ライバル企業は20社超え!譲渡先に選ばれた金額以外の理由とは?

コンベヤ部品の設計・製造・販売を主軸に事業を拡大し、2023年8月に東京証券取引所グロース市場へ上場したJRC。同社は2024年9月に原子力・火力・バイオマス発電所の工事・補修などを行う高橋汽罐工業の全株式を取得し子会社化した。

これまでにも積極的にM&Aを活用し、事業を拡大してきた同社であるが、高橋汽罐工業のM&Aにおいては、20社を超えるライバル企業があった中で、見事譲渡先に選ばれた。意中の企業から選ばれる秘訣やM&Aを活用した今後の戦略について、JRC代表取締役社長の浜口稔氏に伺った。

一気通貫で価値を提供できるよう事業を拡大

―JRCの事業内容や特徴について。

屋外用のベルトコンベヤの部品を作っている会社です。もう一つの事業として、ロボットSIの事業も行っています。近年、部品の納入だけではなく、納品先の工場での部品の取り付け工事であったり、その後のメンテナンスであったり、ワンストップで価値を提供できるように工事分野にも事業を広げているところです。

高橋汽罐工業は事業拡大や人手不足に課題があったと聞きました。JRCが今回のM&Aを検討したきっかけは?

当社は、成長戦略の一つとしてM&Aを基軸に置いています。そのような中で物品の納入だけではなく、工事メンテナンスなどアフターフォローの分野も事業として拡大していこうと考えていました。その中で、プラント工事の事業を展開している高橋汽罐工業の提案をM&A仲介会社のストライクから受け、お互いのユーザーが近くシナジーを感じたため、M&Aの話を進めたいと思いました。高橋汽罐工業は発電所の工事・メンテナンスのプロフェッショナルですので、協業することでお客様にさらなる価値を提供できると思いました。

どのようなシナジーを見込んでM&Aを検討しましたか?

我々が目指すのは、設計からメンテナンスまで一気通貫でお客様にサービスを提供することです。当初、高橋汽罐工業さんはボイラーを中心に事業展開されているイメージだったのですが、最近はコンベヤのメンテナンスも多く手掛けているとのお話を伺って、これは抜群にマッチすると感じました。

このM&Aにより、工事メンテナンス分野での受注増加や、トータルソリューション提供力の強化が期待できます。コンベヤ今後も一緒に力を合わせて、さらに大きなシナジーを生み出していきたいと思います。

具体的な協業についてはどのようなことを考えていますか?

当社のお客様のもとに高橋汽罐工業の技術者に常駐していただいて、コンベヤの工事に入っていただくことは考えています。もう既に小さな工事などは協業して進めています。

ともによくなるM&A

どのようなM&Aのポリシーを持っていますか?

我々のM&Aのポリシーとして、ともに良くなることを大切にしています。M&Aを進めて、買い手だけが良くなるというケースも中にはありますが、それでは長続きしないと思います。お互いの会社がそれぞれ成長できるような戦略で協業を進めたいと思っています。

これまで様々なM&Aを経験してきた中で、今回もうまく進むという感覚はありましたか?

うまくいくイメージしかありませんでした。これまでのM&Aでは、一部分だけシナジーがあり、あとは異なる事業を展開している会社もありました。そのような会社も、今までM&Aでうまくいっていますので、これだけ事業内容や目指す方向がマッチしていれば絶対うまくいくという思いはありました。

譲渡金額に勝るのものは協業への強い思い

高橋汽罐工業の譲渡先候補には、20社を超えるライバル企業がいたと聞きました。意中の企業から選ばれる秘訣は?

とにかく一生懸命頑張りました。上場企業として株主にしっかり説明できるような金額の枠の中で、我々としては上限の金額を提示しました。

ただ、ライバル企業が多いため、金額面での競争が激しくなることが予想されました。私の一存で金額を上げられる話ではないものの、私が決められる最高の範囲で金額は出させていただきました。あとは、誠心誠意、ぜひ一緒に力を合わせて進んでいきたいという強い気持ちをお伝えした上で、長期的なシナジーや戦略についても伝えました。

ライバル企業は20社超え!譲渡先に選ばれた金額以外の理由とは?
協業への熱い思いを語る浜口社長

今後のベルトコンベヤ業界のM&Aの動向は?

ベルトコンベヤ業界はニッチなマーケットなので今後もM&Aはあまり活発には起こらないと思います。ただ我々はベルトコンベヤだけではなく、今回の子会社化でコンベヤ周辺のボイラーやタービンなどにも事業を広げていきたいです。そのようなことを踏まえて、事業承継で課題をお持ちの企業がたくさんいらっしゃると思うので、うまく繋がっていきたいです。

M&A戦略について教えてください。

M&Aを活用していきたいことはオープンにしています。戦略的に意志を示すことで、様々なM&A仲介事業者から案件を紹介してもらい、非常に積極的に動いています。

今後M&Aをしていきたい分野は?

コンベヤ周辺領域の工事分野、自動化などの事業を積極的に進めている会社は検討しています。あとは海外進出にも力を入れていきたいので、我々の海外進出の基盤となるような会社もM&Aを検討していきたいと考えています。

今後の目標について教えてください。

2023年8月にグロース市場に上場しましたが、直近の目標としては、規模を拡大させ、プライム市場に上場することが今一番近くにある目標です。

M&Aを検討される経営者の方へのメッセージはありますか?

事業拡大においては、M&Aは非常に有効かつスピーディーな手段だと思いますので、事業戦略として活用するのは一つの考え方としてあるかと思います。我々はそのようなことをメインに考えており、様々なシナジーも生まれていますので、我々のやり方は他社でも有効な手段になり得るのではないかと思います。

写真・文:M&A Online記者 髙橋さつき

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