
医薬品卸売り中堅のバイタルケーエスケー・ホールディングス<3151>は、荷主企業の物流業務を受託する3PLを中心とする物流受託事業を本格展開する。新規事業の創出が狙いで、これまで医薬品卸売事業内で展開していた事業を分離し、単独事業として展開する。
倉庫業者や輸送会社を買収
物流受託事業では、これまで構築してきた医薬品搬送のためのサプライチェーン(商品が消費者の手元に届くまでの過程)を進化させることで、物流機能を新たな収益の柱に育てる。
現在保有する宮城物流センター(宮城県)や兵庫物流センター(兵庫県)などに加え、2026年度中に稼働予定の伊勢原物流センター(仮称、神奈川県)を3PL事業の中核施設にすることで、3PL事業の新規顧客の獲得に向けた体制を整える。
加えて、倉庫業者や輸送会社を対象にM&Aを積極的に進めることで、体制を一層強化する。
今後3年間(2026年3月期~2028年3月期)に、伊勢原物流センターを中核とした3PLなど物流新事業に関連する投資やM&Aの推進などに110億円を投じる。
バイタルケーエスケーの計画によると、将来の収益の柱になる新規事業の創出については、物流受託事業の拡大と並んで、製薬事業(未承認薬導入支援事業)への新規進出にも取り組むとしている。
こうした取り組みで2028年3月期に売上高6600億円(2024年3月期比12.3%増)、営業利益67億円(同20.5%増)を目指す計画だ。
増収ながら営業減益に
バイタルケーエスケーは、1948年に宮城県で鈴彦商店として創業したバイタルネットと、1962年に大阪府で錦城薬品として設立したケーエスケーの両社が、2009年に経営統合して誕生した。
その後に適時開示したM&Aは3件で、2014年に北陸エリアでの事業基盤の拡大を狙いに医薬品卸売事業を手がける子会社の井上誠昌堂と、医薬品卸売事業を手がけるフレットを合併。同年には東北エリアでの事業基盤の拡大を目的に調剤薬局経営のオオノを子会社化。
さらに2024年に北海道、東北、新潟県を主な地盤としてきた動物用医薬品販売を関東エリアに広げるのを狙いに、動物用医薬品、医療機器販売のアローメディカルを子会社化した。
現在は医療機関や薬局、自治体、医師会、薬剤師会などの地域組織とのネットワークを強みに、医薬品卸売事業をはじめ薬局事業や動物用医薬品卸売事業、介護レンタル事業などを手がけている。
2025年3月期は、抗がん剤を中心とした新薬創出加算品(新薬開発の促進などを目的に薬価が加算される医薬品)やインフルエンザの検査キットや治療薬の販売が伸び、売上高は6000億円(前年度比2.1%増)となるものの、営業利益は貸倒引当金や事業投資費などの計上によって55億円(同1.0%減)に留まる見込み。

新規事業や新分野への取り組みを強化
医薬品卸売り業界は薬価改定により収益が圧迫されており、厳しい経営環境下にある。
こうした状況の中、各社とも成長に向けて、新規事業や新分野への取り組みを強めており、「海外への進出」(メディパルホールディングス)、「新たな価値の創造」(アルフレッサ ホールディングス)、「新たな成長事業の準備」(スズケン)、「成長投資・収益性向上」(東邦ホールディングス)などの目標を掲げている。
物流面では多くの業界と同様に医薬品卸売り業界でも、トラックドライバーの時間外労働時間の上限規制によって生じるドライバー不足などの、いわゆる物流の2024年問題による影響が懸念されている。
バイタルケーエスケーの物流受託事業はどのように展開していくだろうか。

文:M&A Online記者 松本亮一
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