
Text;西澤裕郎 Photo:ごろ
超☆社会的サンダルが2025年7月4日24時から、オールナイトイベント『2025年7月5日午前4時11分に世界終わっちゃうらしい。 そしたらせーので目を瞑ろう。
本イベントは、「7月5日に日本で大災害が起きる」「日本消滅」という予言が世の中をざわつかせていることを受けて、超☆社会的サンダルが急遽企画したオールナイトイベント。超☆社会的サンダルに加え、叶芽フウカ、THE KING OF ROOKIE、さらば帝国の全4組が出演。深夜24時スタートにも関わらず、会場いっぱいの観客たちが詰めかけた。
7月5日0時になったと同時に暗転。一番手としてステージに登場したのは、新潟県出身の4人組バンド、THE KING OF ROOKIE。THE BLUE HEARTSの「キング・オブ・ルーキー」が流れる中、なすのたかと(g/cho)、ワシミリョウ(b/cho)、 犬人間(ds/cho)が登場。初期衝動そのままにダイレクトに楽器を鳴らすと、ボーカルの鈴木琳(vo/g)が勢いよく登場。観客たちの拳があがる中、剥き出しのロックンロールを歌った。
ステージからはみ出しそうな勢いで演奏するメンバーたち。この日の転換DJが、超☆社会的サンダルのふじおの父・ジオッパであることを明かしフロアを盛り上げると、リズミカルな演奏に合わせて<世界滅亡>とコール&レスポンスをし、オールドスクールなロックンロールで観客たちの身体を揺らした。鈴木は、過去に学校生活でいじめられたことを語り、「そいつのおかげでブルーハーツを知ってバンドを始めた。
「今日ですべて終わるわけですが、思い残すことはないですか?」と観客に語り笑いを起こすと、メンバーに「翌日生きていたらまたバンドをやりましょう」と伝え、「またここに歌いにきます。生きていたらまた会おう!」と観客たちに真っ直ぐ投げかけ、「贅沢な毎日」を披露。最後は「僕たちと一緒に永遠になろう!」と、何度ステージに押し戻されても鈴木はフロアにダイブし続け、エネルギッシュなライブは幕を閉じた。
約20分のDJタイムを経てステージに登場したのは、シンガー・ソングライターの叶芽フウカ。真っ白な衣装に身を包み、抱えたアコースティックギターを思い切りかき鳴らすと、「世界滅亡、知ったこっちゃねえ! いくぞ!」と叫び、歌い始める。ハスキーでブルージーな歌声に観客たちは聴き入る。そこには、どこか緊張感も同居している。「ここで出会えてしまったことは運命でも必然でもない、美しすぎる偶然なんだ」とフレーズを歌うと、「このあと世界が終わろうとも、そういうSFだから」と、言葉を紡いでいく。ギターストロークのスピードが増すのと比例するように口早に歌う叶芽。ジャニス・ジョップリンを思い起こさせるようなブルージーな歌声と、可愛らしさを感じる歌声という幅の広さは、彼女の表現に大きな自由さを与えている。
「地獄で出会ってしまった友人を呼びます」と語り、超☆社会的サンダルのオニザワマシロをステージに呼び寄せた。叶芽は、「(オニザワから)世界が終わる日に呼びたい人を呼びましたと言われてうれしかった」ということを明らかにし、オニザワは「会わなくてもいいと思うくらい好きです」と、照れくさそうに語った。大森靖子のライブ映像をふたりで見ながら熱唱した次の日、隣の部屋から苦情がきたことをオニザワが告白すると、「オニザワさんが好きっていってくれる曲」と、アンプを通さず「ロストえんじぇるs」をふたりで歌唱した。
叶芽は8月10日(日)に5thワンマンを開催することをアナウンスし、「悪意も善意も無差別じゃないと意味がない。全員が幸せじゃないと意味がない。生半可な善意ならやめちゃえよと思う」と歌い、「世界全員死んじゃっても、また巡り会えるように祈りながら」と伝た。歌が終わっても、観客たちの拍手はしばらくの間、鳴り止まなかった。
3番手として登場したのは、東京都を拠点に活動する3人組バンド、さらば帝国。今年のフジロック「ROOKIE A GO-GO」への出演も決まっている注目バンドだ。前田祐快(vo./g.)、田代ほの香(ds/cho.)、ウノコウダイ(b./cho.)がステージに現れセットすると、「僕たちは超☆社会的サンダルの友達。あなたたちも一緒でしょ? 同じものとして一緒に楽しみましょう!」と楽器をかき鳴らした。
はっぴいえんどを源流とする日本語ロックの雰囲気感じさせる「天国にいける様な」で、のっけから観客たちの身体を揺らしていく。爆音のアンサンブルとコーラス、スモーキーなギターフレーズ、そこにサイケデリアが同居している極上のバンドサウンドだ。ドラムの田代がビートを刻む中、「明日で世界が終わっちゃうらしいじゃないですか? そういう心持ちで来ているんでしょ?」と前田が語ると、「熱くなった頭が炎を作り、僕の中で燃えているわけです。燃え残った俺のぷれいど」と楽曲を続けていく。1曲の中でテンポが変わり、展開を見せ、最後は爆発するようなアンサンブルに観客たちは圧倒されつつ体を揺らす。
前田は、フジロックに出演することをこの日の昼に解禁したが、「本パーティをもって世界が終わるんでしょ? その身にもなってくださいよ」と話すと、大きな笑いが会場を包んだ。「思いは力です」と告げ「セスナ」へ。楽器のアンサンブルが心地いい。前田がTシャツを脱ぎ、「世界が終わると聞いたので何も残さず帰りたいと思います!」とギターのチューニングをし始めると、なんとギターのネックが折れるという事態に。共演者のギターを借りてセッティングし直すと、「俺の世界、一個滅亡しました」と語った後、「いい加減にしないといけない」を披露。「想いこそ力であります。この身体は何のためにあるのか。

深夜3時20分。モーモールルギャバンの「ユキちゃんの遺伝子」が流れる中、赤いスーツに身を包んだドラムの林田翔馬、グレーのスーツのタケマスター、青いTシャツのベースのふじお、黒いセーラー服にチェックのパンツに身を包んだオニザワマシロが登場すると、お馴染みとなったレッド・ホット・チリ・ペッパーズの「アラウンド・ザ・ワールド」のイントロを鳴り響かせ、「最後、最後、最後をはじめます! 永遠の17歳のままで……」とオニザワが叫び、「17」でライブをスタート。サビでは観客たちが拳をあげる。
タケマスターのギターから、エッジの効いたドラムとベースが加わり、「ほんとの明日」へ。サビではオニザワが客席にダイブし、観客たちの上で仰向きになって歌う。「明日は来させるから! 終わらせねえから! ふざけんな!」と叫ぶオニザワ。

ステージに戻ったオニザワは、「新宿には人がうじゃうじゃいて、気持ち悪い女とか、気持ち悪い男とか、私を捨てたあいつとか、腹立つくらい思い出があって。こんなところで終わるなんてみなさん、かわいそうですね」と語る。そして「「City girl」というのは、私みたいに東京生まれ、東京育ちのキュートでかわいいガールのことを言うんじゃなくて、東京に染まった、東京が似合う美しい美しい女の子のことを言うらしいですね」と、ミドルテンポでダンサブルな「City girl」を披露した。
ドラムの林田が、この日の出演者たちに感謝を述べ、ライブの告知をすると、「こんなに一生懸命告知しているのに、全部今日で終わるんだけどね」と語り、笑いが起こった。オニザワは、ふじおと行っていた1日1食のダイエット企画をここ1週間さぼっていたこと、来る前に味噌ラーメンを食べたことを告白。

ふじおがオニザワに「「熱中症」ってゆっくり言ってみて」と語りかけると、「ねっ、ちゅう、しよう」というオニザワのコールとともに、「熱中症」へ。タイトにリズムを刻む林田、グルーヴィーなベースを弾くふじお、一心不乱にギターを弾くタケマスター、その上で存分に叫ぶオニザワ。林田の「新宿、朝まで踊りましょう!」という言葉に続いて「チチンプイプイプイ」、タケマスターのギターリフが印象的な「月まで歩いてみたけれど」と続けた。

再びのMCでは、林田が「(世界滅亡って)具体的になにがくるの?」と素直に疑問を投げかけ、「恐竜が絶滅するときも……」とマニアックな恐竜滅亡説明をしはじめる。無表情で聞いているタケマスターとオニザワ。林田の言葉を遮るように、オニザワが「バカマンコあかり」と激しくタイトルコール。途中でギターを置き、客席にダイブ。「幸せになるんだよなるんだよ!」と観客たちの上で叫んだ。後半のテンポアップしたパートでは、観客たちも中央に押し寄せ熱気が増していく。

MCでは、タケマスターが「世界が仮に終わるとして、そんな大変なときにこの場を選んでいただけて光栄です」と感謝を述べた。そして、楽屋でオニザワとふじおがタケマスターに因縁をつけられたエピソードを笑いながら語り、こんな状態じゃ死んでも死にきれないと、ふじおが語ると、オニザワは、「来世でも超☆社会的サンダルやるので、もし死んでもよろしくおねがいしますね」と語り、大きな拍手が起こった。
オニザワは「昨日、たまたま読んだエロ本の中に、悲しい死にたい不幸の森に迷えるのは弱者の特権だと書いてありました。私は死にたいと思えたから音楽をやって、死にたいと思ったから、みなさんはここにいるのでしょう。私はそれが生きていてよかったことだし、みなさんがここにきたことが生きていてよかったと思えるように、やらなきゃいけないんですね。なぜなら、我々は死にたいと思ったから出会えたから。どうせ今日死んじゃうんだけど、でも、私は死にたくないの。だって、死にたくないと思えたところなのに、やっとやっと、ふじおくんとずっとやってきて、気づいたらタケマスターがいて、林田さんがいて、スタッフもいて。明日も明後日も続けばいいのに」と想いを語った。

「(今日で世界が)終わるかもしれないから一緒にいたいと思ったんです。薬を飲んでも治らない、この病気を、この陰謀説を、この曲を歌ってこの時間だけでも私が治してみせましょう」と「薬を飲んでも」へ。冒頭をオニザワのギター弾き語りで歌い、途中から3人の演奏が入り、4人でアンサンブルを奏でる。演奏の途中で林田が「(4時11分まで)あと10秒らしいよ」と伝えカウントダウンを始めると、オニザワが「目をつぶって。ぎゅっと」と、その場の全員に告げる。カウントダウンが終わり、しばらく経っても何も起こらない会場。オニザワが「生きてる……」とつぶやくと、どよめきが起こった。「生きててこんなにうれしかったことなくない? 私、本気で死ぬと思ってた。あー、生きててよかった!」と叫んだ。

「あんなに死にたかったけど、死ななかったからみんなに会えたし明日も会える。おはよう!って言えるんだよね。終わったら、おはようって言おう!」と語ると、再び4人で演奏を再開させた。剥き出しのドラム音、感情的なギター、すべてを包み込むようなベースが混じり合う中、オニザワは<君を思い出すたびに>、あなたを!あなたを!とひとりずつ指差して、真っ直ぐに思いを届けた。
そして最後は「乙女の祈り」へ。「明日がくるように、あなたがたの願いが叶うように祈ります」と再び観客たちの上にダイブ。そのまま客席に降り、フロアで歌い叫ぶオニザワ。「私が死ぬまでずっと生き続けてください! アイラブユー」と、ありったけに言葉を吐き出し、「おはよう! おはよう!」と何度も言葉にし、「ありがとうございました!」と感謝を伝え、ステージを後にした。

止まらないアンコールに応え再登場した4人。オニザワは「生きててくれてありがとう。生きててよかったと本当に思います。それはなぜなら、ひとりぼっちじゃなくなったから。お前らのひとりぼっちには、実は私が隠れているんですね。ふたりぼっちなので。永遠に17歳のままで。永遠のバカのままで。陰謀論信じて、こんなライブしちゃうくらい、こんなライブに来ちゃうくらい、ずっとバカでいようね」と、この日2回目の「17」へ。再びオニザワが観客の上にダイブし、「アイラブユー!愛してる!ずっと一緒に生きてよ!お願いだから!アイラブユー!アイラブユー!一生永遠に17歳のままで」と精一杯に言葉を吐き出し、ライブは終演を迎えた。熱気に溢れるフロアを抜けて地上にあがると、そこにはいつも通りの新宿の朝があった。
<公演情報>
『2025年7月5日午前4時11分に世界終わっちゃうらしい。 そしたらせーので目を瞑ろう。』
2025年7月4日深夜 東京・新宿LOFT BAR
出演:超☆社会的サンダル / 叶芽フウカ/ THE KING OF ROOKIE /さらば帝国
<次回公演情報>
『夏だ!サンダル履いて海へ行こう!』
2025年8月9日(土) 東京・新代田FEVER
開場 18:00/ 開演18:30
出演:超☆社会的サンダル / the band apart
【チケット情報】
前売 一般 : 3,800円(税込/ドリンク代別)
前売 学割 (高校生以下を対象) : 3,000円(税込/ドリンク代別)
※当日にサンダルを持参すると特典あり(当日引換)
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2561001(https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2561001&afid=P66)
オフィシャルサイト: https://sandr-public.com/contents/930324