
開幕から1か月が経ち、悪かった前評判を覆しつつある大阪・関西万博だが、依然として「高すぎる」「使いづらい」といった声は絶えない。アクセスや料金に関する不満が相次ぐなか、ついに大阪府の吉村洋文知事が万博協会に対し“値下げ”を正式に提案した。
ディズニーよりも高い駐車場代
吉村知事は5月7日の会見で、会場アクセスの改善に向けた具体策を万博協会に要望したと明かした。提案内容は主に、「東ゲートから西ゲートへの動線確保」「パークアンドライドの料金引き下げ」「桜島駅からのシャトルバス増便」の3点だ。
なかでも強調されたのが駐車料金の高さ。「USJやディズニーランドでも駐車場は3000円台。万博は基本料金が5000円以上で、実際に使われているのは平日1割、休日でも3割程度」と述べ、高すぎる料金が利用を妨げていると指摘した。
また“ゲート問題”は以前から来場者の間で指摘されていた。万博会場には東ゲートと西ゲートがあるが、現状、東に人が集中し、西は閑散としている。
その理由は動線の設計にある。会場の最寄り駅となる夢州駅はから徒歩で行けるのは東ゲートのみ。西ゲートに向かうには、車やタクシーで行くか、あらかじめ予約したバスなどを利用する必要がある。
そして事前予約制の入場システムでは「何時に、どのゲートから入るか」まで指定する必要があり、仕組みを理解していないと思わぬ落とし穴にはまるケースがある。
筆者自身、「東ゲートよりも空いている」という評判だけを聞き、事前に西ゲートを予約していたが、前夜になって徒歩では西ゲート入口に行けないという構造に気づき、なんとか東ゲートに予約を変更して事なきを得た。
平日だったのでまだ枠があったが、もし希望する時間帯の枠が埋まっていたら、入場自体が危ぶまれていたかもしれない。
ネット上でもゲートのややこしさや不便さを指摘する声は多い。
〈なんで東ゲートから西ゲートにゲートの外から移動できないのかわけがわからない。設計ミスろ〉
〈夢洲駅から西ゲートへの徒歩ルートの確保。これは会期中に成すべき必須課題〉
〈西ゲートから入る予約でしたが、各駅からのバスが午前中は全て売り切れ。焦って東ゲートに変えました〉
〈車場代5千円はボッタクリだわ、本当に鉄道と利用者半分にしたいならせめて2千5百円ぐらいが適切でしょ?〉
レストランも高すぎて問題に?
万博の“高すぎる”という指摘は、アクセスに限らない。SNSでは先日、 “本場イギリスのアフタヌーンティーが体験できる”という触れ込みのイギリス館のアフタヌーンティーが「5000円なのに冷凍ケーキと紙コップの紅茶」という内容で炎上し、ついには英国大使館が謝罪した。
その後、一部改善されたものの、紅茶をフレンチプレスで注ぎ、カップはコーヒー用という“英国らしさ”のない提供スタイルは、逆に話題となってしまった。
休憩所の確保もまた、万博における深刻な課題の一つだ。筆者が4月の平日に会場を訪れた際、飲食ブースはどこも混雑しており、特に飲食を提供する各国のパビリオンは軒並み長蛇の列ができていた。屋内で座って休憩したい人々にとって、こうしたパビリオンは事実上の“休憩所”でもある。
その中で、ひときわ空いていたのがポーランド館だった。他のパビリオンが混雑している中、ここはすぐに入れそうだったため立ち寄ろうとしたが、メニューを見て足が止まった。
一方で、1000円台の軽食を出すパビリオンには多くの来場者が集まっており、価格の差が利用者の流れを大きく左右している様子がうかがえた。確かに、家族4人でランチに2万円を超える出費が必要となれば、多くの人にとって非現実的だ。
今後、夏の猛暑が本格化すれば、「とにかく屋内で座って休みたい」というニーズはさらに高まるはずだ。そんな中で、「高額な食事をしなければ休憩もできない」という状況が続けば、来場者の不満は増えていくだろう。
真夏の混雑する会場では、「いかに客を待たせず、快適に過ごせるか」が鍵となる。現在のように、「高いお金を払って西ゲートに行き、高いお金を払って食事をしなければ休めない」という仕組みでは、来場者の満足度は決して高くならない。
万博はまだ続いていく。だからこそ、来場者の声を受け止めた柔軟な改善が求められている。
取材・文・撮影/集英社オンライン編集部