
筋肉YouTuberでAV女優、そしてプロレスラーとマルチに活躍する、ちゃんよた。昨年「BreakingDown6」に出場し話題となった筋肉美女は元警察官でAV女優という異色の経歴の持ち主でもある。
中学時代の成績は学年で10番以内、
高専では化学を専攻
――現在はジャンルを股にかけて活躍される、ちゃんよたさんですが、小さい頃はどんな子どもでしたか。
真面目でおとなしい、陰キャでした。小学校では前に出るタイプじゃなく、勉強も運動もできない。お母さんに怒られて泣きながら算数のドリルをさせられた記憶があります。
中学では入った女子バスケ部が学校のヒエラルキーが上の方だったんです。中学に入ると急に勉強ができるようになって、テストの点は学年で10番以内。学校のマラソン大会でもずっと上位にいたので、自分としては中身は陰キャなんだけど、まわりからはそう思われることはなかったですね。
――ちゃんよたさんは、その後、高専に進学します。なぜ高専だったんですか。
お母さんの希望です。お兄ちゃんも高専に通っていて、もともと理系が得意だったのもあって楽しそうだなとも思って。高専では化学系専門の学科に入っていたので、有機化学、物理化学、生物化学などを学んでいました。
――肉体派という今のイメージとは違いますね。
人と話すのが好きじゃなかったから、高専でのモノと向き合う時間は楽しかったですね。高専は陰キャがいっぱいいるので、陰キャが加速しましたね。漫画とかアニメも好きで、「ジョジョの奇妙な冒険」第5部のミスタにハマってました。16歳の時には初めての彼氏もできました。
高専は5年制なんですけど、プラス2年行くと四大卒と同じ資格が取れるんですよ。しかも学費が年間20万円とめちゃくちゃ安いので7年間通ってました。
ストーカー刺青おじいちゃんが100件の不在着信
――当時はどんな人生設計を考えてたんですか。
卒業したら化学メーカーに勤めて、結婚してと考えてました。
ただ就活中だった21歳の頃、アルバイトしていたコンビニでストーカーに遭ったんです。早朝に働いていたんですが、そこにくる60歳くらいのおじいちゃんがいて。土木作業の服を着ていて、そこそこ身長も高く、肌も黒くて、ちょっと悪そうな感じ。
私のことを気に入ったみたいで、いつも自分が買い物をするついでにジュースやお菓子を私に買ってくれて。
でも、そのおじいちゃんが「地元の北海道に帰らなきゃいけないけど、寂しいから電話番号を教えて」と言ってきて。ちょっと嫌だなと思ったけど、めちゃくちゃ物をもらっているし、電話番号ぐらいいいかなと教えちゃって。
そうしたら、もう毎日100件くらい電話がかかってきて。最初は電話に出て、対応してたんですけど、そんなに出られないじゃないですか。そしたら、もう不在着信、不在着信で...。
バイト先で会うかもしれないから着信拒否するのも怖くて。店におじいちゃんが来たら、裏に隠れてたんですが、そうしたらブチぎれて「いるのわかってんだ」と暴言をめちゃくちゃ吐いたり、私が店にいない時にも「ぶち殺すぞ」と電話がかかってきたり。
――それは恐怖ですね。
「俺は〇〇組に入ってるんだ」と背中にめちゃくちゃ刺青が入ってる人の写真を見せられて、ガチでそっちの人だと思っていて、このままだと殺されると思ってました。
ストーカーが始まってから1か月くらいは我慢。でもお母さんが心配しちゃうと思ったので家族には相談できなくて。
警察もすぐ対応してくれて、おじいちゃんの家に行って、接近禁止の誓約書を一筆書かせて「これ以上接近したら逮捕される可能性があるよ」と言ってもらって。それでストーカーが収まりました。それまで警察官という職業は将来の選択肢にはなかったんですけど、その出来事があって警察官っていいなと思うようになったんです。
運動もずっと好きで、警察学校はめっちゃ走らされるとも聞いていたので「鍛えられて、強くなりたい」と思って。それで卒業したタイミングで警察学校に入りました。
人間なんてしょせん肉の塊
――厳しさを求めて入った警察学校はどうでしたか。
まず外との通信ができないように携帯電話を取り上げられます。髪形も男子は完全な丸刈りで女子はスポーツ刈り。起床と就寝の時間は決まっていて、まさに「学校」でした。つらい面もありましたけど、逆にその厳しさが良かったですね。
あと、教官と関係性を築くのがうまかったんですよ(笑)。毎日A5くらいのノートに日記を書いて、それを教官がチェックするんですが、そこに「教官の授業はすごくわかりやすいです」とか書いてアピールしてたんですよ。
――ただ、いざ警察官になって交番勤務になるとうまくいかなかった。
楽しくなかったですね。あまりにも仕事ができなさすぎて、できない自分に落ち込んでました。
あと警察官って本当に感謝されない仕事で、交通切符を切ったら怒られたり、普通に街を歩いてるだけで変なおっちゃんに「税金泥棒」って言われたり。なんでこんなに怒られなきゃいけないのかと、段々しんどくなっていきました。
――警察官時代は人の死について考えることも多かったとか。
私が所属してた署は人数が少なく、交番勤務以外もいろいろとやらされてたんです。「経験のために行って来い」って言われて、刑事さんの付き添いで大学病院で検視解剖の手伝いもしました。
解剖医に「今から頭を開けるから、下で脳みそを受け取って」と言われるんですよ。ドリルで頭をグリグリ開けて、頭蓋骨をぱかっとやって落ちてきた脳みそをトレーで脳を受け取ったり。
事件性があるかどうかを調べるので、取り出した臓器を全部写真で撮るんですけど、私は台に臓器を置く係。
それを見た時、人間なんてしょせんは肉の塊だなと思いました。
同期の自殺。「明日が来るのがもう怖い」
――その体験は大きいですね。ただ警察官の仕事を続ける中で、ついには精神的にまいってしまった。
日々怒られることで、だんだんすり減っていったんだと思います。
自分でいうのもあれですが、警察学校ではすごくできた方でした。運動もできたし、勉強もできて、教官にも褒められることが多かった。でも、現場に入ったら自分は何もできなくて。完璧にやらなきゃって思ってたから、自分でも自分を追い込んで、それで病んじゃって。仕事を始めて3~4か月くらいの頃です。ストレスの捌け口は食で、急に太っちゃって。
そんな時、勤務中にテレビをつけたら同期の子が自殺をしたというニュースが流れたんです。警察学校の時にはずっと成績1位で、めちゃくちゃ優秀な子で、警察学校時代はクラスも違ったし、そこまで仲が良かったわけではないですけど、しゃべったことはある子でした。
ただでさえ心がきついのに、知っている人が自殺をして、もうショックで...。
――精神的に追い込まれた状態で、そのニュースはきついですね。
その頃には本当に精神的にしんどくて、眠れない毎日でした。で、ある日、ずっと寝られず、深夜4時に涙が止まらなくなってしまって。これはもうダメだと思ってお母さんに電話したんです。「明日が来るのがもう怖い」って。
お母さんから、「もう、とりあえず仕事場に行かなくていいから、上司に電話しなさい」と言われたので、朝、上司に電話してその日は休みました。お母さんもその日、私のところに来てくれて。「もう辞めてもいい?」って聞いたら「いいよ」って言ってくれたので、警察を辞めました。
(#2へつづく)
ちゃんよたの美しき筋肉とリングコスアザーカット
取材・文/徳重龍徳 撮影/石垣星児