
芸能界の天国も地獄も味わった“無敵の炎上芸人”とろサーモン・久保田かずのぶ。自己肯定感が低すぎて人生がうまくいかない25歳女性と、女心の無知ゆえに人生初彼女から愛想を尽かされないかと不安がる28歳男性、ふたりの“お悩み”にほろ酔い本気回答する!
“無敵の炎上芸人”が酒を片手に……
どこの街にもある、安くてうまい立ち呑み屋。年齢も性別も関係なく、誰もが腹を割って気楽に過ごせる場所だから、ついつい本音や悩みがポロリとこぼれてしまう……。
そんな“人生交差点”でほろ酔いになりながら、読者から寄せられたお悩み相談にのるのは、芸能界の天国も地獄も味わった“無敵の炎上芸人”とろサーモン・久保田かずのぶ。
この日、久保田と訪れたのは「立ち飲み居酒屋ドラム缶大塚店」。いわゆるフランチャイズだが、メニューは各店舗の裁量に任されており、毎月ののれん代も微々たるものだという。
大塚店ではどのフードもまんべんなく大人気で、17時の開店から客足が絶えない。「ドラム缶」系列のなかでも“最強”と称される誉れ高き店である。丁寧な接客が持ち味ゆえ、立ち呑み初心者の久保田にはぴったりかもしれない。
記念すべき今宵のファーストオーダーは刺身盛り合わせと揚げ銀杏、そしてポン酢サワーに。

刺身盛り合わせ(550円)……「ドラム缶大塚店」の看板メニュー。ほとんどの客が頼むので、残っていたらラッキー。この日は中トロ、ブリ、カンパチ、甘鯛、つぶ貝の5点盛り
――久保田さん、ふだんは何を飲むんですか?
甘くないやつが好きですね。なんだこれ? ポン酢サワー? 面白そうだ、これにします。酒は僕のルーティンなんでね。
――いつもはどんなお店で飲まれるんですか?
小汚い大衆酒場ですね。そういうところにいるやさぐれたおじさんから、笑いのヒントをもらったりします。文句ばっかり言ってるおじさんのセリフが、意外とテレビなんかで使えたりする。リアルなんですよね。酒場にはおもしろいことが転がっているんです。

揚げ銀杏(200円)……大人になるとうまさがわかる食べ物の代名詞。揚げることで臭みが消え、さらにうまさが引き出される。強めの塩加減で酒がぐいぐい進む
――いつもお仲間と?
うん。ひとりでは絶対飲まないですね。ひとりで飲みに行って、店に置いてあるテレビを見て、「また、こいつが出てるやん」って思ったら、下を向きたくなるでしょう。
――酒を飲みながら、後輩から相談されることもあるんですか?
まあ、ありますよ。売れてない時代も長かったし、M-1で優勝もした。でも、しょっちゅう炎上してる。天国も地獄も経験している人間の話はおもしろいんでしょう。
――そんな久保田さん宛てに、悩める読者から質問や相談がたくさん届いています。お酒もいい感じに回ってきたので、そろそろ人生相談を始めていきましょうか。
何を言ってもいいんですよね? 僕は忖度しないから。思うままに答えていきますよ。

自分を好きになれないなら、他人を嫌いになればいい
<人生相談vol.1>
自己肯定感が低すぎて、自分の好きなことも、やりたいことも、将来どうしたいかもわかりません。自分を疑って人生がうまくいきません。自分を好きになるために大事なことを教えてほしいです。(アイ・25歳・女性)
僕は自己肯定感が高いけど、この人の悩みもわからなくはないです。だから、僕にしかできない回答をしますね。もしかしたら、これまであまり聞いたことのないアドバイスかもしれませんが……自分を好きになれないんだったら、他人を嫌いになればいいんですよ。
近頃よくありますよね? 「自分を好きになれ」って自己啓発。自己肯定感を必死に上げる必要なんかない。自分を上げなくていいんです。人を下げるんですよ。そっちのほうが楽じゃないですか。自分という立派な人間は、敵だらけの世知辛いこの世の中で孤独に戦っている。そう思い続けたらいいんです。
「みんな見てよ、こんなに頑張っている私を」
それくらいの気持ちでいいじゃないですか。嫌いなやつのことをずっと憎んで、相手のアラを探していたら、自分のいいところもきっと見つかると思います。最初はネガティブかもしれないけど、そうやっているうちに自分をアピールする力もつくでしょうよ。
そうなったらどうなりますか。その後のあなたは輝くだけですよ。ということは、「あいつより上に行ってやろう」「嫌いなやつより幸せになってやろう」というこの気持ち、これって向上心ですよ。自分をかき立てるエネルギーとして最高でしょう。

――きれいごとの自己啓発とは真逆の考え方ですね。
実際に僕は、ネガティブな気持ちがすべて自分のエネルギーになっていますから。20代で俺より先に売れた同期がいたけど、30代では俺のほうが稼いだ。30代で俺より稼いだ芸人がいたけど、40代では俺のほうが稼いだ。死ぬまでがゴールじゃないですか。
そうやって、いい意味でライバルをつくることです。勝手に人を下げて、自分の頭のなかでデッドヒートを繰り広げる。僕はそうしてここまで来ました。

――久保田さんは「ライバルに負けるかもしれない」という不安はなかったんですか?
芸人なんていつ仕事がなくなってもおかしくないから、不安しかないですよ。今だって不安です。でも、怖いからこそ、当たりさわりのないことを言わないようにしてますね。ちまちま乗り切っていたら使われなくなるから。
いつだって、「これが自分の好きな久保田かずのぶだ!」って胸を張れるような芸をやるようにしてます。そうすれば、仕事が終わったときに「今日もいいパフォーマンスできたな」って思えるから。
僕、レギュラー番組がないんですよ。野球と同じでレギュラーはいいですよね。
レギュラー番組がないのに家を買った芸人は僕くらいじゃないですか? 代打でも家が買えるんですよ。
男はしゃべってなんぼ、しゃぶられてなんぼ
<人生相談vol.2>
先日、生まれて初めて彼女ができました。本当に情けない話ですが、今まで女性の友達はいたものの、それ以外の女性との付き合いは夜のお店や肉体関係のみで、ちゃんとした恋人とどのように接したらいいのかわかりません。
彼女のことはとても好きなので長く付き合いたいし、ゆくゆくは結婚をしたいとも密かに考えています。しかし、ふとしたときに、女心への無知ゆえに彼女を傷つけてしまい、愛想を尽かされてしまうのではないかと怖くなってしまいます。(のむなか・28歳・男性)
こいつが風俗に行きすぎたバチが当たったんですよ。手っ取り早く金払って一発楽しんで、あわよくば店の外に連れ出してプライベートで会って安くデートしたいなとか、そんなことばかり考えてきたやつに、神様は簡単にご褒美なんかくれないですよ。

――この相談者の方は好きな人ができたことで改心したのかもしれませんよ。
だったら、コミュ力をつけたらいいんですよ。コミュニケーション能力をね。女性としゃべった回数も少ないし、口説き落とした経験もないんでしょ?
「女心への無知ゆえに彼女を傷つけてしまい、愛想を尽かされてしまうのではないか」って言うけど、とにかく女性としゃべって、しゃべって、しゃべりまくるしかないから。男はしゃべってなんぼ、しゃぶられてなんぼなんですよ。
――しゃべって口説いて、しゃぶられる男になれと。
そういうこと。「口説く」って「口」に説法の「説」と書くでしょ。しゃべって落とさなきゃ。その腕があってはじめて、しゃぶってもらえるわけだから。

――「とろサーモンさんの漫才とラジオが大好きです」とのことです。
ろくでもねえやつです(笑)。俺の話が好きなやつはろくでもねえです。この人は今まで彼女がいたことなかったんでしょ? そういう人はね、とにかく女の子としゃべってコミュ力を磨くしかない。新大久保でもどこでもいいから、どんどん女の子がいるところに行って話して来いよ。男はしゃべってなんぼ、しゃぶられてなんぼです。

「立ち飲み居酒屋ドラム缶大塚店」
東京都豊島区南大塚3-38-8 山上ビル1F
営業時間:月曜日~土曜日17:00~23:00(L.O22:15)
定休日:日曜日
構成・撮影/キンマサタカ