
劇団四季『カモメに飛ぶことを教えた猫』が7月26日に東京・自由劇場にて開幕した。2019年に、劇団にとって26年ぶりの新作ファミリーミュージカルとして登場した作品の、5年半ぶりの上演である。

劇団四季ファミリーミュージカル『カモメに飛ぶことを教えた猫』最終通し舞台稽古より
物語はドイツ・ハンブルクの港町が舞台。ある日、黒猫のゾルバは汚れた波にのまれ瀕死のカモメに出会うが、カモメはゾルバに卵を託し、絶命する。ゾルバは死の直前の彼女の3つの願い――「私の卵を食べないで」「ヒナが孵るまで面倒を見て」「ヒナに飛ぶことを教えて」を叶えることを決意。大佐や博士といった仲間の協力を得ながらゾルバはなんとか卵を孵化させ、やがてヒナのフォルトゥナータが誕生する。しかしフォルトゥナータはゾルバをママ、自分を猫だと思い込み、飛ぼうとしない。カモメはこの街から飛び立ち南へ行かないと、冬の寒さに耐えられないと知り焦るゾルバ。一方で、ゾルバに宝物をぞんざいに扱われたチンパンジーのマチアスはネズミたちを煽り、ゾルバに復讐しようとしていて……。

劇団四季ファミリーミュージカル『カモメに飛ぶことを教えた猫』最終通し舞台稽古より
ファミリーミュージカルらしく、個性的なキャラクターたちがキュートで楽しい。この日のキャストは、ゾルバ役に厂原時也。一匹狼のようなワイルドさがありながらも自然と人を惹き付けるリーダー気質のあるゾルバで、ヒナのフォルトゥナータの扱いに戸惑いながら次第に母性のような愛情に目覚めていくさまを自然体で演じた。

劇団四季ファミリーミュージカル『カモメに飛ぶことを教えた猫』最終通し舞台稽古より

劇団四季ファミリーミュージカル『カモメに飛ぶことを教えた猫』最終通し舞台稽古より

劇団四季ファミリーミュージカル『カモメに飛ぶことを教えた猫』最終通し舞台稽古より
豪放磊落な大佐を演じた志村要、心優しきバランサーといった秘書に扮した荒川務、エキセントリックな博士を演じた有賀光一ら、ベテラン勢もお茶目な表情を次々と見せ、客席を沸かす。彼らがフォルトゥナータというピュアな存在のために力を併せ、知恵をしぼり、どたばたと奮闘していくさまは微笑ましく、楽しい。

劇団四季ファミリーミュージカル『カモメに飛ぶことを教えた猫』最終通し舞台稽古より

劇団四季ファミリーミュージカル『カモメに飛ぶことを教えた猫』最終通し舞台稽古より
町田兼一扮するマチアスも、こじらせてしまった悔しさや悲しみが伝わり、ライバル役ながら憎めない。ほか、山崎遥香はしっかり者のブブリーナ役を伸びやかに演じ、東沙綾はフォルトゥナータを表情豊かに演じていた。

劇団四季ファミリーミュージカル『カモメに飛ぶことを教えた猫』最終通し舞台稽古より
開幕に際し厂原は「ゾルバは、突然カモメの子フォルトゥナータの母代わりを任されますが、彼女との出会いを通して、自分の殻を破って成長していきます。『勇気を持って、一歩踏み出すことの大切さ』というこの作品のメッセージを、自由劇場、そして全国各地のお客様にお届けできるよう、精一杯舞台を務めてまいります」とコメントを寄せた。

劇団四季ファミリーミュージカル『カモメに飛ぶことを教えた猫』最終通し舞台稽古より
フォルトゥナータが一歩踏み出す姿に、誰かを思う純粋な心や、仲間との絆、歩み寄ることの大切さが詰め込まれ、最後には前向きな気持ちで劇場をあとにできる傑作ミュージカル。カラフルでキャッチーな舞台美術、ネズミたちのダンスなどミュージカルとしての見どころも多い。チケット料金(※東京公演の場合)も大人7000円、子ども5000円と、昨今値上がりが激しいミュージカル界では珍しい良心価格なので、ぜひ夏休みの家族観劇にもオススメしたい。
自由劇場での公演は8月29日(金)まで。その後9月から全国ツアー公演もある。
取材・文・撮影:平野祥恵
<公演情報>
劇団四季ファミリーミュージカル
『カモメに飛ぶことを教えた猫』
演出:山下純輝
脚本・歌詞:劇団四季 企画開発室
作曲・編曲:宮﨑誠
振付:萩原隆匡
日程:2025年7月26日(土)~8月29日(金)
会場:東京・自由劇場
2025年9月20日(土)より、全国ツアー開幕
チケット情報:
https://t.pia.jp/pia/search_all.do?kw=%E3%82%AB%E3%83%A2%E3%83%A1%E3%81%AB(https://t.pia.jp/pia/search_all.do?kw=%E3%82%AB%E3%83%A2%E3%83%A1%E3%81%AB&afid=P66)
公式サイト:
https://www.shiki.jp/applause/kamome/