双日が豪エネルギー関連企業の買収を加速する理由は?

総合商社の双日<2768>がオーストラリアでエネルギー関連企業の買収を加速させている。

同社は2025年1月31日に、エネルギーや社会インフラの開発を行うオーストラリアのカペラキャピタルパートナーシップ(ニューサウスウェールズ州)と、同社が管理する資産保有会社を買収する契約を結んだ。

この前日の1月30日にも、同国で空調設備や省エネルギー事業を手がけるクライマテック(ニューサウスウェールズ州)を子会社化する契約を結んでいる。

双日は2023年に空調設備や省エネルギー事業を手がけるエリスエアー(ビクトリア州)を子会社化し、オーストラリアで省エネルギー事業に参入したほか、2021年には双日とENEOS(東京都千代田区)の合弁会社が、オーストラリアで太陽光発電所の建設を手がけるエデンヴェールソーラーパーク(クイーンズランド州)を買収し、オーストラリアでの太陽光発電事業に参入した。

双日がオーストラリアで展開するエネルギー事業とはどのようなものなのか。なぜ同国でエネルギー事業に力を入れるのか。それぞれの買収案件を見てみると…。

中東や中央アジア、欧米の先進国への展開も

1月31日に子会社化を発表したカペラは、オーストラリアに本社を置く国際的な不動産開発グループであるレンドリースのグループ企業で、2025年6月までに4億7000万オーストラリアドル(約470億円)を投じ子会社化する予定。

カペラは、これまで病院や幹線道路、地下鉄などのエネルギー、社会インフラ分野の大規模開発に関わっており、プロジェクト受注実績は 340 億オーストラリアドル(約3兆4000億円)を超え、2024年12月時点で10件以上の社会インフラ開発プロジェクトを進めている。

オーストラリアは人口増加や経済成長を背景に、計画されている官民連携型のエネルギー、社会インフラ関連プロジェクトの総額は5440億オーストラリアドル(約54兆円)に上ると見られている。

また、カペラが本社を置くニューサウスウェールズ州では、州内の複数地域を、再生可能エネルギーゾーンに指定し、再生可能エネルギーの普及に不可欠な送電インフラの開発などへの投資が進んでいる。

双日は、こうしたオーストラリア市場の成長性を踏まえ、実績のあるカペラを傘下に収めることで、エネルギー、社会インフラ領域などで大規模プロジェクトの開発機能を強化し、案件の組成から資産管理まで一貫して手がけるビジネスモデルを構築するとともに、オーストラリアだけでなく、中東や中央アジア、欧米の先進国への展開にも取り組むとしている。

今後も続くオーストラリア企業の買収

一方、1月30日に発表表したクライマテックは、2023年に子会社化したエリスエアーを通じて、発行済株式の70%を取得するもので、エリスエアーとクライマテックの両社を合わせた売上高の合計は4億5000万オーストラリアドル(約450億円)に達し、オーストラリアの冷暖房空調装置市場で、売上高首位になるという。

オーストラリアでは、人口増加に伴い住宅施設などの建設需要が高まっており、さらに建築物の環境性能を評価・格付けする制度で定められる高い基準への合格が義務化されていることから、省エネルギーにつながる空調設備の需要が高く、双日では同国の冷暖房空調装置市場は今後、年率約6%で成長し2033年には740億オーストラリアドル(約7兆4000億円)規模に拡大すると見込む。

クライマテックは、商業ビルや病院などの大型施設やデータセンターなどの社会インフラ向け空調設備の設計・施工と保守整備事業を手がけており、双日はクライマテックを傘下に収めることで、エリスエアーとクライマテックの両社が持つ技術や顧客基盤を相互に活用することが可能になり、今後も成長が見込めると判断した。

2021年に参入した太陽光発電事業では、買収後も太陽光発電に対する高い需要が続くと見て、同国での新たな案件開発にも取り組むとしていた。

双日は、世界的な環境意識の高まりや低炭素・脱炭素へ向けた取組みの一環として、2019 年に「2030年までに一般炭権益資産を半分以下にする。原則、一般炭権益の新規取得は行わない」という方針を定めており、この方針に沿って2020年には、ムーラーベン一般炭炭鉱(ニューサウスウエルズ州)で保有する権益 10%を売却した。

さらに2021年3月には一般炭権益の削減目標を前倒し2030年にゼロにするとともに、新たに石油権益を2030年までに、原料炭権益についても2050年までにゼロにする方針を発表している。

これに合わせて太陽光発電事業や省エネルギー事業、再生可能エネルギー事業などに舵を切ったわけで、これら分野ではいずれも高い成長性を見込んでいる。こうした双日の動きを踏まえると、今後も双日による低炭素・脱炭素につながるエネルギー関連のオーストラリア企業の買収は続くと見てよさそうだ。

文:M&A Online記者 松本亮一

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