藤田俊太郎「2チームで演劇のワールドシリーズを競ってほしい」 演出を担当する『Take Me Out』2025製作発表会見に、出演者24名が集結
舞台『Take Me Out』2025製作発表会見より 撮影:田中亜紀

藤田俊太郎が演出を手がけ、2025年5月より東京・愛知・岡山・兵庫で上演される舞台『Take Me Out』2025の製作発表会見が4月7日、都内で行われ、藤田をはじめ、総勢24名(1名は海外からリモート参加)の俳優陣が集結。本公演にかける意気込みを熱く語っていた。

なお、会見に先立ち、出演者は明治神宮外苑のグラウンドにて野球の体験試合に臨んだ。



2002年に初演されたリチャード・グリーンバーグによる戯曲。メジャーリーグを舞台に同性愛者であることを告白した名選手とそのチームを描き、2003年に第57回トニー賞の演劇作品賞を受賞した。人種差別や性的指向、階級、スポーツにおける男らしさといったテーマを基に、華やかなメジャーリーグの世界に渦巻く閉鎖性によって浮き彫りになる社会的マイノリティに深く切り込み、日本初演(2016年)・再演(2018年)は合計60公演を重ねた。



7年ぶりの再始動となる今回は、再演を支えたオリジナルメンバーに新メンバーを加えた経験豊かな「レジェンドチーム」、そして新たな試みとして、一般公募計330人の中からオーディションを勝ち抜いた11人の新メンバーのみで構成する「ルーキーチーム」の2チームで上演。野球経験の豊富なキャストや、今回が舞台初出演となるキャストなど多様な俳優が集まっており、ふたつのチームによる試合さながらの熱い公演が繰り広げられる。



藤田俊太郎「2チームで演劇のワールドシリーズを競ってほしい」 演出を担当する『Take Me Out』2025製作発表会見に、出演者24名が集結

製作発表会見の前に開催された野球体験試合より、藤田俊太郎

先日、令和6年度芸術選奨において、演劇部門の文部科学大臣新人賞を受賞したばかりの藤田は、「野球と演劇が交差する、とても美しく楽しい場所に観客の皆さんを“連れ出したい”」と題名に絡めて挨拶した。



2チーム体制にてそれぞれ異なる演出を施す新たな試みについては、「日本初演、再演を一緒に創作した仲間たちに対する最大のリスペクトは、まったく違う作品をつくること」だと語り、「レジェンドチームは重厚な台詞劇、ルーキーチームは身体的躍動を伴う群集劇。オープニングもエンディングも違いますし、演劇のワールドシリーズをこの2チームで競ってほしい」と“采配”を説明した。



この7年間で、世界情勢が大きく変化する中で「人々の分断が進んでいる。けれども、人は愛おしく融和し、価値観を認め合っているようにも思え、その両極の実感はある」とし、「21世紀初頭に書かれた戯曲ですが、未来に対する警鐘は、今の時代により響いてくる」と話していた。



レジェンドチームは、物語の語り手となるメイソン・マーゼック役で玉置玲央が2018年に続いての登場となるほか、同じく物語を進めるキッピー・サンダーストーム役で三浦涼介が初めて参加する。

玉置は「いい意味で、7年前の記憶はなくして(芝居を)作っていきたい」と語り、「全員一丸で勝利を目指す野球、公演を目指す演劇には通ずるものがある。どちらもお客様の存在が必要不可欠なので、最後のワンピースとして参加してもらえれば」とアピール。三浦は「2チームあって、お客様にいろんな捉え方をしてもらえるのは、とても素晴らしいこと。与えられたことを全うしたい」と意気込んだ。



藤田俊太郎「2チームで演劇のワールドシリーズを競ってほしい」 演出を担当する『Take Me Out』2025製作発表会見に、出演者24名が集結

レジェンドチーム

劇中で同性愛者であることをカミングアウトするダレン・レミング役は、章平が初演・再演に続き出演。メジャーリーグに国境の壁を越え挑んでいる日本人チームメイトのタケシ・カワバタ役は、初参加となる原嘉孝が演じる。章平は「見せ方を変えようとは思っていませんが、7年が経って、人間として成長し、台本の読み取りが深まり、感情も全然変化している」と新たなダレン像に期待感。アイドルグループ「timelesz」への新加入も話題の原は、「役者としての思いは捨てていない。この場ではアイドルという意識を捨て、未熟な面もありますが、自分なりに取り組みたい」と決意を語った。



チームのムードメーカー、新入りキャッチャーのジェイソン・シェニエー役は初演・再演に続き小柳心、ダレンのカミングアウトに怪訝な態度を示すチームメイトのトッディ・クーヴィッツ役は、初参加となる渡辺大が挑戦。さらにドミニカ人のチームメイトであるマルティネス役は再演に続き陳内将で、ロドリゲス役で初参加の加藤良輔と息の合うコンビネーションを魅せる。



小柳は「明るく楽しく元気よくやっていきたい」と決意表明。

大の野球好きである渡辺は「野球の楽しさを伝えられたら、うれしい」と語った。陳内は「7年前に比べて、多様性という言葉をよく耳にするようになった。今の時代、皆さんにどう刺さるのか。誰に感情移入するかで見え方も変わるはず」と話し、加藤は「作品が持つメッセージとエネルギーを皆さんに届けられるように頑張りたい」と誓った。



「僕らにしかできない芝居を」レジェンド&ルーキーメンバーそれぞれが抱く熱い思い

ダレンの親友で他球団のデイビー・バトル役は辛源、抑えのピッチャー、シェーン・マンギット役は玲央バルトナーが共に初参加。そして、チームの監督スキッパー役は田中茂弘が初演・再演に続き出演し、チームを支える。滞在中のニューヨークからリモート参加した辛源は、「この舞台は、ニューヨークでとても知名度が高い。自分の中からリアリティを引っ張り出して、身を委ねながら参加させていただく」。玲央バルトナーは、本作を「純粋に楽しい、野球賛歌の作品」と評し、田中は「7年前は若輩者かなと思っていたが、今は演じさせてもらっておかしくない年齢になった」としみじみ。また、レジェンドチームのスウィングを勤める本間健太は「皆さんの力になれるよう、精進したい」と話していた。



一方のルーキーチームは、メイソン役の富岡晃一郎、キッピー役の八木将康、ダレン役の野村祐希、カワバタ役の坂井友秋、ジェイソン役の安楽信顕、トッディ役の近藤頌利、マルティネス役の島田隆誠、ロドリゲス役の岩崎MARK雄大、デイビー役の宮下涼太、シェーン役の小山うぃる、そしてスキッパー役のKENTAROの11名で、甲子園出場経験もある八木、坂井を筆頭に、平均身長180cm越えの体躯と実力を兼ね備えたキャスト陣が集結。オーディションを勝ち抜いてきた結束力と負けん気で、レジェンドチームとは違った『Take Me Out』を創り上げる。



藤田俊太郎「2チームで演劇のワールドシリーズを競ってほしい」 演出を担当する『Take Me Out』2025製作発表会見に、出演者24名が集結

ルーキーチーム

富岡は「藤田さんから『メイソンはこの物語のヒロインなんです』と説明された」と明かし、「地味で一般的な、40歳を超えているかもしれない男性がヒロインになる可能性がある。そんな素敵な作品」だと声を弾ませる。八木は高校野球の名門である駒澤大学附属苫小牧高等学校の卒業生で、「先日、将大(野球部の1学年下である田中将大選手)が勝利をあげて、いいパワーをいただいた」。自身も甲子園出場経験があり「あの頃のようには、体は動きませんが、ルーキーらしく元気はつらつに挑みたい」と意気込みを語っていた。



野村は「僕らにしかできない芝居をルーキーチームで見せたい」と宣言。坂井は「野球はやったことがなかったが、楽しさを知った。一致団結し、より良い作品を届けられたら」、安楽は「野球未経験なので、教えてもらったり、調べたりしている。最近覚えた野球用語はハンバーガーリーグです(笑)」と、本公演をきっかけに野球の魅力に目覚めた様子だ。



一方、野球少年だったという近藤は「ベースボールに敬意を込めて、演劇に落とし込めたら。野球も演劇も、ワンチームで作り上げる素敵なエンターテインメント」と深い思い入れ。島田は「稽古がワクワク楽して、宝石のような素敵な時間を過ごしている」といい、岩崎は「価値観の違う人々が、どう一緒に行けていけるのか考えるきっかけになれば」と呼びかけた。



宮下は「レジェンド、ルーキー関係なく、声を出し合っていい作品にしていきたい」、小山は「いろんな人の生き様とアイデンティティが詰まった作品」だとコメント。



KENTAROは幼い頃、今は亡き父親に野球場に連れて行ってもらった思い出を語り「喜んでくれているはず。初めての親孝行になった」としんみり。ルーキーチームのスウィングを担当する大平祐輝は「キャストの皆さんが思いっきり本番を臨めるように精進したい」と話していた。



藤田俊太郎「2チームで演劇のワールドシリーズを競ってほしい」 演出を担当する『Take Me Out』2025製作発表会見に、出演者24名が集結


取材・文:内田涼



<公演情報>
舞台『Take Me Out』2025



作:リチャード・グリーンバーグ
翻訳:小川絵梨子
演出:藤田俊太郎

出演:
[ジェンドチーム] 玉置玲央、三浦涼介、章平、原嘉孝、小柳心、渡辺大、陳内将、加藤良輔、辛源、玲央バルトナー、田中茂弘

[ルーキーチーム] 富岡晃一郎、八木将康、野村祐希、坂井友秋、安楽信顕、近藤頌利、島田隆誠、岩崎MARK雄大、宮下涼太、小山うぃる、KENTAROベンチ入り(スウィング):本間健太(レジェンドチーム)、大平祐輝(ルーキーチーム)

【東京公演】
2025年5月17日(土)~6月8日(日)
会場:有楽町よみうりホール
※全30公演(レジェンドチーム20回、ルーキーチーム10回)

【愛知(名古屋)公演】
2025年6月14日(土)・15日(日)
会場:Niterra日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール
※全3公演(レジェンドチーム3回、デイビー・バトル役は宮下涼太が出演)

【岡山公演】
2025年6月20日(金)・21日(土)
会場:岡山芸術創造劇場ハレノワ 中劇場
※全3公演(レジェンドチーム3回、デイビー・バトル役は宮下涼太が出演)

【兵庫公演】
2025年6月27日(金)~29日(日)
会場:兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
※全4公演(レジェンドチーム4回、デイビー・バトル役は宮下涼太が出演)



チケット情報:
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2557300(https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2557300&afid=P66)



公式サイト:
https://takemeout.jp/



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