
「カラオケの鉄人」を運営する鉄人化計画<2404>が2020年8月期第3四半期で2億2800万円の債務超過に陥りました。新型コロナウイルスの感染拡大で2020年4月、5月は営業自粛に追い込まれたことが経営に大きく影響しました。
2020年8月期第3四半期の売上高は前期比18.2%減の44億1000万円。3億4800万円の営業損失(前期は2億7800万円の黒字)を計上しました。純損失は7億8900万円(前期は2億4600万円の黒字)。通期の純損失は16億円にも上る見込みです。
鉄人化計画は創業者日野洋一氏の資産管理会社ファースト・パシフィック・キャピタル(東京都目黒区)に540万株を割り当てて、15億円調達することを決めました。発行済株式数820万株に対して540万株を新規発行。65.8%の希薄化を伴う増資となります。これにより、目先の債務超過は解消される見込みです。
この記事では以下の情報が得られます。
・鉄人化計画の業績推移
・ファースト・パシフィック・キャピタルについて
・M&Aによる多角化の内容
増資で創業者の影響力は強まるか

鉄人化計画はカラオケボックス業界の中で第4位のシェアを取っています。1位が「ビッグエコー」の第一興商<7458>、2位が「カラオケ まねきねこ」のコシダカホールディングス<2157>、3位が「コート・ダジュール」のAOKIホールディングス<8214>です。50%以上のシェアを獲得する第一興商が他社を圧倒しています。鉄人化計画は6%程度。
2017年8月期に15億8400万円の純損失を計上しています。これは営業利益率の悪化に歯止めがかからず、14店舗で減損損失を計上したため。設備や人材育成への投資が進まず、多くの店舗で減損へと至ったのです。
■鉄人化計画業績推移
2016年8月期2017年8月期2018年8月期2019年8月期2020年8月期(予想)売上高80億2500万円78億3000万円73億5400万円71億6500万円55億円増減18.5%減2.4%減6.1%減2.6%減23.2%減純利益(損失)△3億4900万円△15億8400万円△1億9300万円1億6800万円△16億円※決算説明資料より筆者作成
ファースト・パシフィック・キャピタルは、創業者日野洋一氏退任前の2011年2月から鉄人化計画の株式を買い進めました。2011年8月末時点で33.1%を保有する筆頭株主に躍り出ます。2014年11月に日野洋一氏が代表の座を降りた後も、資産管理会社であるファースト・パシフィック・キャピタルを通じて影響力を発揮し続けています。
その象徴的な出来事があります。大赤字を出した2017年代表取締役の堀健一郎氏が辞任しました。辞任の理由は筆頭株主であるファースト・パシフィック・キャピタルの経営方針に相違が生じたため。事実上の解任でした。
新社長には常務執行役員だった松本康一郎氏が就任します。
ファースト・パシフィック・キャピタルの2019年8月末時点での保有割合は39.5%。540万株を新規で割り当てることにより、保有割合は62.1%まで高まります。その影響力はこれまで以上に強力なものになると考えられます。
事業の多角化もコロナで裏目に
鉄人化計画は、2019年からM&Aによる事業の多角化に力を入れていました。
2019年6月に大阪難波の結婚式場「8G HORIE River Terrace Wedding」を買収。2019年12月に中京圏で店舗展開するまつ毛エクステ・ネイルサロン「Rich to」、2020年4月には首都圏で店舗展開するラーメン「直久」をそれぞれ事業譲受しています。また、2020年1月には外食企業ゴリップ(京都府京都市)の旗艦ブランド「牛かつ京都勝牛」のFC店を横浜市のヨドバシカメラ内にオープンしていました。
これらの業態は、どれも新型コロナウイルス感染拡大の影響を強く受けるものでした。
鉄人化計画は調達する資金を主としてカラオケボックスのリニューアル費用に充当する予定です。2020年は大型の投資を控え、コロナウイルスが収束するだろう2021年6月以降の繁忙期に向けた計画を立てています。
創業者の存在感がこれまで以上に増した鉄人化計画が、ポストコロナ時代をどう切り開くのか。注目が集まっています。
文:麦とホップ@ビールを飲む理由