〈和歌山県の人口分がまるまる…〉日本人の人口減少幅が過去最大。移民受け入れ待ったなしかそれとも… ほかの先進国よりも深刻な背景
〈和歌山県の人口分がまるまる…〉日本人の人口減少幅が過去最大。移民受け入れ待ったなしかそれとも… ほかの先進国よりも深刻な背景

総務省が発表した最新の人口推計によると、2024年10月1日時点の日本人の人口は1億2029万6千人で、前年に比べて89万8千人(0.74%)減少した。これは調査開始以来、最も大きな減少幅だ。

少子化問題が改めて数字として突きつけられるかたちとなった。

1年間で和歌山県が消滅したレベルの人口減少

外国人を含む総人口も55万人減の1億2380万2千人。14年連続のマイナスとなっている。この原因はもちろん出生率の低下だ。

女性1人が生涯に産むと予想される子どもの数を示す統計的な指標「合計特殊出生率」は、最新のデータがある2023年が1.20。こちらも統計を取り始めて以降、最低の数字だ。また2024年の出生数は外国人を含む数字で72万988人、日本人だけに限定すると70万人を切ると予想されている。

この出生率の低さが物語るように、15歳未満人口は1383万人で、前年に比べて34万3千人の減少で過去最低。一方で、65歳以上人口は3624万3千人で、前年に比べ1万7千人の増加となり、割合は0.2ポイント上昇の29.3%で過去最高。

うち75歳以上人口は2077万7千人で、前年に比べ70万人の増加となり、割合は0.7ポイント上昇の16.8%で、こちらも過去最高となっている。

人口減少に伴う“超少子高齢化社会”化で、SNSでは日本の未来を憂う声が続出している。

〈和歌山県の人口が2023年時点で89万人なので、1年で和歌山県から人がいなくなったと考えれば、すごいことが起こっていると身近に感じられる〉

〈俺がガチのおっさんになるまで、日本はあるんだろうか〉

〈日本の人口減少やばいな 政治家も特に手を打ってないし年寄りが政治家やってる国はだめだ〉

〈もう止めようのない、人口減少の波。それと比例して経済もどんどん縮小していく。

日本滅亡へのカウントダウン〉

ほかの先進国と比べても日本だけがずば抜けて危険な状態なのだろうか。スペインのポンペウ・ファブラ大学、政治・社会科学学部の研究員で、少子化研究者の茂木良平氏に話を聞いた。

「国連の推計によると、2024年時点で人口減少期に移っている国は63カ国です。2024年から2095年までの間に人口数が最も減るのは中国であり、その次が日本と推計されています。

日本同様に低出生国なイタリアは2014年以降、人口が減少し続けており、その間の累積減少数はイタリア第二の都市であるミラノの人口と同じくらいの136万人強です。このように、人口減少は日本だけでなく多くの先進国で同様にみられる現象です」(茂木氏、以下同)

日本よりも出生率の低いイタリアでは…

しかし、ほかの先進国と比べて大きく異なる点が一つ、日本にはあるという。それは移民の数だ。人口を維持するために必要な出生率の水準は、多くの先進国で約2.1と言われているが、この約2.1という値は移民の動向が考慮されていない。

移民が今後増えてくると予測される場合、人口を維持するためにはこれほど高い出生率が必要ないと報告する研究があるという。

「その研究によると、移民の多いイタリアは1.44ほどの出生率で人口が維持できるようです。イタリアの2024年の合計特殊出生率は1.18ですから、人口維持に必要な値とそれほど大きく離れていません。

一方、日本では今後、移民が大きく増えるとは言えませんので、人口維持に必要な出生率まで大きな差がある、という意味では移民の多い他先進国よりも深刻な状況と言えるでしょう」

出入国在留管理庁によると、2024年6月末の在留外国人数は358万8956人(前年末比17万7964人、5.2%増)で、過去最高を更新した。

だがイタリアは2024年1月1日時点で、外国人の数は約530万人で、総人口の約9%を占めていると言われている。移民を多く受け入れている理由は日本と同じで、高齢化による人手不足だ。しかし移民を受け入れやすくしすぎたゆえの問題も出ており、イタリアが理想的なモデルと言えるわけではない。

そうなったとき、日本はどうすればいいのだろうか。また、今後どういった未来を辿っていくと予想されるだろうか。

「労働力人口の減少、現行の社会保障制度の維持、また過疎化により病院、学校、スーパーなど日常に必要なサービスの供給不足などさまざまな問題が、人口減少により出てくるでしょう。

しかし、悲観するばかりではありません。労働力人口数自体は減少しますが、非正規雇用にとどまらざるをえない人、家事・育児の偏りから出産後働けない人など、日本には働きたいのに働けていない人がたくさんいます。こうした方々の障壁となっていることを理解し、支援することで、経済的にもまだ発展する余地はあるはずです。

人口減少を止めるため、あるいは増やすために少子化対策に希望を見出すメディアや論説を目にしますが、残念ながら少子化が奇跡的に解消したとしても、人口減少が止まるまでに約70年かかります。

一度減少しはじめた人口はなかなか止まらないのです。そのため、人口が減少する未来を前提に、これからの街づくり、組織づくりを今から育んでいくべきだと考えます」

政策の遅れを嘆くだけでは何も変わらない。

一人一人がこの現実と真剣に向き合う必要がありそうだ。

取材・文/集英社オンライン編集部

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