
「百薬の長」とも言われるお酒とはできれば長く楽しく付き合いたいもの。日本人を1万人単位で60年超定点観測しつづけた「秋田大阪スタディ」などに代表される「CIRCS研究」。
『10000人を60年間追跡調査してわかった 健康な人の小さな習慣』 (ダイヤモンド社)より、一部抜粋・再構成してお届けする。
焼酎を飲む人は死亡率が高い
海外の研究で、赤ワインをよく飲む人には循環器系疾患が少ないことがわかっています。たしかに、フランス人は昼から赤ワインを飲むような生活をしていますが、心筋梗塞が少ないことで知られています。
日本人にも赤ワインが同様の効果があるかについてはわかりません。というのも、赤白問わず、日本人の場合、まだまだワインの消費量が少なく、エビデンスが取れる状態にはないのです。
ただ、私たちがお酒の種類とその影響について調べた範囲内で言えば、焼酎をよく飲む人に死亡率が高いことがわかっています。また海外の研究でも焼酎やウイスキーなどの蒸留酒を飲む人が最も死亡率が高いことが報告されています。
調査を始める前の段階で私は、ビールや日本酒など醸造酒をたくさん飲む人の死亡率が高いのではないかと考えていたのですが、実際には、焼酎だけとか、1杯目はビールであっても続きは焼酎に変えるといった飲み方をする人にリスクが高かったのです。
その理由は不確かではあるものの、どうも焼酎好きの人は量を飲みすぎてしまう傾向にあるのではないかと思えるのです。
その調査は、申告制で行われました。ビールやワインなら比較的正しい量が伝えやすいですが、焼酎の場合、水やお茶などで割って飲むことが多く、また途中で足したりしがちです。故意かどうかは別にして、焼酎が好きな人はその量について、やや少なめに申告している傾向があるように見えました。
つまり、ほかの種類の酒と比べて焼酎が体に悪いということではなく、焼酎好きの人は飲みすぎになりがちだから死亡率も高かったのではないかと私は推測しています。
あるいは、もしかしたら、これまで醸造酒を好んで飲んでいた人が、糖尿病や肥満などを指摘されて糖質を避けるために焼酎に替えたというのがあるのかもしれません。もともと生活習慣病を持っているならば、死亡率が高く出る可能性はあります。
結局のところ、お酒については種類よりも量(純アルコール量)が問題だということになります。
女性は1日半合、男性は1日1合まで
2024年2月、厚生労働省が初めて「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」を出しました。
そのなかで、飲酒の悪影響について疾病別にエビデンスを示しています。
これを見ると、男女ともに少しでも飲めば高血圧のリスクが増えることがわかります。また、男性ではとくに胃がんや食道がんが、女性では脳出血が増えます。
一方、男性の場合、1日2合(純アルコール量40グラム)までは脳梗塞については影響が出ないけれど、脳出血や大腸がんは1日1合に抑えないとリスクが増えるということを、このエビデンスは示しています。
女性の場合、1日1合を超えると脳梗塞も胃がんも大腸がんも肝がんも乳がんも増えます。データが取られていないものについても、増える可能性は否定できません。
お酒については、男性の場合は基本的に1日1合、週に換算して7合というのが、疫学的に推奨できるラインです。女性はその半分くらいと考えるといいでしょう。
ノンアルを交えるだけで減酒につながる
筑波大学の研究チームが、「ノンアルコール飲料を提供されると飲酒量が有意に減少する」という報告を行いました。
そこでは、アルコール依存症などの人を除いた20歳以上の研究参加者123人を2つの群に分け、一方にノンアルコール飲料を12週間提供しました。
さらに、ノンアルコール摂取量増加とアルコール摂取量の減少に相関が見られることから、ノンアルコール飲料がアルコール飲料に置き換えられていると考えられました。
たとえば、いつも缶ビールを2缶飲んでいる人が、1缶はそのままビールを、もう1缶はノンアルコールビールを飲むということが起きたのです。
ちなみに、私は週末にビールを飲みますが、1缶目は普通の缶ビールを、2缶目以降はノンアルコールビールにしています。1缶目で気持ちよくなっているので、2缶目以降はノンアルコールでも区別がつかない状態。きれいな黄金色でシュワーとしていれば、十分においしく感じられます。結果的に健康的な飲酒ができているのです。
この筑波大学の研究では、「提供された」というところがポイントとなります。お酒好きの人は「ノンアルコール飲料はまずい」とはなから決め込んでおり、これまで自分から買うことはほとんどなかったはずです。
しかし、最近のノンアルコール飲料はかなりおいしくなっており、提供されて飲んでみたら「これも悪くないかも」と感じることでしょう。
だから、家族などが「これ飲んでみて」とプレゼントするのがいいでしょう。そして、1杯目ではなく、ちょっとほろ酔い加減になってから飲んでもらうと、「へえ、案外いいね」となるかもしれません。
文/大平哲也 サムネイル/Shutterstock
『10000人を60年間追跡調査してわかった 健康な人の小さな習慣』(ダイヤモンド社)
大平哲也 (著)
☆★圧倒的エビデンスに基づく1冊★☆
1963年から10,000人を60年間追跡調査し続けたから
ついにわかった、日本人の健康「本当の最適解」
死ぬまでずっと健康な人は、
無意識のうちに「健康になる習慣」を実践していた!?
その正体に【医療×統計学】の他にないアプローチで迫ります。
同じ研究を今から始めると、2085年までかかります。
先人の財産的知見を借りて健康を手にできる健康本の超・決定版が生まれました。
●本書の最大の魅力3点
①【信頼性】1963年から始まった「統計×医療」の研究をメインにした内容。60年超の定点観測。他に類を見ない強いエビデンス
医師×疫学者の著者が「時間をかけて生のデータを取り続けた統計」だからこそわかった健康法則を紹介。日本人を1万人単位で60年超定点観測しつづけた「秋田大阪スタディ」などに代表される「CIRCS研究」は、まさに代えの効かないエビデンスです。(※本書の内容は、1963年から開始された「CIRCS研究」以外にも日本国内の様々な疫学研究や海外の研究その他も含め総合的な内容で構成されています)。今回導き出された健康法則は、他に類を見ないほど強固で、普遍的な性質も併せ持っています。
②【すぐ真似できる】死ぬまでずっと健康だった人の「生きているだけで健康になる」習慣を突き止めている
本書は、単に寿命が長い人ではなく、「死ぬまでずっと健康でいつづける」=健康寿命を伸ばした人の特徴を紹介します。自然と健康になった人の「仕組み」さえ真似できれば、個人の資質・才能によらず健康寿命を伸ばすことができます。気づかないうちに自然と健康になる方法とは。
③【ハードルが低い】誰でもすぐに健康になれる「仕組み」を実践するための実例テクが満載
本書のノウハウは、「人間は弱い」ことを前提にして、「それでもできるようになるためにはどうすればいいか」に焦点を当てた内容。ありがちな新情報の提供のみに留まらず、そのノウハウの実践まで踏み込んで解説しています。60年間の歴史に基づいているからこそ、納得感と説得力があります。