市場でBEENOSは着実に実績を積み重ねてきた。同社の主力サービスであるBuyeeと転送コムの海外ユーザー数は、2017年に100万人を突破して以降、2022年には300万人、そして昨年には550万人を超えるなど、順調な成長を遂げてきた。

LINEヤフーは「LINE」アプリで、台湾やタイでも高い普及率を誇っており、BEENOSの子会社化で、これら国・地域での越境ECサービスの強化や海外ECの買収を加速するか否かも注目されるところだ。

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