伊藤若冲《孔雀鳳凰図》など「愛」と「平和」をテーマに江戸時代の絵画を紹介 特別展『愛と平和の江戸絵画』岡田美術館で
伊藤若冲《孔雀鳳凰図》(部分)江戸時代 宝暦5年(1755)頃 重要美術品 岡田美術館蔵

江戸時代は、約260年もの長きにわたり平和が続いた世界史的にも稀有な時代だ。安定した政情のもとで経済が繫栄し、交通が発展し、多様な文化が育まれ、美術や文学においても幅広いジャンルと表現が誕生した魅力あふれる時代でもあった。

その江戸時代の絵画を、「愛」と「平和」というふたつのテーマから紹介する企画展が、6月8日(日)から12月7日(日)まで、神奈川県箱根町の岡田美術館で開催される。

2013年10月に開館した岡田美術館は、日本・東洋の美術品や考古遺品などを公開する私立美術館だ。今回の特別展では、その充実したコレクションから、平和な世を謳歌する気分を映し出した様々な絵画を紹介する。名所や名園、邸内を舞台に、現世を楽しむ享楽的な男女を描いた風俗画や、そこから誕生した浮世絵、また都市の洗練された美意識を伝え町衆や公家から支持された琳派の絵画など、平和な世が育んだ多彩な江戸時代の絵画が並ぶのが大きな見どころだ。

伊藤若冲《孔雀鳳凰図》など「愛」と「平和」をテーマに江戸時代の絵画を紹介 特別展『愛と平和の江戸絵画』岡田美術館で

《修学院図屏風》(部分)江戸時代前期 17世紀 岡田美術館蔵

江戸時代にはまた、徹底した観察に基づく写実的な作品が多く描かれた。日本では様々な生き物が親しみをこめて描かれてきたが、この時代は可愛らしい仔犬の絵が人気を集めるなど、画家たちが生き物に向けた優しい眼差しの感じられる作例が多く見られる。同展でも、虫や魚、鳥や猿など、多彩な生き物の描写が並ぶ。ちなみに、人気絵師・若冲(じゃくちゅう)の花鳥画《孔雀鳳凰図》(重要美術品)は、長年所在がわからず、モノクロ図版でしか知られていなかったものが、2016年に83年ぶりに再発見されて話題を呼んだ作品である。

また、愛する人の存在を直接的、あるいは間接的に描いた作品が多く制作された。家族や恋人、憧れの人、あるいは馴染みの遊女や贔屓(ひいき)の役者を描いた作品や、武家の嫁入り道具として用意された立派な屏風絵、ひな祭りなどに際して子供の成長を願って注文された絵画など、いろいろな愛のカタチが見られるのも、同展の見どころとなっている。

伊藤若冲《孔雀鳳凰図》など「愛」と「平和」をテーマに江戸時代の絵画を紹介 特別展『愛と平和の江戸絵画』岡田美術館で

歌川広重《箱根温泉場ノ図・箱根湖上ノ不二》(部分) 江戸時代後期 19世紀中頃 岡田美術館蔵

なお広大な展示室をもつ岡田美術館では、『生誕150年記念 上村松園と京都』や『日本のやきもの色イロ』など特集展示も充実している。ぜひたっぷりと時間をとって、多彩な展示を堪能したい。



<開催概要>
特別展『愛と平和の江戸絵画』



会期:2025年6月8日(日)~12月7日(日) ※無休
会場:岡田美術館
時間:9:00~17:00(入館は16:30まで)
料金:一般・大学2,800円、高中小1,800円
公式サイト:
https://www.okada-museum.com/

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