
東京・池袋のタワーマンションで医師免許を持たずに同胞を相手に美容整形手術をしていたとして医師法違反罪に問われた中国人姉弟の初公判が5月16日、東京地裁であった。2人は起訴事実をおおむね認めたものの『お客さんは友達で、業として行ったわけではない』などと主張した。
白いハイヒールを履き入念に化粧した姿で被告人席へ
姉で美容サロン経営の韓旭娟被告(45)=東京都府中市=と弟の韓家宏被告(38)=荒川区南千住=。
起訴状などによると両被告は医師でないのに業として医療行為に及んだ。姉の旭娟被告は2023年7月、豊島区池袋のタワーマンション25階の部屋で当時44歳の中国人女性の目の下およびほおにヒアルロン酸と称する成分不詳の薬剤を注射した。
弟の家宏被告は同7月19日、台東区上野のマンションの1室で同じ被害女性に対して首、頬、ほうれい線にヒアルロン酸を注射。また、姉弟は共謀して昨年3月、池袋のタワーマンションで同女性の首にヒアルロン酸を注射したうえ、両まぶたの皮膚の切開、除去した脂肪を左まぶたへ注入、ビタミン剤と称する成分不詳の薬剤の点滴を行った。
さらに姉の旭娟被告は同月30日、同女性に切開にかかる縫合手術と縫合部分を抜糸する医療行為を行なった。
この日の初公判で姉弟はともにカジュアルスーツで入廷。姉の旭娟被告は濃紺のスーツに白いハイヒールを履き、入念に化粧も施しており、被告人席につくと結っていた髪をほどき、通訳用のイヤフォンを装着した。
公判中も終始堂々とした振る舞いで、やり手の経営者然としていた。一方、弟の家宏被告はクリーム色のスーツに黒い短髪を整髪料で固めており、やはりビシッとした印象を周囲に与える。
証言台に立った2人に対し、裁判官の発言をすべて通訳が翻訳。起訴状の朗読も翻訳され、罪状認否も通訳を通して行われた。
旭娟被告は「事実としてそういう行為は行いましたが、そのお客さんとは友達であって営業でしたわけではありません」とし、家宏被告も「起訴状の内容はだいたい合っているんですけども同じく私の友達として、(お客さんから)私たちに要請があった」と主張した。
「被告人両名は中国でも日本でも医師免許は得ていない」
検察側の冒頭陳述では、姉弟の身上や経歴も明らかにされた。
旭娟被告は中華人民共和国生まれ。現地の看護学校を卒業後、中国国内の美容クリニックで看護師としてアートメイクなどの医療行為に携わる。2008年日本人と結婚して来日し、美容系の専門学校に通う。2014年に香港で弟の家宏被告と会社を設立しエステ業の経営を開始。犯行時は現在の夫と住む家とこのタワマンの部屋を行き来する生活をしていた。
家宏被告も中国生まれで高校卒業後は美容外科医を目指すも美容訓練学校を中退。2016年に日本で働いている前妻と同居するために来日。犯行時は、日本での就労資格を持つ中国人の妻の家族という身分で外国人登録し、妻と子供と居住していた。
犯行の経緯として検察側はこう述べた。
「被告人両名は中国でも日本でも医師免許は得ていない。
2023年ごろから韓家宏は姉である韓旭娟に誘われて姉が経営する美容クリニックで客に麻酔を注射したり、二重瞼の縫合手術を行うようになり公訴事実の犯行を行なった。弟は姉の施術を見て学んでいる。
2人は客から施術の相談を受けると自分たちのできる施術であれば引き受け、客から施術料金を受け取った。施術料金について韓旭娟はすべて自分の報酬とし、韓家宏は受け取った施術料金からかかった器具などの費用を差し引き半分を姉に渡していた」
検察側は初公判で、被害者が複数いるため訴因変更の可能性についても示唆した。当時取材した記者が解説する。
「韓被告らは中国語でSNSに広告を出すなどして顧客を集めていたとみられる。1日最大5人ほどが来店しており多くが中国人客だった。被害女性らは1回の施術で25~55万円ほどを払ったもの、施術後、まぶたや頬が化膿したことを訴え、警視庁に相談していた」
次回の公判は8月22日予定で、結審の見込みだ。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班