
トランプ外交の「暴走」が止まらない。同盟国に重い「相互関税」を課したり、ウクライナ侵攻を続ける「宿敵」ロシアにとって有利な条件での和平交渉を進めたりと「やりたい放題」の外交が続く。
戦後一貫して米国と協調路線を歩んできた日本政府も対応に苦慮している。日本は、どのような外交姿勢で臨めばいいのか?日本記者クラブ(東京都千代田区)で会見した元国連代表部大使・国際協力機構 (JICA) 理事長の北岡伸一東京大学名誉教授に、その「処方箋」を聞いた。
むしろ戦後80年の米国が「異質」だった
北岡氏はトランプ大統領が掲げる高関税による保護貿易主義や米国第一主義は第二次世界大戦前においても見られ、「むしろ戦後80年の自由貿易主義や国際協調路線が特殊だった」と分析した。その上で、米国重視の外交関係を改め、「西太平洋連合」の設立を提唱する。
「中国と米国の間にある韓国、日本、台湾、ASEAN諸国を束ねて、EUのような連合を作るべきだ。EUの国々は頻繁に集まって議論し、共通のポジションを作っている。日本は米国、カナダ、オーストラリアなどとの協力関係はあるが、これは日本ではなく米国主導の間接的なグループ。日本と直接的な信頼関係のある国々のグループができれば、国際社会での発言力が増す」(北岡氏)と見る。
それを実現するための方策は何か?M&A Onlineの質問に、北岡氏は「各国の政治家や学者、ジャーナリストらが一堂に会して定期的に対話する機会を設けることが重要だ」と答えた。
併せて留学生の受け入れにも言及。「アジア諸国から日本に留学した人から、すでに閣僚級の人材を輩出するようになっている。米国が留学生を拒絶している現在は、優秀な人材を確保するチャンス。留学生1人あたり1000万円の費用はかかるが、彼らは帰国後に日本のためにも働いてくれる。
外国人労働者の受け入れないと国力は上がらない
トランプ政権後も米国の外交が自国第一主義のまま変わらない可能性もあり、国益を守るためには日本の国力を引き上げる必要があるという。そのためには外国人労働者の受け入れを拡大すべきだと提言する。
「人口減少が進む日本は、数百万人の受け入れが必要。JICAでは東南アジアだけでなく、南アジア、中央アジア、アフリカからも人材を受け入れる取り組みを始めている。外国人労働者の受け入れに反対する人もいるが、それでは国内産業は発展しない」(同)と警鐘を鳴らしている。
トランプ外交に翻弄され、影響力の低下が懸念される国連の改革については、「国連改革で国際紛争が終わるとは思わないが、途上国の不満に応えるためには重要だ」(同)と主張した。
例えば、アフリカからは「国連は我々の国が攻められた時に何もしてくれなかった。だが、ウクライナ侵攻では各国が救いの手を差し伸べる。おかしいではないか」との不満の声も上がっているという。「小国の意見が通るようにするためにも、安全保障理事会の非常任理事国制度を変えるなどの変革をすべきだ」(同)と訴えた。
文・写真:糸永正行編集委員
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