
2000年代に多くの若者を魅了した伝説のヒップホップグループ・SOUL'd OUT(ソウルドアウト)の元メンバーにして、現在、都内の和食料理店で板前をしているBro.Hiへのインタビュー。後編ではグループ解散後から現在までの生活について聞いた。(前後編の後編)
前編
解散後はサラリーマンも経験
――SOUL'd OUTの解散後は会社員として働いていたともお聞きしました。なぜ突然別の職種に転身されたのでしょうか。
和食の職人を目指してはいたんだけど、実はちゃんとサラリーマンをやったことがなかったんだよね。残業がある会社員というのを経験した方がいいなと思っていたから、解散がいい機会だと思って。
だけどいきなり未経験のIT企業とかだと面接落ちすると思ったんだよね。職種は食べ物関係で、自分は現場と企画、スタッフのオペレーションを総括してたかな。
――数々の音楽番組にも出演する有名人でしたから、当時身バレなどは気にしなかったのですか?
いや、履歴書にSOUL’d OUTって書くこともないからバレないんじゃない?と。社内で知ってくれてる人は何人かいたけどね。
――そこから羽村でお店をオープンされたきっかけは何だったのでしょうか。
店やりたいなーと常に言ってたら、ここの会長さんとご縁があって。ふとした会話の中で、じゃあやってみれば?となったんだよね。
もともとここの店は夜の営業をコロナの影響で締めてたらしくて、やりたいならやってみたらええやん!とノリで始めさせてもらって、昨年3月に「四季菜」をオープンして、今2年目だね。
音楽活動との両立は大変だけど、心と身体の限界までやるしかない!バランスは自分でとれるからね。
お店でファンがオフ会をすることも
――お店イチオシのメニューはありますか?
お刺身ですかね。うちみたいな小さいお店はなかなか契約できないのに、天然のインドまぐろの良い部位を安定して入れてくれる業者さんがあって。これは必ずお客様にイチオシしてるかな。
――お店には、やはりかつてのファンが来店されることもあるのでしょうか?
ありがたいことに、これまでたくさんのファンの方が来てくれたかな。
実は現役時代、ファンとの触れあいはほぼなかったんだよね。個人的にはできるだけファンと話したかったけど、自分1人だけじゃなくグループの空気感もあるし、そこら辺はバランスを保っていた感じで。
だから今、ファンの人だけでお店を貸し切ってくれてオフ会をすることもあるんだけど、最初の頃はどう対応していいのかもわからなかったんだよね。だけどこうしてお店をやってるわけだから、そこは筋通さないと!と。
初めての時は、今日のオフ会どうなっちゃうんだろ?って不安はあったけど、ふたを開けてみるとみなさんシャイな方で(笑)。飲み放題の会なのにみんな最初の30分くらいはお酒も飲まずにおとなしくしてるから、こっちからお酒をすすめちゃったくらい。
――SOUL’d OUTのファンだけで席を埋め尽くすこともあるんですね!
そうそう。面白かったのは、関西と関東、どちらにもディギーのコスプレをして来てくれるファンがいるんだよね。この前のオフ会では、4.5人でディギーのコスプレして来てくれて。
オフ会に来てくれる人たちは俺のことを知ってくれてるのでやりやすいし、一般の方より存在が近いから今は前より気持ちが楽になったかな。
今、自分と同じE.P.Oってグループで音楽やってるTO-Kaさんがたまに店を手伝ってくれるんだけど、その時だけ機材を持って来てファンの前でマイクパフォーマンスをやってるよ。
SOUL’d OUT再結成の確率は…?
――お店のGoogle口コミには、ファンの方からのユーモアあるコメントも多いようですね。
お店がGoogleマップに掲載された時、お客様に向けて口コミを書いてよ、ってXで呼びかけたんだよね。
そしたら「お料理全般丁寧で、お酒もコーヒーも美味しく大満足でした。 」の後に、「わかってんだろ?ペイス 」と書いてあったり、「Check it out!行くかどうか迷ってないで四季菜に行きなよ…」って感じになっちゃった。
これはこれで、もはやいいんじゃないかな、と思ってます(笑)。
――ファンの方からは今でも、SOUL’d OUTの再結成を望む声が多く上がっています。その可能性は1%…いえ、0.1%でもあるのでしょうか?
1%でも0.1%でもなくて、再結成の可能性といったら50%じゃない? だって、するか、しないかだからね。まあ、三人とも大人なんで事情やタイミングもあるし、ずっと同じベクトルで生きてるわけじゃないからね。だけど、全くない、不可能なことではないと思ってるね。
――なるほど。ファンは少しだけ期待をして待っていてもいいのでしょうか。それでは今後、ご自身がチャレンジしたいことなどはありますか?
やっぱり直近でこの店を大きくすることが目標かな。店の経営も音楽と同じで、曲を出したらそれで終わりじゃない。止まらず挑戦し続けないとやってる意味がない。これからもいろんなことをやってみたいね。
――最後に、ファンの皆様へのメッセージをお願いします。
お店に来てくれたら、出来る限りおしゃべりもするのでぜひ来てほしい。YouTubeも恥ずかしながらもやってますので、そちらもチェックしてもらえたら。音楽、飲食に頑張ってやっているので、もしチャンスがあればお会いしましょう!
※
取材の最後、Bro.Hiさんは厨房へ戻る直前にこうつぶやいた。
「今日も魚がいいんだよ。よかったら食べてってよ、刺身。」
かつてマイクで刻んだリズムは今、包丁の音に変わった。けれどそのテンポは今もなお変わらずSOUL’d OUT・Bro.Hiのままだった。
取材・文・撮影/佐藤ちひろ