
恋人にメッセージを既読スルーされて、不安な気持ちになったり、怒りを覚えたりしたことはないだろうか。なのに嫌われるのが怖くて恋人に不満を打ち明けることができない人も多いだろう。
森川陽介氏の著書『誰かを思いっきり好きになってみたい』から抜粋・再構成してお届けする。
「重い女と思われているんじゃないか」
40代前半の理沙さん(仮名)には交際して5か月になる、30代後半のちょっぴり不器用な理系の彼がいました。はじめはとても仲のよい2人でしたが、つき合って3か月ほど経った頃から彼の仕事が忙しくなり、メッセージが既読スルーされてしまうことがありました。
その頃から、少しずつ彼との関係がギクシャクし始めてしまって、つき合って5か月の頃には、会うのは月に1回ほどになっていました。
理沙さんは彼との関係を以前のような仲のよい関係にしたいと思い、カウンセリングにいらっしゃいました。詳しく話を聞きながら、「彼からのメッセージを確認するのはどんな時ですか?」と質問すると、「夜、寝る前に彼にメッセージを送るんです。でも、すぐに返信がなくて。そのうちに眠ってしまい、朝、目が覚めて確認するとやはり返信がないんです」。
「彼からの返信がない時、どんな気持ちでしたか?」
「すごく不安な気持ちでした。彼に嫌われちゃったのかなと思って」
「どうして嫌われた気がするのですか?」
「いつも私からメッセージを送って、重い女と思われているんじゃないか。きっと彼はそういう女性は嫌いだろうなって思うんです。
でも同時に、返信をくれない彼に腹を立てている自分もいて、悲しかったり、怒ったり、ぐちゃぐちゃな気持ちになります。
私は理沙さんの苦しい胸の内を聞いて、彼女がこの2か月間、本当にがんばってきたのだなと感じました。彼女は不安や悲しみを感じながらも、自分を責め、彼に不満をぶつけたい自分の気持ちを必死の思いで抑え込んでいました。
彼との関係性を改善させる前にやるべきこと
理沙さんのケースは返信が来ないことが悩みでしたが、これに限らず、「彼からの愛情を感じられない」「自分がどうでもよい存在に感じられる」、そんなことが何度も繰り返されると誰もが心の奥で不安や悲しみなどの痛みを感じるようになります。
痛みを抱えながら彼のことが大好きという気持ちを感じることは、とてもむずかしかったりします。そんなもどかしさから、彼に対する怒りの感情が湧いてきて、さらに苦しくなってしまっていたのです。
そこで私は、彼との関係性を改善させる前に、まず理沙さんの今の苦しい気持ちをケアすることを提案しました。
はじめに、ソファーに座っている理沙さんのひざの上にクッションをのせ、目を瞑ってもらいました。そして、彼女にこんなお願いをしました。
「朝、目が覚めて、携帯を見て、彼からの返信がないことに気づいて、すごくがっかりした気持ちを感じていた。今、ひざの上にのせているクッションをあの時の自分だと思って、やさしく、やさしく抱きしめてもらってもいいですか?」
理沙さんはクッションをやさしく、やさしく抱きしめました。
「どんな感覚がしますか?」
「ちょっとだけ安心する感じがします」と理沙さんは言いました。
「今、あなたが抱きしめている〝女性〟は、彼に対して言いたいことをたくさん飲み込んでがんばってきたとわかりますか?」と聞くと、理沙さんは小さく頷きました。
「その女性は、もしかしたら彼に対してだけではなくて、今までの人生でずっといろいろな場面でこうやって言葉を飲み込んで、がんばり続けてきたのかもしれません。
だから今日は、彼女の今までの人生のがんばりを認めてあげる日にしませんか?」と私が言うと理沙さんは「はい」と答えました。
「クッションをやさしく撫でながら、心の中でこう伝えてあげてください。『よくがんばったね』」
自分にやさしく寄り添うことは、心を回復させるということ
理沙さんはそっとクッションを撫でながら、心の中であの時の自分に向かって「よくがんばったね」と伝え、静かに涙を流していました。
「少し心が温かくなった感じがします」と理沙さんは言いました。
「今の温かい感覚を持ちながら、彼のことを思うと、どんな気分になりますか?」
「え……そうですね。やっぱり、彼のことが好きだなと思います。それって、変ですか?」
「全然変じゃないですよ」
「よかった!(笑)」と話す理沙さんの雰囲気は、それまでよりずっと軽やかで自信に満ちているように見えました。
自分にやさしく寄り添うことは、心を回復させるということでもあります。
「やっぱり、彼のことが好き」と、彼のことを好きな自分にもマルをつけてあげることができるようになったりします。
理沙さんは、そんな「彼のことが好き」というシンプルな気持ちだけを持って、次のデートに臨むことができ、2人でとても楽しい1日を過ごしました。そして、彼女は最後に勇気を出して、やさしい雰囲気と口調で彼に伝えました。
「私、あなたに嫌われるのが怖くてずっと言えなかったことがあるの。
彼は、「そうだったんだ。ごめんね。僕はずっと男友だちしかいなくて、いつもあんな感じでやり取りしていたから。最近、君がずっと元気がなくて、君に嫌われたのかなと思っていた。教えてくれてありがとう」と言いました。
そこで、ようやく2人はお互いに不安を抱えてすれ違っていたことに気づくことができたのでした。
文/森川陽介
画像/Shutterstock
『誰かを思いっきり好きになってみたい 「私」が大切にしている感情を知って、運命の恋を始める恋愛心理学』
森川 陽介
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