
2025年2月のM&A件数(適時開示ベース)は前年同月比36件増の134件となり、低調な出だしだった先月とは一転、増加に転じた。取引総額は1兆1778億円と前年同月比約1割伸びた。
上場企業の適時開示情報のうち、経営権の移転を伴うM&A(グループ内再編は除く)について、M&A Online編集部が集計した。

三菱ケミカルグループが田辺三菱製薬を譲渡
金額トップは、三菱ケミカルグループがファーマ事業(田辺三菱製薬)を切り離す案件。米投資ファンドのベインキャピタルに約5100億円で譲渡する。譲渡は2025年3月期第2四半期の実行予定。
三菱ケミカルグループは昨年11月に行った経営方針説明会で、モビリティー、半導体、食関連など5領域での高機能素材開発を重点的に進め、経営資源を化学事業に集中させる方針を打ち出していた。そのなかで、ファーマ事業はパイプライン強化に向けて多額の投資が必要とし、ベストパートナーの探索を課題としていた。
経営方針を踏まえ、ファーマ事業を新オーナーのもとで戦略を進めることが最適と判断し、ヘルスケア分野で専門のファンドを持つベインキャピタルに譲渡することを決めた。
SGホールディングス、台湾物流大手を子会社化
2位は佐川急便を子会社に持つSGホールディングスが、傘下を通じて台湾の物流大手モリソン・エクスプレス・ワールドワイド(台北市)を子会社化する案件。航空貨物事業の拡大とアジアを中心とするグローバル物流ネットワーク強化を図る狙い。買収金額は約1368億円。
モリソン・エクスプレス・ワールドワイドは、航空貨物を中心とする輸送・運送・通関サービス事業などの手続きを顧客に代わって行うフォワーダー。1972年に設立され、世界94カ国の拠点と100カ国以上で事業を展開、半導体関連などハイテク産業に関する物流の専門的な知見を持つ。
SGホールディングスは、2014年に買収したスリランカの物流企業エクスポランカとのシナジーにも期待する。エクスポランカは海上フレイト・フォワーディングが強み。
日本郵政、物流のトナミHDをTOBで子会社化
3位も物流関連の案件。日本郵政はトナミHDを子会社化し、グループ会社の幹線輸送ネットワーク、ロジスティクス事業、グローバルなフォワーディング事業の強化につなげる。
トナミHDは減少傾向にある国内貨物輸送量、燃料価格の高止まりや人件費の増加、拍車のかかった人手不足など経営環境が厳しさを増していることで、2023年10月下旬から、資本提携や非公開化などの選択肢の検討を始め、2024年5月には外部パートナーの資金力を活用することが必須と判断していた。
TOB(株式公開買い付け)は、日本郵政の子会社日本郵便が99.97%を保有し、トナミHDの創業家や経営陣の出資する特別目的会社(SPC)が実施、トナミHDを非公開化し完全子会社にする。経営陣は続投する。
TOBが頻発、前年大きく上回る
2月はTOBも頻発。EDINET開示ベースで23件に上った。前年同月は6件。子会社化、親子上場の解消、純投資など目的はさまざまだが、2024年同様、海外を含む投資ファンドがTOB増をけん引している。2024年は2月までで13件、累計で100件。2025年は2月までで27件となっており、昨年を大きく上回るペースでTOBが実行されている。
◎2月取引金額上位10位
1三菱ケミカルグループ子会社の田辺三菱製薬を米投資ファンドのベインキャピタルに譲渡5100億円2SGホールディングス台湾の物流大手モリソン・エクスプレス・ワールドワイドを子会社化1368億円3日本郵政物流のトナミホールディングスをTOBで子会社化し非公開化へ925億円4芝浦電子同社に対して台湾電子部品大手YAGEOがTOB予定を発表655億円5プロトコーポレーション創業家によるMBOで株式を非公開化525億円6カオナビ米投資ファンドのカーライル・グループのTOBを受け入れて株式を非公開化497億円7日本ガイシ熱交換器・膜装置製造のドイツBorsigを傘下に置く持ち株会社を子会社化423億円8MIXIオーストラリアのベッティング大手PointsBetを子会社化352億円9テクノスジャパンアント・キャピタル・パートナーズ系の投資会社によるTOBで上場廃止へ223億円10東都水産麻生グループのTOBを受け入れ183億円文:M&A Online記者 橋本祐一
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