海洋土木大手の東洋建設と任天堂創業家の資産運用会社「ヤマウチ・ナンバーテン・ファミリー・オフィス(YFO)」の1年半にわたる買収の攻防戦が新局面を迎えた。
TOB価格を1255円に引き上げ
東洋建設は26日、YFOからTOB(株式公開買い付け)価格を1255円に引き上げる提案を受け取ったと発表した。YFOはこれまで1株当たり1000円を提案していた。
東洋建設は今年5月にTOB受け入れを拒否したが、6月の定時株主総会で取締役の半数以上をYFOが推す取締役が占める体制となり、TOB受け入れの再検討が避けられない情勢にある。
YFOは1255円へのTOB価格引き上げについて、東洋建設が今年4月にスタートした新中期経営計画の実現可能性が確認されることを条件としている。6月に発足した新取締役会との協議を継続し、会社側の賛同を前提として12月下旬のTOB開始を目指す。
YFOが今回提案した1255円に対し、東洋建設株の26日の終値は前日比16円安の1225円。東洋建設株は6月初旬から1000円を上回る高値圏で推移している。
YFOは東洋建設株の28%超を保有する筆頭株主。TOBが実現した場合、買付代金は最大約860億円に見通し。
敵対的TOBを避けてきたYFO
東洋建設をめぐっては2022年3月に、前田建設工業を中核とするインフロニア・ホールディングスが完全子会社化を目的に1株770円でTOBを開始した。この直後に、YFOはインフロニアに対抗する形で1株1000円でTOBを提案し、東洋建設株の急ピッチで買い進めた。
インフロニアによるTOBは不調(不成立)に終わる一方、TOBに反発する東洋建設とYFOは対立関係が続き、TOB開始予定時期が何度も延長されてきた。YFOは今年1月、9月に延期すると発表したが、この時点で5度目の延期だった。
決戦場となった6月末の東洋建設の株主総会ではYFOが株主提案した取締役候補のうち7人が選任されたのに対し、会社が提案した取締役候補11人のうち選任は6人にとどまった。この結果、13人の取締役の半数以上をYFOが推す取締役が占める異例の形となった。
新たな“ボール”を受け取り、YFOの影響力が強くなった東洋建設の新取締役会がTOBにどういう判断を下すのか。
文:M&A Online