
「亡くなったあとに人の威厳をぶち壊すなんて、人間として恥ずべき行為です」。そう嘆息するのは、八代亜紀さん(享年73)が15歳の時に初めてステージに立った熊本「キャバレーニュー白馬」の代表を務める池田義信氏だ。
八代さんに関する原盤権や財物を買い取ったと主張するレコード会社
『舟唄』や『雨の慕情』など数々の名曲で知られる八代亜紀さんが73歳でこの世を去ったのは2023年12月のこと。
八代さんは同年9月、所属事務所「ミリオン企画」のホームページで膠原病の治療に専念するため、年内まで活動休止することを発表。《必ず元気になって戻ってきますので待っててね》と綴っていたが、その約2カ月後に帰らぬ人となった。
そんな八代さんの尊厳を脅かす“問題作”が発売されようとしていることを報じたのは、3月13日発売の『女性セブン』だ。
「きっかけとなったのは、九州は鹿児島に拠点を置く『ニューセンチュリーレコード』なるレコード会社が、『八代亜紀 お宝シリーズ 第一弾』と題したベストアルバム『忘れないでね』をリリースするとした告知文。
同社は、八代さんに関する約250曲の音源盤を保有しているといい、昨年も『追悼盤』と題したアルバムを販売しています。しかし、今回のアルバムには、ある見過ごせない問題があった。“特典”として、生前の八代さんの“私的写真”が封入されるとうたわれていたのです」(音楽関係者)
一体、“私的写真”とはどのようなものなのか。実際にホームページから紹介文を引用する。
《お宝として 八代亜紀が24~25歳の時に同棲していたT社のNディレクターによってポラロイドカメラで撮影されたフルヌード写真2枚が掲載されています 八代亜紀の初めてのヌード写真です》
芸能記者が解説する。
「八代さんは若かりし頃、当時所属していたレコード会社『テイチク』の担当ディレクターで既婚者のN氏との不倫が報じられたことがあります。
その後、八代さんはN氏が彼女のために作った『センチュリーレコード』に移籍しましたが、二人の関係が終わりを迎えた1986年、『日本コロムビア』へと移籍。八代さんを失った『センチュリー』は倒産の危機に陥ったが、この時、N氏を助けるために八代さんに関する原盤権や財物を買い取ったと主張するのが、今回問題の写真を世に出そうとしている『ニューセンチュリー』のX社長です」
タレントに売春を強要しようとした
X氏が『女性セブン』に語ったところによると、問題の写真はN氏が八代に「これで撮って」と頼まれてポラロイドカメラで撮影したヌード写真なのだという。
この顛末が明るみに出るや、「かつての愛人が撮ったヌード写真を世に広める行為は、リベンジポルノではないか」として、たちまちレコード会社に批判が殺到。
だがX氏は「“戦争の弾”として、こちらは亜紀のヌード写真しかないから、その弾を使うだけのこと」と開き直ってみせたのだ。
実は、X氏が女性の尊厳を傷つける問題を起こしたのは、これが初めてではない。
「25年前、所属タレントの女性アイドルグループ3人から“売春斡旋やセクハラをされた”と、告発されたことがあります。当時の週刊誌記事によれば、X氏はCD制作費や宣伝費と称して、タレントに対し、たびたび高額な金銭を要求。さらに、『金がないなら、スポンサーをつけてやる』などと言って、タレントに売春を強要しようとしたと言います。また、女性たちはX氏から日常的に胸を触られる、着替えの様子を写真に撮られるなどといったセクシャルハラスメントも受けていたそうです」(同前)
当時、報道を受けて会見を開いたX氏は、「彼女たちのレベルは芸能界では低い。事務所もリスクを負うわけにはいかない」「タニマチ的な存在を探してみたら、とは言ったが、売春なんてとんでもない」などと弁解したが、その後の損害賠償請求裁判では事実関係が認められ、女性らに対して300万円の支払いが命じられている。
名誉棄損罪やわいせつ物頒布等罪といった観点から警察に相談
X氏は今回の報道に対しても、インスタグラムの投稿で週刊誌の報道について《事実では無い事を書かれて》としつつ、《商品の発売中止などは行いません。告知通りに商品を発売して行きます》と堂々宣言してみせたが……。
「このような物議を醸す商品を大手ECサイトが扱えるわけもなく、タワーレコードやAmazonなどではすでにCDの購入ができない状態になっている。それでも社長は『直販する』と強硬な姿勢を曲げていない。
八代さんの所属事務所は『ニューセンチュリー』に対し、写真の頒布を止めるよう求めるとともに、死者の名誉棄損罪やわいせつ物頒布等罪といった観点から警察に相談しているようです。刑事民事を問わず、あらゆる手続きの準備を進めているということですから、このまま販売されれば法廷闘争に発展する可能性が高い」(前出・芸能記者)
4月16日には八代の出身地で、記念碑の設置計画も持ち上がっている熊本県の木村敬知事も「許しがたい。(発売を)中止すべきだ」と記者会見で厳しく批判するなど、波紋が広がっている。前出の「キャバレーニュー白馬」の代表、池田氏は八代との思い出を振り返りつつ、こう声を絞り出した。
「八代さんは同級生や地元の人とも仲良くてね、1周忌のときは皆がウチの店に集まって偲んだんですよ。八代さんは熊本県民にとっても、全国のファンにとっても、永久に不滅です。今さらそんな写真を出しても誰も喜ばない、バカバカしい。何より、亡くなったあとに人の威厳をぶち壊すなんて、人間として恥ずべき行為です」
発売前日である20日現在も、ホームページのトップ画面にはアルバムの告知が掲載されたままだが、果たして――。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班