
「東京チカラめし」を運営するSANKO MARKETING FOODS<2762>が、5月15日に2023年6月期の通期業績の下方修正を発表しました。売上高は従来予想より27.3%少ない72億円とし、1,000万円としていた純利益を6億8,000万円の純損失に切り替えました。
原材料価格やエネルギー価格の高騰などを下方修正の理由に挙げていますが、赤字に切り替えた主要因は当初の売上予想に届いていないことであるのは明らか。今期はまん延防止等重点措置が解除された後の業績で、コロナ後も集客に苦戦している様子がうかがえます。
かつての稼ぎ頭だった「金の蔵」を大量閉店し、大衆酒場「アカマル屋」の出店を強化していますが、業績回復の道筋は見えてきません。この記事では以下の情報が得られます。
・SANKO MARKETING FOODSの業績推移
・「東京チカラめし」の店舗展開
居酒屋ブームが終わって大型の店舗が重荷に
SANKO MARKETING FOODSは神田駅のガード下に構えたカレーと牛丼の店「三光亭」が原型。2011年6月にオープンした「東京チカラめし」がヒットし、知名度を高めました。「東京チカラめし」はわずか1年ほどで100店舗まで拡大します。しかし、牛丼店をモデルとするものの、肉を焼く手間が発生するために店舗オペレーションの難易度が高く、回転スピードについていくのが困難でした。また、急速な拡大で人手不足が深刻化。顧客から提供スピードが遅いなどの声が上がるようになり、ブームは終焉を迎えます。
2014年4月に68店舗をマックグループ(現:ガーデン)に譲渡しました。「東京チカラめし」は2022年8月29日に新宿店が閉店となり、東京都からは姿を消しています。
SANKO MARKETING FOODSは1998年に「鶏屋 東方見聞録」、2009年に「金の蔵」をオープンしており、「東京チカラめし」縮小後は居酒屋店の運営を主力事業に切り替えました。
赤字からの改善が進まない中、新型コロナウイルス感染拡大で大打撃を受けました。

居酒屋を運営する企業の多くは、助成金の影響で黒字化しましたが、SANKO MARKETING FOODSは赤字から抜け出すことができませんでした。2023年6月期で7期連続の最終赤字となる見込みです。
EVO FUNDの新株予約権の行使が命運を握る
SANKO MARKETING FOODSの2023年6月期上半期の売上高は29億1,300万円でした。通期の売上予想は99億円。この時点では業績予想の修正は出していません。上半期の時点で売上高の進捗率は3割にも達してませんでした。
同社は2022年12月15日に、EVO FUND(ケイマン諸島)に対して行使価額修正条項付新株予約権の割当を決議しています。2023年1月4日に割り当てられた第5回新株予約権の下限行使価額は117.5円。
EVO FUNDは業績の下方修正を発表する前の2023年5月8日に行使価額150.3円で新株予約権の大量行使をしています。下方修正という悪材料の発表を大量行使のタイミングまで見送ったように見えなくもありません。
ワタミ<7522>は既存の居酒屋店を焼肉店へと転換し、立て直しを図りました。しかし、SANKO MARKETING FOODSは店舗のサイズが大きいため、転換する業態がありません。そのため、既存店は大量閉店し、路面店型の小規模店の出店を進めました。
また、官公庁の食堂も手がけるようになり、手堅い経営スタイルへの切り替えを進めています。
「東京チカラめし」は日本では2店舗を残すのみとなりましたが、海外出店を強化しています。香港に3店舗を出店しているほか、2023年1月にタイにも出店しました。ブランドが毀損した「東京チカラめし」を国内で再び盛り上げることは難しく、海外が主戦場となるでしょう。ただし、SANKO MARKETING FOODSの主力業態からは外れており、小型店の大衆酒場「アカマル屋」が業績を支えるブランドとなります。
アカマルブランドにおいては、鮮魚店を併設した「アカマル屋鮮魚店」をオープン。
しかし、2023年3月末時点で自己資本比率は4.6%。債務超過ギリギリの綱渡り経営を続けています。目下、EVO FUNDが新株予約権を行使することによる、資金調達が命綱です。この難局を乗り越えることができるのか、注目が集まります。
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