「時空が30年ぐらいズレてる」黒夢、PIERROT、ラクリマらV系バンドが続々再始動…“90年代の伝説”が動き出した理由
「時空が30年ぐらいズレてる」黒夢、PIERROT、ラクリマらV系バンドが続々再始動…“90年代の伝説”が動き出した理由

90年代に絶大な人気を誇ったヴィジュアル系バンドたちの動きが、2025年に入ってから一気に活発化している。まるで時代が巻き戻ったかのようなこの現象——いったい何が起きているのだろうか。

2025年に90年代の伝説がよみがえる

まず象徴的な出来事として、LUNA SEAが2025年2月に約7年ぶりとなる東京ドーム単独公演を開催し、さらにGLAYとともに約25年ぶりの東京ドーム対バン「The Millennium Eve 2025」も実現させた。

同じく2月にはPIERROTが東京・有明アリーナで、約10年ぶりの単独ワンマンライブ「END OF THE WORLD LINE」を決行。SIAM SHADEも2016年以来、ギターのDAITAを除くメンバーが集結し、盟友SOPHIAとともに大阪城ホールで一夜限りのスペシャルライブ「1995 SIAM SOPHIA-G」を開催した。

黒夢はデビュー30周年を機に10年ぶりに活動を再開。2月の東京ガーデンシアターでのライブを皮切りに、ツアーやフェス参加など精力的な動きを見せている。

さらに11月15・16日に、千葉・幕張メッセで90年代ヴィジュアル系バンドが集結する大型フェス「CROSS ROAD Fest」の開催が発表された。ここでLa'cryma Christiが約12年ぶりに再始動することが話題を呼んでいる。

SHAZNAやFANATIC◇CRISISも参戦が決定済みで、“ヴィジュアル系四天王”のうちMALICE MIZERを除く3組が揃う見込みとなった。GACKTも在籍したMALICE MIZERの再始動が難しい現状を考慮すれば、これだけでも相当なインパクトだ。

そしておそらく、この「V系再燃」現象の最大の山場になるのが、11月8日・9日に幕張メッセで開催されるLUNA SEA主催のフェス「LUNATIC FEST. 2025」だ。

通称「ルナフェス」は、これまでにX JAPAN、GLAY、BUCK-TICK、DEAD END、SIAM SHADE、DIR EN GREY、SID、MUCCなど錚々たるバンドを集めてきたが、今回は7年ぶりの開催とあって、過去最高規模のラインアップが予想されている。

「このフェスにはYOSHIKI・HYDE・SUGIZO・MIYAVI(2024年に脱退)によるバンド『THE LAST ROCKSTARS』の出演が濃厚で、もしこれが実現すればHYDEとLUNA SEAが同じステージに立つことになる可能性があります。

さらに黒夢(清春)にも、もちろん出演オファーをしているでしょうから、LUNA SEA、GLAY、L’Arc~en~Ciel、黒夢といった90年代V系音楽の伝説が一堂に会するかもしれません。

それはV系ファンのみならず、30~50代の“ど真ん中世代”にとって歴史的イベントとなるでしょう」(音楽ライター、以下同)

2025年のV系の異様な盛り上がりは、SNSでも注目を受けている。

〈アラフォーが青春時代にタイムスリップする令和7年〉

〈PIERROTに続き、黒夢に続き、今度はラクリマ。ほんと時空が30年ぐらいズレてるのでは?〉

〈この令和の時代にPENICILLINとかラクリマとかありえん単語聞いて混乱してる。ちな夏に黒夢いきます〉

〈令和ってもしかして平成初期と謎のパイプで繋がってるのかも知れませんね?ってなりますよね〉

これはノスタルジーだけではない。“復活劇”は実際に動員にもつながっており、多くのライブも万単位のファンが詰めかけている。その中には、90年代にはまだ生まれていなかった10代、20代の若者も多数確認できた。

では、なぜ今、これだけの大規模な復活が可能となっているのだろうか。

ここにきてV系が盛り上がっている理由とは

「90年代に熱狂していたファン世代が、今では家庭を築き、経済的にも余裕のある年齢層に差しかかっています。自由に使えるお金が増えたことで、再びライブに足を運ぶ人が増えている印象です。

中には子どもを連れてくる親子ファンもいて、LUNA SEAには『SLAVE学園』という若年層のファングループも存在します。彼らにファンになったきっかけを聞くと、多くが“親の影響”と答えていました。また中にはYouTubeきっかけなどもいて、昔の音楽に手軽に触れることができるようになったのも大きいでしょうね」

さらに、文化的な空気の変化も追い風になっているという。

「2000年代からしばらくは、“ありのままの自分でいい”という価値観が強く、ミュージシャンもTシャツ一枚で自然体を打ち出すスタイルが主流でした。でも今は、表舞台に立つ人のみならず、個人個人が『自分をどう演出するか』『どんな個性を打ち出すか』という風潮です。

メイクやファッションで“自分を作る”ことを肯定する風潮が広がる中で、まさにV系文化はその価値観と非常に相性がいい。Z世代がV系にシンパシーを感じているのも、その背景があると思います」

また、メディア露出の増加も追い風となっている。

「かまいたちやニューヨーク、千鳥といった今のテレビの中心にいる芸人たちがV系世代で、トーク番組やYouTubeなどで当時の音楽に言及する機会が増えています。バラエティ番組で当時のミュージシャンと芸人が共演することで、若い世代への認知も広がっているかと思います」

今再びヴィジュアル系が熱を帯びるのは、ただの懐古的なブームではなく、時代が再び「表現すること」に注目している証なのかもしれない。

取材・文・撮影/ライター神山

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