ミュージカル『イン・ザ・ハイツ』のスペシャルイベント『Flexin‘ on the floor』オフィシャルレポートが到着
(左から)sara、豊原江理佳、MARU、Micro[Def Tech]、平間壮一、松下優也、SHUN、KAITA、有馬爽人 (撮影:藤田亜弓)

9月から10月にかけて上演されるミュージカル『IN THE HEIGHTS』で描かれる1990年代のクラブカルチャーを体感できるスペシャルイベント『Flexin‘ on the floor』が、5月31日(金) に開催された。



2008年のトニー賞で最優秀作品賞含む4部門受賞するなど高く評価された本作が画期的だったのは、メインになることが少なかったラティーノを描いた物語であることと、同様にそれまでのミュージカルでは導入されていなかったヒップホップや、ラテンの音楽で全編が彩られている点。

いわゆる(高尚と思われている?)“ミュージカル”のイメージを打破することに成功した作品であり、その裾野を広げる可能性に満ちた作品といえる。



今回のスペシャルイベントの狙いも、あえてミュージカルのイメージから離れたところからのアプローチで、本作を生んだカルチャー自体の魅力に触れようというもの。会場は東京・渋谷にあるクラブカルチャーの発信地「CLUB asia」で、頭上には回るミラーボール。開場からDJがスタンバイし、最先端というよりはやや懐かしめ、「作品の中で描かれる1990年代のクラブカルチャー」というイベント趣旨にふさわしいヒップホップ中心の楽曲が流れる中、オールスタンディングのフロアは次第に埋まっていく。



音楽に揺らされた体が適度に温まり、期待も大きく膨れ上がったところにMCを務めるSHUNに呼びこまれ、平間壮一(ウスナビ役)、松下優也(ベニー役)、KAITA(グラフィティ・ピート役)が登場し、ここでしか観られないトリオでのスペシャルダンスパフォーマンスを披露。ダンスが本業のKAITAがものの数分で振り付け、30分程度で仕上がったという彼らにとっては挨拶程度のものだろうが、3人の凄まじいダンススキルを改めて思い知る。



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平間壮一
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松下優也
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KAITA

いきなりの興奮が冷めやらない会場に、さらに5人のキャスト、Micro[Def Tech](ウスナビ役)、sara(ニーナ役)、豊原江理佳(ヴァネッサ役)、有馬爽人(ソニー役)、MARU(ピラグア屋役)が登場する。なおキャストのひとりでもあるSHUN(ラップ指導も担当)を含む本イベント出演の9人のうち6人が、『IN THE HEIGHTS』初出演となる。



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SHUN
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sara
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豊原江理佳

一方、2014年の日本初演から出演し続け、今回で3度目となるのがMicro。初演当時に流れていた「日本人キャストでこの作品ができるのか?」という空気を、幕が開くや一掃できたのは、メロディラップの第一人者である彼をキャスティングできたことが大きかった。こうしたイベントでも前に出すぎず、ニコニコしながら仲間たちを見つめている姿が印象的だった。



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Micro[Def Tech]

2021年の前回公演より、そのMicroとダブルキャストを務めるのが平間。

「今日が人生3度目のクラブなんですよ」と意外な告白をした彼が、「今日がクラブ初めての人?」と客席に問いかけると、4分の1ほどの観客が手を挙げた。こうして、自ら客席を巻き込んでいくサービス精神やこちらを和ませる空気感が彼の持ち味。イベント中、フロア横の階段に突如姿を現して盛り上げ、ハイタッチにも応じていた。そうした姿からも、Microとはまた異なる彼ならではのウスナビ像が見えてくるよう。



日本初演の立役者にMicroを挙げたが、松下らヒップホップのリズムが体に刻み込まれたアーティストたちの存在も成功の要因だった。初演より10年ぶり2度目の参加となる松下は今回、ラップ歌詞の心地よさ、深さに改めて魅了されているようで、会場は松下講師(?)による即席ラップ講座がスタート。人気ナンバー「96,000」のラップを例に、あのKREVAが手がけた日本語歌詞の巧みさと込められた意味をわかりやすく解説してくれた。「これ、一生語れる!」と止まらない松下の様子が微笑ましく映ると同時に、進化したベニーへの期待が高まる。



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(前・左から)平間壮一、松下優也(後ろ・中央)KAITA

なお前回公演で本格的にラップに挑戦した平間も、KREVAからの助言もあり、今回は「よりリズムを守ったラップを心がけて再トライしたい」と意気込む。実際、今回の彼のラップは言葉がより粒立って聴こえる感覚があり、現時点でも進化が感じられた。



ステージとフロアとのコール&レスポンス、観客を半分に分けてのクラップ対決など、クラブならではの試みでも盛り上がったが、やはり劇中ナンバー披露が会場を大いに沸かせた。夢、遊び心、熱狂といった作品の魅力が1曲に詰め込まれたような「96,000」、ベニーとニーナの切なくもロマンティックなデュエット「When you’re home」、そして作品の“顔”的ナンバー「IN THE HEIGHTS」の3曲だ。

トニー賞オリジナル作曲賞&グラミー賞最優秀ミュージカルアルバム賞をダブル受賞している楽曲群は、初めて耳にした人の心もたちまちつかみ、そのまま離さない中毒性に満ちている。



ナンバー披露の中で、観客だけでなくカンパニーをも驚かせたのが、最年少・有馬の底知れぬポテンシャル。「96,000」で最も盛り上がるラップパートを任され、客席の煽りも見事。「ラップ初挑戦なんて信じられない」と、Microが目を丸くしていたほどだ。saraのニーナとしての爽やかな歌声は、この日初めて披露された。「When~」は相手役・松下との雰囲気にまだ初々しさがありつつも、実力者同士のハーモニーは心地よく耳をくすぐった。



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有馬爽人

豊原は、映画『リトル・マーメイド』のアリエルとしてお馴染みとなった可憐かつパワフルな歌声を、「IN THE HEIGHTS」でも随所で響かせる。タイプのさまざまな女性キャラクターが夢を追い求める姿がいきいきと描かれているのも本作の大きな魅力のひとつだ。なお『RENT』の「Seasons of love」でソリストを務めた実力者・MARUが演じるピラグア屋(映画版ではリン=マニュエル・ミランダが演じた)はこれまで男性キャラクターとして男優が演じていたが、MARUの圧巻の歌声を得て、今回女性キャラクターに変更されている。



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MARU

ダブルウスナビによるラップの応酬などを交えた「IN THE HEIGHTS」の熱唱で、本イベントはお開きに。ミュージカルの関連イベントとは思えないほど自由に、熱く沸いた客席を見て松下が一言、「ノリ方がわからないんじゃないかってナメてました(笑)。ミュージカルのお客さんってこういうポテンシャル秘めながら普段こうやって(おとなしく)観てたんやなって(笑)」。

客席を巻き込む力の強い『IN THE HEIGHTS』という作品の特異性が伝わってくる。



同日夜も「アフターパーティー」と称して、KAITAプロデュースのイベントが行われた。様々なスタイルの若手ダンスチーム5組によるショーケースと、KAITA自身もこの日だけのスペシャルトリオを結成してパフォーマンスを披露。ゲスト出演したMicro、平間、松下とともに、進化し続ける日本のストリート文化やダンスシーンを、よりコアに発信していた。



撮影:藤田亜弓



<公演情報>
Broadway Musical『IN THE HEIGHTS イン・ザ・ハイツ』



原案・作詞・作曲:リン=マニュエル・ミランダ
脚本:キアラ・アレグリア・ウデス
演出・振付:TETSUHARU
翻訳・訳詞:吉川徹
歌詞:KREVA
音楽監督:岩崎廉



【出演】
ウスナビ:Micro [Def Tech]/平間壮一(Wキャスト)
ベニー:松下優也



ニーナ:sara
ヴァネッサ:豊原江理佳
ソニー:有馬爽人



ダニエラ:エリアンナ
カーラ:ダンドイ舞莉花
ピラグア屋:MARU
グラフィティ・ピート:KAITA



ケヴィン・ロザリオ:戸井勝海
カミラ・ロザリオ:彩吹真央



アブエラ・クラウディア:田中利花



ハイツの人々: SHUN MAOTO LEI ‘OH 鈴木恒守 SATOKO MORI TokoLefty 根岸みゆ 秋野祐香



スウィング:梅津大輝 江崎里紗



MUSICIAN:
ピアノ・コンダクター:田中葵
キーボード:伊東麻奈
ギター:齋藤隆広/石本大介
ベース:山口健一郎
ドラム:東佳樹
パーカッション:一丸聡子
リード:白石幸司/大内満春
トランペット:田沼慶紀/中野 栞
トロンボーン:榎本裕介/脇村佑輔
マニピュレーター:古賀敬一郎



【ストーリー】
マンハッタン北西部、移民が多く住む町ワシントンハイツ。ドミニカ系移民のウスナビは両親の遺した商品雑貨店を守りながらドミニカで暮らす事を夢見ている。タクシー会社で働くベニーは、経営者夫妻の娘ニーナに想いを寄せている。ハイツの希望の星として名門大学に進学したニーナは、ある秘密を抱えて帰ってきた。ウスナビが恋心を寄せるヴァネッサはダニエラの経営するヘアサロンで働きながらハイツの外の世界に憧れている。
そんな中、皆から慕われているアブエラに奇跡が起きる! 狂喜乱舞する住人たち。
しかし予想もしなかった混乱と不安が突然ハイツを襲う。
ウスナビとヴァネッサ、ベニーとニーナの恋の行方は? ハイツの未来は? 大切にしたい自分の居場所はどこにあるのか――。



【東京公演】
日程:2024年9月22日(日・祝)~10月6日(日)
会場:天王洲 銀河劇場



【京都公演】
日程:2024年10月12日(土)・13日(日)
会場:京都劇場



【名古屋公演】
日程:2024年10月19日(土)・20日(日)
会場:Nitterra 日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール



【神奈川公演】
日程:2024年10月26日(土)
会場:大和市文化創造拠点シリウス 1階芸術文化ホール メインホール



チケット情報:
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2450922(https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2450922&afid=P66)



公式サイト:
https://intheheights.jp/



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