佐川急便の「SGホールディングス」M&A2社を活用し低温物流と国際物流を拡大

宅配便の佐川急便を中核とする大手物流会社のSGホールディングス<9143>は今後3年間(2026年3月期~2028年3月期)で、M&A企業2社を活用して低温物流と国際物流を拡大する。

2社は2024年7月に獲得した中堅物流企業のC&Fロジホールディングスと、2025年7月に獲得する予定の台湾の物流大手モリソン・エクスプレス・ワールドワイド。


C&Fロジは低温食品物流事業を主力としており、モリソンは世界94カ国の拠点と100カ国で展開するネットワークを有しているほか、電子部品や半導体の輸送に強みを持つ。

この両社の強みを活用した取り組みで増収を目指すほか、宅配便事業のサービス競争力の拡大などによる収益基盤の強化や、宅配便以外の輸送サービスであるTMS事業の拡大などを進め、2028年3月期には売上高1兆8300億円(2025年3月期の売上高は1兆4780億円の予想)を見込む。

同社では今後3年間でM&Aに1850億円を投じる計画で、このうちモリソンで9億ドル(およそ1300億円)を見込んでいるため、その後のM&A投資枠として500億円ほどが残る。2社に次ぐ新たなプレーヤーを獲得し、目標達成に向けた取り組みを加速する可能性もありそうだ。

国内屈指のコールドチェーンを構築

C&Fロジは2015年に、名糖運輸とヒューテックノオリンが経営統合して発足した企業で、両社はともに低温食品物流事業を得意とする。

両社の既存施設やルートを活かした共同配送の提案や、両社の既存顧客へのグループソリューションを活かした提案、さらには佐川急便を含めた3社の中継センターや路線輸送の共同利用などによって、「国内屈指のコールドチェーンを構築する」としている。

これによって、低温物流をロジスティクス事業の収益の柱に育てるとともに、低温物流の拡充を宅配便の取り扱い個数の拡大にもつなげていく。

FF事業の規模を拡大

モリソンは航空貨物を中心に、荷主と輸送業者の間に立ち輸出入業務を代行するサービスであるフォワーディング事業を手がけており、2024年12月期の売上高は1425億円に達している。

電子部品や半導体のフレイトフォワーディングを得意としており、同社のノウハウを共有することでSGホールディングスグループのFF事業の規模拡大や収益の安定化に取り組む。

このほかにもモリソンの資産を活用して、米国などでの新規顧客の開拓や、欧州などの新規エリアへの事業展開、アジア諸国や日本国内での事業拡大なども進める。

成長が見込める半導体物流も

このほかにも、主力の宅配便事業では品質や顧客利便性の向上、営業体制の拡充などに取り組み、新規顧客を開拓するほか、TMS事業では2024年問題(トラックドライバーの時間外労働時間の上限規制によって生じるドライバー不足などの問題)に伴う外注化需要を取り込むことなどで、事業を拡大する。

これら取り組みで、国内ではアパレル、日用品物流、低温物流に留まっていた市場を、成長が見込める半導体物流、静脈物流(使用済製品や返品商品、輸送や販売などに伴う産業廃棄物などの輸送)、メディカル物流などに拡げ、海外ではこれまでのアパレル、日用品物流、半導体物流に加え、低温物流にも領域を拡大する。

2024年問題に絡む国内企業が対象に

SGホールディングスが、2010年以降に行ったC&Fロジとモリソン以外の主な企業買収は、2013年のシンガポールの物流企業AMEROID LOGISTICS(現SG SAGAWAAMEROID)の子会社化、2014年のスリランカの物流企業EXPOLANKA HOLDINGSの子会社化、2020年の中国の物流企業である上海虹迪物流科技股份有限公司の子会社化などがある。

物流業界は2024年問題に伴うドライバー不足が進行しており、この問題を解決する手段の一つとしてM&Aを活用するケースが増えている。

SGホールディングスでもC&Fロジの買収の狙いには、低温物流の獲得と並んで輸送力の確保や物流の効率化などがあった。

これまでは外国企業のM&Aが多かった同社だが、今後は2024年問題に絡む国内企業が対象となる可能性は低くはなさなそうだ。

文:M&A Online記者 松本亮一

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