
舞台『きたやじ オン・ザ・ロード』が2025年3月1日に日本青年館ホールにて開幕。本作は、江戸時代後期から読み継がれてきた名作、「弥次さん」「喜多さん」でもお馴染みの『東海道中膝栗毛』をベースとし、昭和の世話もの(義理・人情・恋愛話)作品をオマージュした新作書き下ろしの疾走音楽劇。
シライケイタ作、潤色・演出をウォーリー木下が務め、主人公・喜多八を中川大輔、相棒・弥次郎兵衞役を牧島 輝、喜多さん・弥次さんの前に立ちはだかる瞬太郎役を和田雅成と豪華俳優陣が集結している本作。開幕を前に行われたゲネプロの様子をレポートする。
【カラフルな世界観で巻き起こる珍道中にワクワク】
三味線の音色と共に幕が上がる『きたやじ オン・ザ・ロード』。宮本武蔵の戦いを劇中劇として描くながら、俳優の喜多さんが「ずっと脇役は嫌だ!」と武蔵役の座長に歯向かい、旅一座のメンバーに追われるドタバタから物語はスタートする。

中川大輔
喜多さんが逃げてきた先には、ヤクザに絡まれている弥次さん。偶然の再会にお互い大喜びし、会っていなかった時間の出来事を語り合う。芝居は面白いが「ここでは無いどこかへ」行きたいと願う喜多さんと、愛妻と子供を亡くし、妻との約束で喧嘩はやめたという弥次さん。元より相棒のふたり、共にお伊勢参りに出かけるのだが……。

牧島 輝
赤やピンクを基調にした喜多さん、グリーンを基調にした弥次さんのカラフルな着物がステージにとてもよく映える。背景の映像と、アンサンブルによる街行く人々の動きによる、“長旅”の表現が楽しく、こちらも一緒に旅をしている様なワクワク感に包まれる。

活気のある江戸時代の街並みと、現代語によるセリフのマッチングが面白く、ふたりの珍道中に一気に引き込まれていくのだ。
【物語を盛り上げる軽快な音楽とキャスト陣による見事な歌唱】
物語を盛り上げてくれるキャストによる歌唱、音楽も楽しい。東海道を徒歩で移動する場面で流れる「よいよいやっさやっさそらよいよい!」という小気味良いテーマ曲は、さまざまなアレンジで聴くことが出来る。

これまでさまざまな舞台作品で歌声を披露してきた牧島 輝はもちろん、中川大輔の歌声も見事。喜多さん、弥次さんの性格を表す様に元気いっぱいに響いていく。物語の節目節目でふたりの絆や決意について歌で表現するシーンがあり、声の相性の良さにも驚かされる。
また、本作でヴィラン的なポジションとなるヤクザの“八乙女一家”の歌唱シーンも大迫力。人の動きの一歩先を読む・和田雅成演じる千里眼を持つ瞬太郎によるナルシシズムあふれる歌い方はとても艶やか。瞬太郎のママ・お蝶を演じる秋山菜津子によるドスの聴いた歌唱は圧倒的な迫力だ。

和田雅成

秋山菜津子
お雪役の浅川梨奈の歌声も劇場に美しく響き渡り、凄腕のスリ・十吉を演じる尾上寛之、八乙女一家のオジキ役の山本亨によるキャラクターの性格がフルに詰まった歌唱もぜひ楽しんで欲しい。

浅川梨奈

尾上寛之

山本亨
音楽と歌唱はもちろん、江戸時代を舞台にしているからこその殺陣の華麗さも見どころのひとつ。中川の手足の長さが存分に活かされたエネルギッシュなアクションシーンにも注目を。
【「完璧で無くても良い」元気をもらえるストーリー】
八乙女一家との戦いを中心に、さまざまな困難に立ち向かい、持ち前の明るさと元気で解決していく喜多さんと弥次さん。どんなにピンチに陥っても、今日はいったん寝よう!と寝てしまう潔さにはクスッとさせられる。そしてガッツとパワー、少しのひらめきでピンチを突破していくふたりの姿に元気をもらえるのだ。

中盤では弥次さんの抱えている葛藤や後悔が滲むシーンが展開されるが、弥次さんとあるキャラクターのやりとりから、完璧で無くても良いから自分らしく真っ直ぐ生きる大切さを感じ取った。
また、瞬太郎とお蝶を中心とする八乙女一家のやりとりもただの“敵”とするには勿体ないほど魅力的。物語のクライマックスに向けて盛り上がる、キャラクター同士の魂のぶつかり合いに心が熱くなること間違い無しだ。

ゲネプロ前の取材会より、左から)牧島 輝、中川大輔、和田雅成

本作の東京公演は3月16日(日)まで。その後、21日(金)から23日(日)まで大阪・SkyシアターMBSで上演される。
取材・文:中村梢 撮影:田中亜紀
<公演情報>
舞台『きたやじ オン・ザ・ロード~いざ、出立!!篇~』
作:シライケイタ
潤色・演出:ウォーリー木下
出演:中川大輔 牧島 輝/浅川梨奈 尾上寛之/和田雅成/市川しんぺー 佐藤真弓 村上大樹 百瀬朔 インディ高橋/秋山菜津子 山本亨
遠藤令 鈴木智久 花陽みく 真鍋恭輔 村田実紗
【東京公演】
2025年3月1日(土)~16日(日)
会場:日本青年館ホール
【大阪公演】※SkyシアターMBS オープニングシリーズ
2025年3月21日(金)~3月23日(日)
会場:SkyシアターMBS
チケット情報:
https://w.pia.jp/t/kitayaji/(https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2455716&afid=P66)
公式サイト:
https://www.asamaru-kikaku.com/